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休業損害の基礎知識と基本的な計算方法

2021-05-11

有職者の方が交通事故に遭ったら、加害者へ休業損害を請求できます。どのような被害者の場合に休業損害が認められて、いくらくらいが相場になるのでしょうか?

 

以下では休業損害の基礎知識と基本的な計算方法をご説明します。

 

1.休業損害とは

休業損害とは、交通事故が原因で働けない期間が発生して、得られるはずだったのに得られなくなった収入に相当する損害です。

仕事をして収入を得ている人は、交通事故に遭わなければ今まで通り働いて収入を得られたはずです。ところが交通事故でけがをして入通院したことによって、働くことができなければ収入を得られなくなってしまいます。これは交通事故によって発生した損害内容と言えるので、加害者に請求できるのです。

 

休業損害は「人身損害」の1種です。物損事故の場合には対応に追われて仕事を休んでも休業損害を請求できません。

 

2.休業損害が認められる人

休業損害は「仕事ができなくなったことについての損害」ですから、認められるのは基本的に「事故前に働いていた人(有職者)」のみです。

具体的には、以下のような人に休業損害が認められます。

  • 会社員(正社員、契約社員、派遣社員)
  • アルバイト、パート
  • 自営業者
  • フリーランス
  • 主婦、主夫などの家事労働者
  • 経営者や役員(労働対価部分のみ)

 

主婦や主夫の方は働いて収入を得ているわけではありませんが、家族のために家事労働をしており、そこには経済的な価値があると考えられるため休業損害が認められます。

経営者や会社役員の方の報酬については、全額ではなく「労働の対価としての部分」のみが休業損害の計算対象になります。

 

3.休業損害として認められる損害内容

休業損害として認められる損害の内容は「交通事故によって得られなくなってしまった収入」です。

会社員などの給与所得者の方であれば、休んだ日数分の給料が休業損害となります。

自営業者の方の場合には、休んだ日数分の所得(売上げから経費を引いた金額)が休業損害です。

 

4.サラリーマンの場合によくある問題

サラリーマンの方の場合には、残業代も休業損害計算の基礎に含まれます。休業損害を計算する際には、残業代も含めた事故前3か月分の給料を平均して基礎収入を算定するためです。

また有給を消化したため実際には減収が発生していない場合でも休業損害を請求できます。

賞与が減額された場合にはその分も休業損害として請求できますし、昇進や昇給が見送られた場合には、そういった損失分も相手に請求できるケースがあります。ただし賞与の減額分や昇進昇給できなかった分の損失については、明確に証明できないと請求は困難となります。就業規則や給与規定でわかりやすく規定されており、会社が賞与減額証明書等を書いてくれると請求は容易になります。

 

5.休業損害の基本的な計算方法

休業損害は、基本的に以下の計算式で計算します。

  • 1日あたりの基礎収入×休業日数

 

5-1.1日あたりの基礎収入について

1日あたりの基礎収入の金額は、自賠責基準と裁判基準で異なります。

自賠責基準の場合には基本的に一律で5700円となります。ただし給与明細書などで明確に証明できる場合には19000円まで増額可能です。

 

一方裁判基準の場合には実収入を基準とします。

サラリーマンの方の場合には事故前の3か月分の平均給与額を基礎として計算します。

自営業者の場合には、事故の前年度の確定申告書の「所得」の数字を基本とします。

主婦の方など実収入がない場合には、賃金センサスの平均賃金を使います。たとえば主婦の場合には全年齢の女性の平均賃金を採用し、1日1万円程度となります。

 

5-2.休業日数について

休業日数について、サラリーマンの場合は会社に「休業損害証明書」を作成してもらって証明します。

自営業者や主婦などの方の場合には、医師に診断書を書いてもらうなどして証明しなければなりません。

 

以上が交通事故で請求できる休業損害の基本的な考え方です。事故に遭われて休業損害についてお知りになりたい方は、お気軽に弁護士までご相談下さい。

交通事故 軽傷と通常のケガの違いとは?

2020-12-04

交通事故に遭ったとき「軽傷」か「通常程度のケガ」となるかで、支払われる慰謝料の金額が変わる可能性があります。

 

軽傷と通常のケガとはそれぞれどういったケースなのか、またどのくらい慰謝料が変わってくるのか、弁護士が解説します。

 

1.軽傷と通常程度のケガで「入通院慰謝料」が変わる

交通事故では「軽傷」か「通常程度のケガ」かによって「入通院慰謝料」の計算方法が異なります(弁護士基準の場合)。

入通院慰謝料とは、被害者がケガをして入通院したときに発生する慰謝料です。被害者がケガをすると大きな恐怖や強い苦痛を感じ、精神的なダメージを負います。そこでケガの程度に応じて入通院慰謝料が支払われます。

 

ただ「軽傷」であれば苦痛の程度が小さいと考えられるので、通常程度のケガのケースよりも慰謝料が減額される仕組みです。

 

1-1.軽傷とは

「軽傷」に該当するのは以下のような場合です。

  • 打撲
  • 打ち身
  • 軽い挫創(すり傷など)
  • 自覚症状しかないむち打ち

 

打撲や軽いすり傷などの場合には「軽傷」扱いとなります。

 

またむち打ちでも「自覚症状」しかない場合には、軽傷とされます。

自覚症状とは、「痛み」「しびれ」のように被害者のみが感じられる症状をいいます。

痛みやしびれは、レントゲンやMRIなどの画像検査結果によっても、客観的に把握できません。

「被害者が主張するだけ」なので、信用性が低くなりますし、画像ではっきり骨折などが判明するケースよりは軽いケガといえるでしょう。そこで自覚症状しかないむち打ちの場合には軽傷となります。

 

1-2.通常程度のケガとは

通常程度のケガは、軽傷扱いされない一般的なケガをいいます。

むち打ちでも「椎間板ヘルニア」などが起こって画像ではっきり異常な箇所を確認できれば通常程度のケガとなります。このようにレントゲンなどではっきり把握できる骨折などの症状を「他覚症状」といいます。

たとえば以下のようなケガをしたら、「通常程度のケガ」として取り扱われると考えましょう。

  • 骨折
  • 高次脳機能障害
  • 脊髄損傷
  • 手足の欠損
  • 腹部に大けがをして内臓機能に障害が残った
  • 歯が折れた
  • 手術が必要になった

 

 

2.軽傷と通常程度のケガ、どのくらい慰謝料が変わるのか

軽傷と通常程度のケガでは、どのくらい慰謝料の金額が変わるのでしょうか?

表によって比較してみましょう。

2-1.軽傷の場合

 

入院

 

1ヶ月

2ヶ月

3ヶ月

4ヶ月

5ヶ月

6ヶ月

7ヶ月

8ヶ月

9ヶ月

10ヶ月

通院

 

35

66

92

116

135

152

165

176

186

195

1ヶ月

19

52

83

106

128

145

160

171

182

190

199

2ヶ月

36

69

97

118

138

153

166

177

186

194

201

3ヶ月

53

83

109

128

146

159

172

181

190

196

202

4ヶ月

67

955

119

136

152

165

176

185

192

197

203

5ヶ月

79

105

127

142

158

169

180

187

193

198

204

6ヶ月

89

113

133

148

162

173

182

188

194

199

205

7ヶ月

97

119

139

152

166

175

183

189

195

200

206

8ヶ月

103

125

143

156

168

176

184

190

196

201

207

9ヶ月

109

129

147

158

169

177

185

191

197

202

208

10ヶ月

113

133

149

159

170

178

186

192

198

203

209

 

 

 

2-2.通常程度のケガの場合

 

入院

 

1ヶ月

2ヶ月

3ヶ月

4ヶ月

5ヶ月

6ヶ月

7ヶ月

8ヶ月

9ヶ月

10ヶ月

通院

 

53

101

145

184

217

244

266

284

297

306

1ヶ月

28

77

122

162

199

228

252

274

291

303

311

2ヶ月

52

98

139

177

210

236

260

281

297

308

315

3ヶ月

73

115

154

188

218

244

267

287

302

312

319

4ヶ月

90

130

165

196

226

251

273

292

306

326

323

5ヶ月

105

141

173

204

233

257

278

296

310

320

325

6ヶ月

116

149

181

211

239

262

282

300

314

322

327

7ヶ月

124

157

188

217

244

266

286

301

316

324

329

8ヶ月

132

164

194

222

248

270

290

306

318

326

331

9ヶ月

139

170

199

226

252

274

292

308

320

328

333

10ヶ月

145

175

203

230

256

276

294

310

322

330

335

                         

 

たとえば通院6ヶ月の場合、軽傷なら53万円程度ですが通常程度のケガなら73万円程度にまで慰謝料が上がります。

なお軽傷と通常程度のケガで慰謝料の金額が変わるのは「弁護士基準」で計算する場合です。自賠責基準の場合、こうした区別は行われません。

 

3.入通院慰謝料を減額されないために

被害者が保険会社と示談交渉するときには、上記でご紹介した弁護士基準よりはるかに低い「任意保険会社の基準」で入通院慰謝料が計算されるケースが多数です。

そうなると、重傷でも「弁護士基準の軽傷の基準」より金額を下げられてしまう可能性が高いので注意しましょう。不当に慰謝料を減額されないためには弁護士に示談交渉を依頼して「弁護士基準」で計算する必要があります。

 

事故に遭われたら、保険会社基準で示談をまとめてしまう前に弁護士までご相談ください。

保険会社が治療費を払わない理由と対処方法

2020-09-14

交通事故が発生すると、通常は加害者の保険会社が病院へ直接治療費を支払います。途中で治療費を打ち切られることはあっても、被害者が当初から自己負担しなければならない事例は少数でしょう。

 

ただし中には保険会社が事故当初から、治療費支払いを拒否するケースも存在します。

今回は、保険会社が当初から治療費を支払わない理由や対処方法について、弁護士が解説します。

 

1.保険会社が治療費支払いを拒絶する理由

保険会社が事故当初から治療費を支払わない場合、以下のような原因が考えられます。

 

1-1.被害者の過失割合が高い

交通事故の被害者の過失割合が高い場合、保険会社が治療費の支払を拒絶する可能性が高くなります。

被害者の過失割合が高いと「過失相殺」によって任意保険会社が被害者へ支払う賠償金の金額が下がり、治療費を出すと「払いすぎ」になってしまう可能性があるからです。

被害者の過失が7割以上になると、自賠責でも「重過失減額」が行われて保険金額が下がります。

 

ただ保険会社と被害者の間で認識が異なり、被害者としては保険会社の主張する過失割合を認められないケースもあるでしょう。そういった場合、被害者は必要な治療費の支払を受けられなくなり、不利益を受けてしまう可能性があります。

 

 

1-2.けがが不自然で、事故との因果関係がないと判断されている

小さな交通事故の場合、保険会社が「本当はけがをしていないのではないか?」と疑う可能性があります。車の損傷程度からしてけがの程度が大きすぎる場合やけがの部位が不自然な場合などには「交通事故によって発生したけがではない」と因果関係を否定して治療費の支払を拒絶します。

 

1-3.通院治療費の支払を拒絶

交通事故で被害者が大けがをして入院した場合、入院中の治療費については支払をしても通院に切り替わると支払が止まるケースがあります。

 

 

2.治療費を支払ってもらえない場合の対処方法

2-1.健康保険や労災保険を使って通院する

加害者の保険会社が治療費の支払を拒絶する場合、無理に支払わせるのは困難です。どうしても支払ってもらえないなら、まずは自分の保険を使って通院しましょう。

交通事故が労災に該当するなら労災保険を適用できますし、そうでない場合には健康保険を使って通院すれば負担を小さくできます。

 

2-2.診療報酬明細書、領収証をとっておき、後で請求する

健康保険を使って通院すると、1~3割の自己負担額が発生します。自分で支払った治療費については後から保険会社へ請求できるので、診療報酬明細書を全部とっておきましょう。

通院交通費も損害金として請求可能です。高速代や駐車場代なども払ってもらえるので領収証を保管しましょう。

2-3.事故の資料を集める

過失割合に争いがあって治療費支払いを拒絶されている場合、争いを解決できれば治療費の支払いを受けられる可能性があります。

そのため、事故現場の実況見分調書を入手したりドライブレコーダーの画像を分析したりして、加害者側の主張が間違っていることを証明しましょう。

 

2-4.交通事故とけがの因果関係を示す

保険会社が「交通事故が軽微だから事故との因果関係が認められない、治療費を払わない」と主張している場合には、交通事故と怪我との因果関係を証明しましょう。

車の損傷度合いやけがの具体的な内容をしっかり分析し、医師の意見書などを示して説得的に主張をすれば、治療費が支払われる可能性があります。

 

2-5.自賠責保険や自分の保険に請求する

任意保険会社が治療費を支払わなくても、加害者の自賠責保険へ直接保険金を請求できます。

また人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険に加入していれば、そういった自分の保険にも請求できる可能性があるので、保険会社に相談してみましょう。

 

3.治療費トラブルで悩んだら弁護士に相談を

交通事故に遭い、保険会社から治療費が支払われなくて困ってしまったら弁護士までご相談ください。過失割合について争いがあるなら弁護士が資料を取り寄せて分析し、保険会社と交渉することも可能です。

弁護士が示談交渉に対応すれば賠償金が大きくアップするケースも多々あります。千葉県で交通事故に遭われたら、一度お気軽にご連絡いただけますと幸いです。

交通事故後、めまいや耳鳴りが止まらない場合の対処方法

2020-06-29

交通事故に遭うと、「めまい」や「耳鳴り」の辛い症状が続いてしまうケースがよくあります。これらの症状でも後遺障害認定を受けられる可能性があるので、事故後に症状が治まらないようであれば適切な検査を受けて後遺障害認定の手続きを進めましょう。

 

今回は交通事故後のめまいや耳鳴りの原因や対処方法を千葉の弁護士が解説します。

 

1.めまいや耳鳴りの原因

交通事故後のめまいや耳鳴りの原因と考えられる傷病には以下のようなものがあります。

1-1.むちうち

追突事故などに遭ってむちうち(頸椎の損傷)となった場合、めまいや耳鳴りが発生する可能性があります。むちうちとは外的な衝撃によって首の骨である「頸椎」が損傷を受ける傷病で、頸椎捻挫や外傷性頸部症候群、椎間板ヘルニアなどと診断されるケースが多数です。

一般的なむちうちでは首や肩、背中の痛みやコリなどが主症状となりますが、めまいや耳鳴りを伴うケースがあります。

 

1-2.バレ・リュー症候群

バレ・リュー症候群は、交通事故などの外傷をきっかけに自律神経系が乱れ身体中にさまざまな症状が発生する傷病です。むちうちの1種に分類されることもあります。

身体の平衡を保つ自律神経が正常に働かなくなるので、体温調節や発汗作用がうまく機能しなくなったり食欲不振、下痢、動悸息切れ、頭痛などが発生したり倦怠感、疲労感が強くなったりします。

めまいや耳鳴りを伴うケースも多数です。

 

1-3.脳脊髄液減少症

脳脊髄液減少症は、外的な作用によって脳を覆う硬膜やくも膜に穴が空き、中の髄液が漏れ出してしまう傷病です。膜によって保たれている圧のバランスが乱れるため、強い頭痛やめまい・耳鳴りなどの症状が発生します。

 

1-4.軽度外傷性脳挫傷

「脳挫傷」となった場合にもめまいや耳鳴りが発生する可能性があります。軽微な場合には被害者が「脳に傷害を負った」と意識しにくく、MRIなどの画像撮影をしても写りにくいため見過ごされるケースがあり注意が必要な症状です。

 

2.めまいや耳鳴りの治療方法

交通事故後にめまいや耳鳴りが止まらないなら、放置せずに必ず適切な診療科で治療を受けましょう。

  • むちうちの場合

むちうちの治療は「整形外科」で行います。

  • バレ・リュー症候群の場合

バレ・リュー症候群の場合には「ペインクリニック」の受診が有効です。

  • 脳脊髄液減少症や脳挫傷の場合

これらの脳損傷の場合、脳神経外科を受診しましょう。

  • 耳鼻咽喉科

めまいや耳鳴りが続く場合、耳鼻咽喉科で適切な治療や手術を受けられる可能性もあります。

 

まずは自分の症状に応じた病院を受診し、医師の指示に従って治療を進めましょう。

どこの病院に行けばよいか分からない場合、一番症状が近いと思われる傷病に対応した病院を受診してみてください。間違っていれば医師から適切な診療科を紹介してもらえるのが通常です。

 

3.めまいや耳鳴りで認定される後遺障害の等級

交通事故後、治療を終了してもめまいや耳鳴りの症状が残った場合、後遺障害認定される可能性があります。

3-1.12級か14級となるケースが多い

めまいや耳鳴りが残った場合に認定される等級は、多くのケースで12級または14級となります。

 

3-2.12級となる場合

12級となるのは椎間板ヘルニアなどの傷病をMRIで医学的に証明できる場合、耳鳴りなら「聴力検査(ピッチマッチ検査とラウドネスバランス検査)」で耳鳴りを医学的に証明できる場合です。後遺障害慰謝料は290万円程度となります。

3-3.14級となる場合

MRIや聴力検査などで症状を証明できなくても、そういった症状があることを合理的に説明できる状況であれば14級が認定されます。後遺障害慰謝料は110万円程度です。

 

4.めまいや耳鳴りで適正な賠償金を受け取るために

めまいや耳鳴りの後遺障害が残ったら、まずは後遺障害認定を受けることが第一です。認定されなければ後遺障害慰謝料も逸失利益も受け取れず、賠償金が大きく下がってしまいます。

 

検査結果などの資料を集めて適切に後遺障害認定の手続きを進めるには、弁護士によるサポートが必要です。当事務所では交通事故の被害者様へのサポートに力を入れて取り組んでいますので、めまいや耳鳴り、むちうちなどの症状にお困りの方はぜひとも一度、ご相談ください。

交通事故で介護費用を請求できる条件とは?

2020-03-04

交通事故に遭って被害者に介護が必要になったとき、寝たきりなどで明らかに介護が必要なら、通常保険会社から介護費用を拒まれることはありません。しかし被害者が一応動ける場合や日常生活で一部のみ介護を必要とする場合などには、保険会社に介護費用の支払いを拒まれてスムーズに払ってもらえないケースも多々あります。

 

今回は交通事故で介護費用を請求できるのはどういったケースなのか、千葉県の弁護士がご説明します。

 

1.要介護の後遺障害が残った場合

交通事故の後遺障害は「要介護」とそれ以外に分けられています。

要介護の後遺障害は以下の通りです。

 

1級

1神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 

2胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

2級

1神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 

2胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

 

たとえば高次脳機能障害や遷延性意識障害、内臓機能の障害などで常に介護を要する状態となったら要介護の1級、脊髄損傷や高次脳機能障害、内臓機能の障害などで随時介護を要する状態となったら要介護の2級が認定されます。

 

これらの後遺障害認定を受けた場合には、通常問題なく保険会社へ将来介護費用を請求できます。

 

2.要介護の後遺障害でなくても将来介護費用を請求できる場合

要介護の後遺障害認定を受けなくても、症状の内容や程度に鑑みて介護が必要と判断されれば将来介護費用を請求できます。

  • 症状が相当重い

排尿排便障害がある、高次脳機能障害で周囲による日常的な声かけが必要、上肢や下肢の麻痺があって日常生活に支障が出ている場合などに介護費用が認められる可能性があります。

  • 医師の指示がある

症状が重く、医師が「介護を受けるように」と指示を出していれば、介護費用が認められる可能性が高くなります。

 

3.介護費用が認められた裁判例

以下では具体的に介護費用がどういったケースが認められているのか、裁判例を確認しましょう。

 

3-1.遷延性意識障害

遷延性意識障害のケースでは将来介護費用が基本的に認められ、争いになるケースはほとんどありません。

 

高校生が遷延性意識障害となったケースで1億1,678万円の将来介護費用が認められたケース(千葉地裁平成17年7月20日)、11歳の被害者が遷延性意識障害となったケースで1億3,375万円の将来介護費用が認められたケース(大阪地裁岸和田支部平成14年7月30日)などがあります。

 

3-2.高次脳機能障害

高次脳機能障害のケースでは、症状の程度によって将来介護費用が認められるかどうか変わります。重度な場合には将来介護費用が支払われます。

 

高次脳機能障害で2級の後遺障害認定を受けた高校生のケースで4,760万円の将来介護費用が認められたケース(京都地裁平成15年10月31日)、3級の認定を受けたケースが「常時の付添は不要だが看視のために家族が常に家にいなければならない」として日額6,000円の将来介護費用を認めたケース(東京地裁八王子支部平成14年7月4日)、高次脳機能障害で5級、他の後遺障害と併合して4級となった事案で1,381万円の将来介護費用が認められた事案などがあります(東京地裁平成16年9月22日)。

 

3-3.脊髄損傷

脊髄損傷で1級の後遺障害が認定され、日常的に介護が必要と判断されて1億8,300万円の将来介護費用が認められたケース(東京地裁八王子支部平成12年11月28日)、四肢麻痺となって後遺障害1級が認定された59歳の男性被害者に7,551万円の将来介護費用が認められたケース(大阪地裁平成17年9月1日)などがあります。

 

3-4.その他

RSDで5級に認定された被害者につき682万円程度の将来介護費用が認められた事案(名古屋地裁平成16年7月28日)、同じくRSDで9級に認定された被害者に669万円程度の将来介護費用が認められたケース(大阪高裁平成18年8月30日)などがあります。

 

介護を要する状態になって保険会社が将来介護費用の支払いに応じない場合、上記に挙げた裁判例のように、訴訟をすれば高額な介護費用の支払いを受けられる可能性もあります。

千葉県で交通事故に遭い、保険会社の対応に疑問を感じておられるなら弁護士までご相談下さい。

介護費用の計算方法

2020-02-26

交通事故に遭うと、被害者に介護が必要となるケースが少なくありません。

たとえば植物状態(遷延性意識障害)や脊髄損傷で寝たきりとなってしまった場合、重度の高次脳機能障害で常時の看護が必要な場合などです。

 

介護が必要になったら相手に「介護費用」を請求できます。

ここでは介護費用をどのようにして計算するのか、千葉県の弁護士が解説します。

 

1.介護費用の計算方法

交通事故で介護が必要になると、一生涯にわたる介護を要します。

症状固定前に発生した介護費用だけではなく、その後の将来の分の介護費用も請求しなければなりません。このような将来必要になる介護費用を「将来介護費用」といいます。

 

1-1.将来介護費用の計算式

将来介護費用は、以下のような計算式によって計算します。

 

将来介護費用=1年にかかる介護費用×症状固定時の平均余命に対応するライプニッツ係数

 

以下でそれぞれの要素をどのように算出するのかご説明します。

 

1-2.1年にかかる介護費用の計算方法

1年にかかる介護費用は、家族が介護するのか職業介護士に介護を依頼するのかによって異なります。

家族が介護する場合、1日あたり8,000円として計算します。

職業介護士に依頼する場合には「実際にかかる金額(実費)」を基準に計算します。介護士に依頼した場合の実費はケースによりますが1日1~3万円程度です。

 

金額だけをみると職業介護士に依頼した方が高くなりますが、介護士へ支払いをしなければならないので手残りが大きくなるわけではありません。

 

一方、家族が介護する前提で示談すると実際の支出はないので手残りが大きくなりますが、家族に大きな負担がかかります。またしばらくの間は家族が介護できても、後に事情が変わって介護士に依頼するケースもあります。その場合、示談時に受け取っていた示談金が少額になっており損をしてしまうリスクがあります。

 

交通事故で介護が必要になった場合、家族介護を前提にするのか職業介護士に依頼するのか、慎重に検討する必要があるといえます。迷われたら弁護士がアドバイスいたしますので、ご相談下さい。

 

1-3.平均余命とは

将来介護費用は「平均余命」を基準として計算します。平均余命とは「その年齢の人が平均的にあと何年生きるか」という年数です。

単純に「平均寿命-年齢」で計算されるものではないので注意してください。

年齢ごとの平均余命は厚生労働省から発表されているので参照しましょう。

男性

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/dl/life18-06.pdf

女性

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/dl/life18-07.pdf

1-4.ライプニッツ係数とは

将来介護費用を計算するとき「ライプニッツ係数」を適用します。ライプニッツ係数とは、将来にわたって発生する費用を示談時に一括で受け取る利益を調整するための指数です。

本来、将来介護費用はその都度発生し受け取るべきものです。しかし当初にまとめて受け取るので、被害者には「運用利益」が生じると考えられます。その利益を「中間利息」といいますが、これを差し引くため、ライプニッツ係数を適用します。

 

ライプニッツ係数は2020年3月までは法定利率の5%を基準として算定されますが2020年4月からは民法改正によって法定利率が3%となるため、数字が変わります。

 

 

2.定期金方式とは

将来介護費用を「定期金方式」で受け取るケースもあります。定期金方式とは、示談時に一括で受け取るのではなく将来にわたって毎月などの定期的に介護費用を受け取る方法です。この方式なら中間利息を控除しないので、実際に必要な全額を受け取れるとも思えます。

ただ途中で保険会社が倒産・廃業するリスクや、何らかの理由で不払いにされるおそれがあります。将来にわたって延々と相手の保険会社との関わりが続くため、ストレスに感じる方もおられるでしょう。

定期金方式による支払いを提案されたとき、安易に受け入れるのは危険です。

 

交通事故で被害者に介護を要する状態になると、検討すべき問題が多数発生します。不利にならないように、ぜひとも弁護士までご相談下さい。

遷延性意識障害になった場合の注意点

2020-02-05

交通事故では被害者が意識を失ったまま回復せず、いわゆる「植物状態」となってしまうケースがあります。植物状態を医学的に「遷延性意識障害」といいます。

遷延性意識障害になると、被害者には一生介護が必要となりご家族には大変な負担がかかりますし、示談交渉の際などにもいろいろな注意点があります。

 

今回は被害者が遷延性意識障害となったときの注意点について、弁護士が解説します。

 

1.遷延性意識障害の認定要件

交通事故で意識障害となり、長期にわたって回復せず以下の要件を満たせば「遷延性意識障害」と認定されます。

 

  • 自力では移動できない
  • 自力では摂食できない
  • 大小便のコントロールができない(失禁状態)
  • 眼球で物を追うことはあっても認識できない
  • 発語することはあっても意味のある言葉を発せない
  • 簡単な反応(目をつぶる、手を握り返すなど)はあってもコミュニケーションをとれない

 

上記の6つのすべてを満たす状態が3か月以上続いたときに「遷延性意識障害」と判断されます。

 

2.遷延性意識障害となった場合の問題点

交通事故で被害者が遷延性意識障害となった場合、通常の事故とは異なり以下のような点に注意が必要です。

2-1.長期間受け入れてくれる施設が少ない

被害者が交通事故で意識障害に陥ったら、通常は病院へ運ばれて治療を受けることになるでしょう。

遷延性意識障害の場合、急性の状態が落ち着いても意識が回復しないので、入院が長期化します。すると、病院から退院を促される可能性があります。病院には次々新しい患者が入院してきますし、3か月が経過すると保険点数が低くなるという経済的な事情もあるためです。

ところが遷延性意識障害の患者を受け入れてくれる施設はそう多くはないので、ご家族が行き先に困るケースがみられます。

2-2.介護場所を決定する必要がある

被害者が遷延性意識障害となった場合、生涯にわたる介護が必要です。その場合「施設で介護」を受けるのか「自宅で介護」をするのか決めなければなりません。

どちらを選択するかで請求できる賠償金額も大きく変わってきますし、ご家族にかかる負担も違ってきます。ご家族は重大な決断を迫られ判断に迷うケースが少なくありません。

2-3.成年後見人を選任する必要がある

遷延性意識障害となった場合、被害者本人は加害者との示談交渉を進められません。

家庭裁判所で「成年後見人」を選任し、後見人が示談交渉や賠償金請求の手続きを行う必要があります。

どうやって後見人を選任すれば良いのか、また誰が成年後見人になるのが良いか、後見人を選任した後や賠償金を受け取った後の対応に迷ってしまうご家族の方もおられます。

 

2-4.保険会社から「生活費控除」を主張されるケースがある

被害者が遷延性意識障害となった場合、保険会社から「生活費控除」を主張されるケースが多々あります。遷延性意識障害の患者は生活のための活動をあまりしないので生活費がかからないはずだと言われるのです。

しかし裁判例では遷延性意識障害のケースでも生活費控除を認めないものがたくさんあるので、そういった主張を安易に受け入れるべきではありません。

2-5.平均余命が短くなると主張される

遷延性意識障害の事例では、生涯にわたる介護費用を請求できます。その際には「平均余命」を使って介護費用を計算します。

ところが保険会社は「遷延性意識障害の患者は一般の人よりも平均余命が短い」と主張して介護費用を減額するよう主張してくるケースがよくあります。

 

このような主張も裁判では認められない可能性が高いので、ご家族としては受け入れるべきではありません。

 

3.交通事故でご家族が遷延性意識障害となったら弁護士へご相談下さい

交通事故で被害者が遷延性意識障害になると、上記のようなさまざまな困難な問題が発生します。不利益を防止しご本人やご家族の権利を守るには、通常の交通事故事案以上に弁護士によるサポートが必要といえるでしょう。

弁護士が介護場所の判断や介護費用の計算、示談交渉などを行います。千葉で交通事故に遭われてお困りのご家族様は、是非とも一度ご相談下さい。

遷延性意識障害で認定される後遺障害の等級と賠償金

2020-01-28

交通事故で被害者が植物状態となり「遷延性意識障害」になったら「後遺障害認定」を受けられます。

今回は遷延性意識障害で認定される後遺障害の等級と賠償金の種類、相場について千葉の弁護士が解説します。

 

1.遷延性意識障害で認定される後遺障害の等級

交通事故で認定される後遺障害には1級から14級までの「等級」があり、1級がもっとも重く14級がもっとも軽い等級です。等級が重くなればなるほど、慰謝料などの賠償金の金額も増額されます。

 

遷延性意識障害の場合、被害者は自力で移動・摂食・大便小便のコントロールなどの生活の基本動作を何もできない極めて重篤な状態となるため認定される後遺障害等級は、もっとも重い1級です。

 

2.遷延性意識障害で請求できる賠償金

被害者が遷延性意識障害となった場合に請求できる賠償金の種類や金額は、以下の通りです。

2-1.治療費

症状固定時までにかかった病院での治療費、検査費用、診断料、投薬料などの費用を、必要かつ相当な範囲で全額請求できます。

 

2-2.付添看護費用

親族が入院中に付き添った場合、1日当たり6,500円程度の付添看護費用を請求できます。

症状固定前に自宅で親族が付き添った場合、自宅における付添看護費用が認められるケースもあります。

2-3.交通費

親族が病院に通うため交通費がかかったケースでは、交通費を請求できます。タクシーを使う必要があればタクシー代も請求できますし、自家用車で通院した場合にはガソリン代と駐車場代、高速代を請求できます。ガソリン代は1キロメートル当たり15円として計算します。

2-4.休業損害

被害者が症状固定するまでの間に会社を休んだりして休業損害が発生したら、加害者へ請求可能です。

2-5.入通院慰謝料

被害者が症状固定するまでの間の入院期間に応じて入通院慰謝料が支払われます。

相場の金額は、入院3か月なら145万円、4か月なら184万円、5か月なら217万円、6か月なら244万円程度です。

2-6.後遺障害慰謝料

遷延性意識障害で後遺障害1級が認定されると、2,800万円程度の後遺傷害慰謝料を請求できます。後遺障害慰謝料は入通院慰謝料とは別途支払われます。

また、ケースによっては家族固有の慰謝料が認められる可能性もあります。

2-7.後遺障害逸失利益

有職者や主婦、子どもなどが遷延性意識障害となって後遺障害認定を受けると「逸失利益」を請求できます。逸失利益とは、働けなくなったことによって得られなくなってしまった将来の収入に相当する損害金です。遷延性意識障害になると、一生働けなくなるので本来得られるはずだった収入を得られなくなり損失が発生します。それを「後遺障害逸失利益」として請求できるのです。

後遺障害逸失利益の金額は、事故前の被害者の年収額や年齢によって異なります。

数千万円となるケースが多く、高額な方は1億円を超えるケースもあります。

 

2-8.介護費用

遷延性意識障害となった場合、ご本人は一生にわたって全面的な介護を要するので平均余命に対応する介護費用を請求できます。

介護費用は、ご家族が介護するのか専門の介護士に依頼するのかで金額が変わってきます。

ご家族が介護する場合、1日あたり8,000円として計算しますが専門の介護士に依頼すると実際にかかる費用を請求できるので金額は上がります。

 

2-9.自宅改装費用

遷延性意識障害で自宅介護をするときには、改装を要するケースがあります。その場合、自宅改装費用も損害賠償金として請求可能です。

 

遷延性意識障害では逸失利益や将来介護費用が高額になるため、賠償金が1億円を超えるケースも少なくありません。ただ、自宅介護を選択するか施設介護を選択するか、家族介護か専門の介護士に依頼するかによっても大きく金額が変わってきます。

一般の方にはどういった対応をとるのが最善か判断しにくいものです。被害者の方が適切な賠償金を受け取るため、迷われたら弁護士までご相談下さい。

交通事故で請求できる「交通費」「宿泊費」について

2020-01-22

交通事故で受傷し、通院するには交通費がかかります。遠方の病院に入通院する場合、宿泊費が必要となるケースもあるでしょう。

交通費や宿泊費も交通事故によって発生した損害といえるので、加害者側へ請求できます。

 

今回は交通事故で加害者側へ「交通費」や「宿泊費」をどこまで請求できるのか、千葉の弁護士が解説します。

 

1.交通事故で請求できる交通費の種類や計算方法、用意しておく資料

交通事故で病院に通院した場合、加害者に対し以下のような交通費を請求できます。

1-1.公共交通機関

電車やバスなどの公共交通機関を利用して通院した場合、全額を実費で請求できます。

この場合、合理的な経路であれば運賃額は明らかなので個別の領収証は不要で、病院に通った日数分の交通費が支給されます。

ただし特急列車を利用した場合などには特急料金の領収証が必要です。

1-2.タクシー代

被害者が重傷などでタクシーを利用する必要性があった場合には、タクシー代も請求可能です。

タクシー代については常に全額認められるとは限らず「必要な範囲で相当な限度にとどまる場合」に支払われます。以下のような事情を考慮して必要性や相当性が判断されます。

  • 被害者の受傷部位や程度

被害者が重傷のケース、足を受傷して歩けない場合、身体が衰弱していて人混みを移動すると危険がある場合などにはタクシー利用が認められます。

  • 被害者の年齢

被害者が幼児などの場合、一般成人よりもタクシーを使う必要性が認められやすくなります。

  • 近隣の公共交通機関の便

公共交通機関が近くにない場合などにはタクシー代が認められやすくなります。

 

1-3.ガソリン代

自家用車で通院する場合、ガソリン代を請求できます。ガソリン代は「1キロメートルあたり15円」として計算されます。

1-4.高速代

自家用車で通院する際に高速道路を利用した場合「必要性」があれば実費全額が支払われます。

以下のような場合には高速道路を利用する必要性が認められやすくなります。

  • 病院が遠方で、下道を通るのが合理的でない
  • 遠方の病院に通院する必要がある

近距離の病院に行くのにわざわざ高速道路を利用したり、近距離にも良い病院があるのにわざわざ遠くの病院を選んで高速道路を使って通院したりすると、高速道路料金を負担してもらえない可能性があります。

 

また高速代を請求するには支払った証拠が必要なので、領収証やETCの明細書をとっておきましょう。

 

1-5.駐車場代

自家用車で通院して駐車場代がかかった場合には、駐車場代も実費で支払われます。ただしどのくらいかかったか明らかにするため領収証をとっておく必要があります。

1-6.家族の交通費

本人が入院している場合、ご家族が付添看護などのために病院に通うケースもあるでしょう。その場合、家族が支出した交通費も損害の内容として賠償されます。

支払い基準は本人のケースと同様です。高速代や駐車場代については領収証をとっておきましょう。

 

2.交通事故で請求できる宿泊費、不動産賃料

被害者が遠方の病院や施設に入院すると、家族が看護のために近くのホテルに宿泊しなければならないケースがあるものです。また家族が病院の近くに賃貸アパートなどを借りて病院に通い、生活のための基本的な器具を購入することもあるでしょう。

被害者の受傷の部位や程度などの状況によって必要性が認められれば、家族の宿泊費や不動産の賃料、生活用品購入費用も損害として加害者側へ請求できます。

 

裁判例でも、被害者が重傷のケースでは家族が滞在したホテル代、数か月に及ぶ不動産賃料、生活器具購入費用を認められたものが多々あります(横浜地裁平成2年11月30日、東京地裁平成10年11月12日、札幌地裁平成16年2月5日など)。

 

千葉で交通事故に遭い、どこまで交通費や宿泊費用を請求できるのか、また計算方法についてご不明な場合にはお気軽に弁護士までご相談下さい。

親族が仕事を休んで看護した場合の休業損害

2019-12-24

交通事故に遭うと、入院看護が必要になるケースがあります。

親族に看護してもらったら、親族が仕事を休まねばならない状況も発生するでしょう。その場合、親族の休業損害を請求できるのでしょうか?

 

今回は親族が仕事を休んで被害者の看護をしたときの休業損害について、解説します。

 

1.親族の「休業損害」も支払われる

1-1.親族の休業損害は賠償金に含まれる

一般的に、親族が入院中の被害者に付き添った場合には「付添看護費用」として1日あたり6,500円程度が支払われます。

しかし親族が働いている場合、仕事を休んで付き添ったら6,500円を超える損害が発生するケースも多数あります。その場合、6,500円しか支払われないと、親族が不利益を受けます。

 

実はこのようなとき、親族は加害者に付添看護費用ではなく休業損害を請求できます。

親族の実際の給与額や収入額をもとに1日あたりの基礎収入を算定し、それをもとに付添日数分の休業損害の支払いを求めることが可能です。

 

1-2.親族の休業損害計算の具体例

たとえば直近3か月分の給料額が72万円のサラリーマンの夫が仕事を休んで交通事故に遭った妻に付き添ったとします。

その場合、1日当たりの基礎収入額は8,000円です。15日間付き添ったら12万円の休業損害を請求できます。

 

 

2.「付添看護費」との関係

一般的なケースでは親族が被害者に付き添ったら、1日あたり6,500円程度の付添看護費用が支払われます。上記のように親族に実際に発生した休業損害が支払われる場合、付添看護費用の6,500円はどうなるのでしょうか?

親族が付き添ったことについての損害や手当が「休業損害」として支払われたら、別途付添看護費用が支払われることはありません。同じ損害について二重取りすることになってしまうからです。

たとえば上記の具体例で夫が妻に付き添った場合、夫は1日あたり8,000円の休業損害を請求できますが、それ以上に6,500円をプラスすることはありません。親族が付き添った場合に請求できるのは「1日あたり6,500円」か「実際に発生した休業損害」の「どちらか高い方」となります。

 

3.親族の休業損害が高額な場合

親族が被害者に付き添ったとき、実収入を基準として休業損害を請求できますが「限度」があるので要注意です。

親族の休業損害は「本職の看護師に看護してもらった場合の金額」を超えることができません。親族が付き添うことによって本職の看護師の費用を超えるなら、親族ではなく本職の看護師に依頼して付き添ってもらうのが合理的だからです。

本職の看護師に依頼しないのは被害者側の自由ですが、その場合には休業損害全額ではなく本職の看護師にかかる費用まで減額されます。

具体的に「1日いくらまで」とはっきり定められているわけではありませんが、だいたい1日あたり1~15,000円くらいまでの範囲になるでしょう。

親族が高収入な方の場合、付き添ってもらっても全額の休業損害が出ない可能性が高くなります。

 

4.親族の休業損害が高額でも支払われる特殊なケース

親族が高収入でも、全額の休業損害が支払われるケースが例外的に存在します。それは「どうしてもその親族が付き添わなければならない特殊事情があるケース」です。

そういった事情がある場合、本職の看護師に看護を任せることができないので、親族が仕事を休んで看護して発生した休業損害全額と交通事故に因果関係が認められます。

 

たとえば小さな子どもが交通事故に遭い、母親がどうしても常時付き添わねばならないケースなどでは母親の休業損害が全額認められる可能性があります。

 

 

5.休業損害の計算に疑問を感じたら弁護士にご相談を

交通事故の休業損害計算の場面では、いろいろな法的問題が発生します。保険会社の提示する休業損害額が必ずしも適正なわけではありません。弁護士が示談交渉に対応することで、大幅に増額されるケースも多々あります。

休業損害や付添看護費用の計算で疑問を感じた場合には、どうぞ弁護士までご相談下さい。

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