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従業員が交通事故を起こした場合の会社の責任

2020-06-15

従業員が交通事故を起こしてしまったら、会社にはどういった責任が及ぶのでしょうか?

雇用者である企業には、被害者への賠償金支払いなどの対応の他、労災に関する対応も要求されます。

今回は従業員が交通事故を起こしてしまった場合の会社の責任について弁護士が解説します。

 

1.従業員が交通事故を起こして会社に責任が発生するケース

従業員が交通事故を起こすと、雇用主である事業者にも責任が発生する可能性があります。

1-1.使用者責任

使用者責任とは、従業員を使って利益を得ている雇用主に発生する責任です。従業員が業務の遂行中に行った不法行為について、使用者に責任が及びます。

業務の遂行中かどうかは「外形的」に判断されるので、実際には業務中ではなくても外目に業務中のように見えれば使用者責任が発生する可能性があります。

  • 営業外回り社員が営業車で交通事故を起こした
  • 従業員が会社のロゴマークの入っている社用車で業務時間外に交通事故を起こした
  • 従業員が業務時間中に仕事で使っているマイカーで交通事故を起こした

 

上記のような場合、使用者には使用者責任が発生するので、事故を起こした従業員本人と連帯して被害者へ賠償金を払わねばなりません。

 

1-2.運行供用者責任

会社には「運行供用者責任」も発生する可能性があります。運行供用者責任とは、自動車によって利益を受けているものが負うべき責任です。

車の運行を支配して利益を受けている場合に運行供用者責任が発生します。具体的には「車の所有者」には車に対する運行支配や運行利益があると考えられています。

事故を起こした車の「名義」が会社になっていれば、通常は会社に運行供用者責任が及ぶと考えましょう。

 

たとえば従業員が業務時間外に社名やロゴマークの入っていない社用車を運転していた場合には使用者責任は発生しませんが、車が社用車で会社名義になっていたら運行供用者責任が発生する可能性があります。

 

1-3.従業員が被害者になれば労災認定される

従業員が交通事故の「被害者」になる可能性についても考えておくべきです。従業員が通勤退勤途中や業務中に交通事故の被害に遭えば「労災」となります。

その場合、事業主としても労災保険の申請に協力したり労働基準監督署へ報告したりしなければなりません。

 

 

2.任意保険に入っていれば賠償問題は保険会社が対応する

会社に使用者責任や運行供用者責任が発生するケースでも、「任意保険」が適用される場合には難しい対応は不要です。

任意保険には対人対物賠償責任保険がついているので、被害者へ支払うべき賠償金は保険会社が負担します。また被害者との示談交渉も保険会社の担当者が進めるので、事業主が直接被害者と話し合ったり賠償金を支払ったりする必要はありません。

 

3.保険が適用されない場合の対処方法

任意保険が適用されない場合には会社や従業員自身が被害者と示談交渉を行って賠償金を支払わねばなりません。ただし事業者が被害者へ賠償金を支払った場合、事故を起こした従業員に対しては「求償」できます。求償とは、連帯債務者に対して本人の負担分を請求することです。

 

たとえば発生した損害が1,000万円で会社側の責任が4割、本人の責任が6割とします。この場合、会社が被害者へ1,000万円の全額を賠償したら、会社は従業員へ600万円を求償できます。

 

 

4.労災対応

従業員が交通事故でけがをした場合などには、労災対応が必要です。労災隠しは犯罪になるので、決してやってはなりません。

まず従業員が労災保険を申請する際には療養補償給付や休業補償給付用の申請に協力しましょう。労働者が休業する場合、1~3日目までの休業補償は事業主が行う必要があります。

 

また従業員がけがで休業したり死亡したりした場合、事業者は労働基準監督署へ「労働者死傷病報告」をしなければなりません。

 

交通事故が起こった原因が企業の管理不行届きや安全配慮義務違反による場合、企業が労働者へ損害賠償義務を負う可能性もあります。

 

自社従業員が交通事故を起こした場合、企業には状況に応じた適切な対応を要求されます。当事務所では千葉県の中小企業への法的支援やアドバイスを積極的に行っていますので、お気軽にご相談下さい。

労災の後遺障害認定と自賠責の後遺障害認定の違い

2020-06-08

勤務中に交通事故に遭ったら「労災保険」が適用されます。労災保険には「後遺障害」への補償があるので、むち打ちや骨折、脳障害などの後遺障害が残ったら労基署へ申請して後遺障害認定を受けましょう。

 

また交通事故では自賠責保険にも後遺障害認定の制度があります。

 

被害者の方は労災の後遺障害認定制度と自賠責の後遺障害認定制度を混乱してしまうケースも多いのですが、正しい知識がないと必要な給付を受けられず損をしてしまうおそれがあります。

 

今回は労災の後遺障害認定と自賠責の後遺障害認定の違いや対処方法について、千葉の弁護士が解説します。労災に該当する交通事故に遭われた方は、しっかり確認してみてください。

 

1.労災と自賠責の後遺障害認定は別に申請する必要がある

交通事故が労災になる場合、労災でも後遺障害認定を受けられますし自賠責でも後遺障害認定の対象になります。

「どちらも後遺障害認定なのだから、同じ制度なのではないか?」と思う方もいるでしょう。

しかし労災と自賠責の後遺障害認定は全く異なる制度であり、判断する機関も給付金や賠償金の支払い元も支払い金額もすべて異なります。

 

どちらか一方に申請して後遺障害が認められても、他方で手続きしない限り他方では後遺障害として認められません。また一方で後遺障害認定されても、他方では非該当とされたり等級を落とされたりする可能性もあります。

申請用の書式や後遺障害診断書の書式も労災と自賠責保険とで異なります。

 

交通事故で後遺症が残ったら、必ず労災保険と自賠責保険の両方でそれぞれ後遺障害認定請求を行いましょう。

 

2.労災と自賠責の後遺障害認定の基準はほぼ同じ

後遺障害には「認定基準」があります。認定基準とは「どういったケースで何級に該当するか」という判断基準です。

実は労災と自賠責の後遺障害認定基準はほとんど同じです。自賠責が労災の後遺障害認定基準を踏襲しているからです。

その意味でどちらかで後遺障害認定を受けられると、他方でも認定を受けられる可能性が高いと言えます。

ただし判断する機関や調査方法などが異なるので、結果が異なる可能性はありますし「労災で認められたから自賠責でも認めてほしい」などの主張は通用しません。

 

後遺障害認定を成功させるには、請求先の調査・認定方法に応じた対応が要求されます。お一人で両方の手続きを進めるのは大変なので、より確実に高い等級の認定を受けるため、弁護士までご相談下さい。

 

3.労災と自賠責の後遺障害で受け取れる補償の範囲は異なる

労災と自賠責保険の両方で後遺障害認定を受けられたら、それぞれから支払われる給付金や賠償金の関係はどうなるのでしょうか?

 

3-1.二重取りはできない

この場合、重なり合うものについてはどちらか一方からしか受け取れません。同じ損害をカバーするお金について、二重取りすると被害者が必要以上に利益を得てしまうからです。

たとえば「逸失利益」については重なり合うと考えられるので、どちらかから支払いを受けると他方が減額されます。

 

3-2.慰謝料や重ならない逸失利益は受け取れる

ただし重ならない部分については、それぞれ支給を受けられます。

たとえば自賠責で後遺障害認定を受けられたら「慰謝料」が支払われますが、労災保険からは慰謝料の支給がないので、慰謝料は全額受け取れます。

 

また逸失利益についても全額が重なるわけではありません。たとえば後遺障害1~7級の場合、労災の給付金は年金方式で支払われます。この場合、当初の7年分は自賠責保険との関係で支払いが停止されますが、8年目からは全額支給されます。

 

4.労災の交通事故に遭ったら弁護士までご相談下さい

以上のように、労災の交通事故に遭ったら労災保険と自賠責保険の両方でできるだけ高い等級の後遺障害認定を受けることによって最大限の補償を受けられます。

弁護士に依頼するとより確実に等級認定を受けやすくなりますし、対応の手間も省けます。相手の保険会社との示談交渉も有利に進められて賠償金額が大幅に増額されるケースも多いので、千葉で交通事故に遭われたらぜひとも一度、ご相談下さい。

相手が信号無視をした交通事故の正しい対処方法を弁護士が解説

2020-05-29

交通事故の相手が「信号無視」をしていたら、過失割合や賠償金の計算などの際に慎重な対応が必要です。

相手が信号無視を否定するケースもよくあるので、立証方法も把握しておきましょう。

 

今回は交通事故の相手が信号無視をしていた場合の正しい対処方法を、千葉県の弁護士が解説します。

 

1.信号無視の交通事故における過失割合

交通事故で一方当事者が信号無視をしていると、当然その当事者の過失割合が大きくなります。

信号無視は「赤信号」だけではありません。道路交通法により「黄信号の場合には原則として停止しなければならない」とされているので、黄信号で交差点に進入した場合でも「信号無視」となる可能性があります。

 

以下で典型的な信号無視の事案における過失割合をみていきましょう。

 

1-1.交差点で直進車同士の交通事故

  • 一方が赤、一方が青…赤信号の車が100%、青信号の車が0%
  • 一方が赤、一方が黄色…赤信号の車が80%、黄信号の車が20%
  • どちらも赤…50%:50%

 

1-2.交差点で右折車と直進車の交通事故

 

直進車側の色

右折車の色

直進車の過失割合

右折車の過失割合

黄色

青信号で進入して黄信号になってから右折

70%

30%

黄色

黄色

40%

60%

赤色

赤色

50%

50%

赤色

青信号で進入して赤信号になってから右折

90%

10%

赤色

黄信号で進入して赤色に変わってから右折

70%

30%

赤色

右折の青矢印信号

100%

0%

 

以上のように、どちらかの当事者が信号無視しているとその当事者の過失割合が大きく上がります。特に赤信号を無視すると責任が重くなるので注意が必要です。

 

 

2.信号無視されると慰謝料が増額される可能性がある

相手が信号無視していた場合、通常の相場より慰謝料が増額される可能性があります。信号無視は悪質な道路交通法違反で、責任が重くなるからです。

 

どのくらい増額されるかは、ケースによって異なります。信号無視した相手がひき逃げした場合や事故後の対応が不誠実な場合などには増額割合が大きくなります。反対に信号無視してもその後に誠実に対応した場合などには、あまり増額されない可能性もあります。

 

弁護士であれば適切な慰謝料の金額を算定できるので、相手からの提示額に疑問を持たれたらお気軽にご相談下さい。

 

3.信号無視を否定された場合の立証方法

信号無視をした相手が、示談交渉時に「信号無視していなかった」と主張し始めるケースがよくあります。相手が嘘をついたら、以下のような方法で立証を検討しましょう。

3-1.実況見分調書や供述調書を取り寄せる

事故直後に行われた実況見分の調書や、事故直後にとられた相手の供述調書に本当の信号機の色が記載されている可能性があります。検察庁に照会をしてこれらの書類を取り寄せれば相手の嘘を崩せます。

3-2.目撃者を探す

事故の目撃者が信号機の色を確認していれば、証言を得ることによって信号機の色を立証できます。

3-3.ドライブレコーダーを確認する

当事者の車や周辺車両にドライブレコーダーが設置されていて信号機の色が写っていれば、当時の信号機の色を判定できます。

3-4.信号サイクル表を分析する

都道府県の警察本部に保管されている信号サイクル表を分析することにより、事故当時の信号機の色を推定して相手の嘘を崩せるケースもあります。

 

信号機の色を証明するには、実況見分調書や信号サイクル表の取り寄せや分析が必要です。

お一人で対応するのが困難な場合には、お早めに弁護士にご相談下さい。

 

4.信号無視した相手に成立する刑事責任

信号無視は重大な道路交通法違反です。交通事故を起こした当事者には「自動車運転処罰法違反」の罪が成立しますが、単純な人身事故のケースよりも信号無視をした分、刑事罰が重くなります。

また信号無視で危険運転をしていた場合「危険運転致死傷罪」が成立し、22年6か月以下の懲役刑など極めて重い刑罰が適用される可能性があります。

ひき逃げをすると、さらに罪が加重されます。

 

相手の刑事裁判の行方を知りたい方は、被害者参加制度を使って相手の刑事裁判に参加し被害者の立場から意見を述べたり尋問をしたりできます。

弁護士が被害者の代理人を務めることもできますので、関心があったらご遠慮なくお問い合わせ下さい。

 

悪質な信号無視の交通事故で被害に遭ったら、適切に損害賠償を受けるべきです。相手や保険会社の対応に疑問や不安がありましたら、お早めに弁護士までご相談下さい。

バイク事故の損害賠償|過失割合と注意点

2020-05-19

バイク運転中に交通事故に遭うと、四輪車のケース以上に重傷を負いやすく後遺症が残る可能性も高いので注意が必要です。

バイク事故では四輪車同士の事故と「過失割合」が異なり、バイク側の過失割合が小さく修正されます。事故に遭ったときに損をせずきちんと権利を実現するため、バイク事故の過失割合や後遺障害、損害賠償の方法について正しい知識を持っておきましょう。

 

今回はバイク事故の損害賠償請求における注意点を千葉県の弁護士が解説します。

 

1.バイクは任意保険の加入率が低い

交通事故に備えるには任意保険へ加入しておくべきです。任意保険に加入していれば、相手に与えた損害については保険会社から賠償金を払ってもらえますし、自分が被った損害についても補償を受けられます。

また対人賠償責任保険や対物賠償責任保険には「示談代行サービス」がついているので、保険会社の担当者へ相手との示談交渉を任せられるメリットもあります。

 

ところがバイクは任意保険への加入率が非常に低くなっています。2017年に損害保険料率算出機構が発表した統計データによると、バイクの任意保険(対人対物賠償責任保険)への加入率は40%程度、搭乗者傷害保険への加入率は約27%にとどまります。

 

四輪車の場合には対人対物賠償保険への加入率が80%を超えているので、バイクの場合にはその半数程度しかありません。

 

バイクの場合は四輪車と違い、ライダーの交通事故リスクへの意識が低めになっています。

しかしバイクで事故に遭うと四輪車以上に大けがをする可能性が高く後遺障害が残ったり死亡したりする事案も多々あります。相手に対する損害賠償が必要な場合も少なくないので、軽く考えてはなりません。

バイクに乗るなら、たとえ原付であっても必ず任意保険に加入しましょう。

 

 

2.バイク事故の過失割合

バイク事故では、相手との間で「過失割合」について争いが発生する可能性があります。

バイクと四輪車の事故の場合、一般の四輪車同士の事故と比べてバイクの過失割合が小さく修正されます。バイクは四輪車と比べて車体が小さく速度も遅いので事故を避けにくく、ライダーの身体がむき出しになっているのでダメージが大きくなります。このようにバイクは四輪車よりも弱い立場なので、保護が強くなって過失割合を小さくされるのです。

 

たとえば信号機のある交差点で直進車同士が衝突した場合、バイク側の信号機が黄色、四輪車が赤色ならバイクの過失割合が10%、四輪車の過失割合が90%です。

反対にバイクが赤色、四輪車が黄色ならバイクの過失割合が70%、四輪車の過失割合が30%となります。

双方とも赤信号の場合、バイクが40%、四輪車が60%です。

 

多くのケースにおいてバイクの過失割合は四輪車より有利に修正されます。バイク事故に遭ったときに過失割合が高すぎるのではないか?と感じたら弁護士が適切な割合を算定いたしますので、お気軽にご相談下さい。

 

3.バイク事故と後遺障害認定

バイクは鉄の壁によって守られている四輪車とは異なり、事故の衝撃がダイレクトにライダーへ伝わります。転倒すると大けがをして、後遺障害が残るケースも多数あります。

よくあるのは以下のような後遺障害です。

  • 脳障害

高次脳機能障害、てんかんなどの後遺障害です。

  • 脊髄損傷

脊髄が損傷し、麻痺などの後遺障害が残ります。

  • 腕や脚の後遺障害

骨折して腕や脚を欠損したり関節が動きにくくなったり脚が短縮してしまったりします。

  • 腹部、内臓機能の後遺障害

肺や心臓、消化器系などの内臓機能が失われて不便な生活となる後遺障害です。

 

後遺障害が残ったら、自賠責で後遺障害認定を受けて適切な賠償金を受け取れるように示談交渉を進めなければなりません。

より確実に高い等級の後遺障害認定を受け、法的な基準を適用して高額な慰謝料や賠償金を獲得するには、弁護士によるサポートが必要です。

 

当事務所では交通事故被害者へのサポートに積極的に取り組んでおり、バイク事故の解決実績や後遺障害認定を得た実績も高くなっています。親身になってお話をお伺いしますので、千葉県周辺で交通事故に遭われた方は是非とも一度、ご相談下さい。

示談書を公正証書にすべきケースと作成方法について

2020-05-07

交通事故で加害者側と示談するとき、必ずしも示談書を「公正証書」にする必要はありません。

ただし状況によっては、公正証書作成を強くお勧めする場面があります。

今回はそもそも公正証書とはどのようなものなのか、示談書を公正証書にすべきケースや作成方法について、千葉で交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士が解説します。

 

1.公正証書とは

公正証書とは、公務員の1種である「公証人」が職務として作成する公文書です。

一般の民間人が作成した文書を比べると信用性が非常に高く、公証役場で原本が保管されるため紛失や書き換えなどのリスクもありません。

 

また公正証書には「強制執行認諾条項」をつけることが可能です。これをつけておけば、金銭債務の債務者が支払いをしなかったとき、債権者は公正証書を使って債務者の財産の差押ができます。

 

たとえばお金を貸したときの「金銭消費貸借契約書」を公正証書にしておくと、借主が支払わなかったときに貸主がすぐに借主の給料や財産を差し押さえて債権回収できます。

 

2.交通事故示談で公正証書を作成するメリット

交通事故の示談で公正証書を作成するメリットは、公正証書を作成すると「示談金が不払いになったときに回収が容易になる」ことです。

被害者と加害者が話し合いをして示談が成立しても、加害者が約束通りに支払ってくれるとは限りません。分割払いの約束をした場合などには、途中で不払いになってしまうリスクも高くなります。

 

そんなとき、示談書が公正証書になっていれば被害者は裁判をせずに直接加害者の財産を差し押さえられます。もしも公正証書ではない単なる当事者間の示談書しかなければ、いったん裁判をしてから差押えをしなければならないので手間がかかりますし、その間に加害者が財産隠しをするおそれも高くなります。

 

こういったリスクを考えると、被害者としてはできるだけ示談書を公正証書にしておく方が安心といえるでしょう。

 

3.交通事故で公正証書を作成すべきケース

交通事故が発生したとき、必ず公正証書が必要なわけではありません。

公正証書を作成すべきケースは以下のような場合です。

 

  • 加害者が無保険(任意保険に加入していない)で、被害者と加害者が直接交渉して示談した
  • 示談金の支払い方法が分割払いになっている

 

相手が保険会社の場合には不払いとなる可能性がほとんどなく、公正証書を作成する必要はありません。一括払いよりも分割払いの方が不払いのリスクが高まるので、公正証書を作成する必要性が増します。

 

4.公正証書を作成する方法

公正証書を作成するには、できあがった示談案をお近くの公証役場に持ち込んで、公正証書の作成を公証人に依頼する必要があります。

公証人と打ち合わせを行って作成日を決め、当日被害者と加害者の双方が公証役場に行けば公正証書の示談書を作成してもらえます。

当日、本人が出席するのが困難であれば代理人に任せることもできます。

 

公証役場は全国各地に存在しており、どこの役場を利用してもかまいません。事故の加害者と話し合ってもっとも都合の良い場所を選択しましょう。

http://www.koshonin.gr.jp/list

 

5.公正証書を作成する際の注意点

示談書を公正証書にする場合、以下の2点に注意が必要です。

5-1.相手の了承が必要

公正証書を作成するには、加害者の了承が必要です。当日は本人確認書類をもって公証役場に来てもらわねばなりません。強制はできないので、相手の理解を得られるよう説明と説得をしましょう。

 

5-2.費用がかかる

公正証書を作成するには費用がかかります。金額は示談金の額によって変動しますが、1~5万円程度となるケースが多いでしょう。手数料は、公正証書の作成日に現金で公証人に支払う必要があります。

 

どちらが費用を負担するのかについても加害者と話し合って決めておきましょう。

加害者がどうしても費用負担を嫌う場合、被害者側が全額負担してでも公正証書を作成しておいた方が安心です。

 

加害者が無保険の場合、示談が成立しても支払いが行われないリスクが発生します。確実に支払いを受けるための手段の1つとして、公正証書を活用しましょう。

交通事故の「示談書」と「承諾書(免責証書)」の違い、作成時の注意点

2020-04-30

交通事故後、加害者の保険会社との示談が成立したら「承諾書(免責証書)」や「示談書」の作成を求められるのが通常です。

 

承諾書(免責証書)と示談書は何が違うのか、作成の際にどういったことに注意すれば良いのか弁護士が解説します。

 

1.示談書とは

示談書は、不法行為の加害者と被害者が損害賠償について話し合い、合意できたときに作成する書面です。

交通事故が発生すると、被害者と加害者が示談を進めて賠償金の金額や支払い方法を決定します。お互いに合意ができたらその内容を証明するために「示談書」を作成します。

示談書は「契約書」と同じような効果を持つ書面であり、当事者間で成立した約束の内容を明らかにするものです。そこで被害者と加害者の「双方」が署名押印する必要があります。

 

2.承諾書、免責証書とは

承諾書は、被害者が加害者に対して「損害賠償の方法についてはこの内容で承諾する」と表明し差し入れる書類です。免責証書も承諾書とほとんど同じで、被害者が加害者に対し「損害賠償の方法についてはこの内容で了承し、他については責任を免除する」ことを示すものです。

 

このように、承諾書や免責証書は「被害者が加害者に対して一方的に承諾・免責する書類」であり、お互いに約束したことを証明する「示談書」とは異なります。

 

承諾書や免責証書に署名押印するのは「被害者のみ」であり、加害者は作成に関わりません。

 

3.示談書と承諾書・免責証書の違い

示談書と承諾書・免責証書の違いは「誰が書類を作成するか」です。

示談書の場合には示談の当事者双方が書面を作成しなければならないので、被害者と加害者の双方が署名押印します。

一方承諾書や免責証書の場合には被害者のみが書面を作成するので、署名押印するのは被害者のみです。被害者さえ署名押印すれば書面が成立するので、作成の手間がかからないメリットがあります。

 

効果としては、交通事故の損害賠償においては「示談書」も「承諾書・免責証書」もほとんど同じです。

 

4.保険会社が関与すると承諾書、免責証書が作成されるケースが多い

交通事故といえば「示談書」を作成するイメージがあるかもしれませんが、保険会社との示談が成立したときにはむしろ「承諾書」や「免責証書」を作成するケースが多くなっています。

 

電話などで保険会社の担当者と話し合いをして合意ができたら、保険会社が被害者宛に「承諾書」や「免責証書」を送付し、署名押印の上返送するよう要求してきます。被害者が書類に署名押印をして返送すると示談が成立し、保険金が支払われる流れです。

 

一方、弁護士が関与して示談を成立させる場合には、被害者と加害者の双方がお互いに署名押印をする「示談書」を作成するのが一般的です。

 

5.示談書、承諾書、免責証書を作成する際の注意点

保険会社が承諾書や免責証書、示談書などの書類を送ってきたとき、安易に署名押印すべきではありません。

いったん署名押印してしまったら、後に撤回するのは極めて困難となるからです。まずは書かれている内容に間違いがないか、本当に示談してしまって問題ないか慎重に確かめましょう。

 

弁護士に依頼すると賠償金が大幅に増額される事例が多い

被害者が自分で保険会社と示談交渉を進める際、保険会社から提示される示談金の金額は、必ずしも適正とは限りません。現実には弁護士が法的な基準で計算し直したら賠償金額が大幅に増額されるケースが非常に多くなっています。

 

また後遺障害が残らない前提で示談しようとしているケースでも、弁護士が記録を精査し直して後遺障害認定の手続きを進めると、むちうちなどの後遺障害が認定されて大幅に賠償金が増額される可能性もあります。

 

当事務所では、弁護士が保険会社による提案内容が妥当かどうか判定するサービスを行っております。保険会社から承諾書や免責証書、示談案が送られてきたら、署名押印する前にご相談下さい。

交差点上の事故での過失割合

2020-04-21

交差点では交通事故が頻発します。

もしも事故に遭ってしまったとき、過失割合がどのくらいになるのか、千葉県の弁護士が解説します。

 

1.信号機のある交差点で直進車同士の事故

まずは信号機のある交差点での直進車同士の事故における過失割合をみていきましょう。

 

一方が青、一方が赤

青信号車と赤信号車の交通事故の場合、青信号車が0%、赤信号車が100%となります。

 

一方が黄、一方が赤

黄信号車と赤信号車の交通事故の場合、黄信号車が20%、赤信号車が80%となります。

 

どちらも赤

どちらの信号も赤の場合、それぞれの過失割合が50%ずつです。

 

2.信号機のない交差点で直進車同士の事故

信号機のない交差点における直進車同士の交通事故の過失割合は、以下の通りです。

 

2-1.同じくらいの道路幅のケース

どちらも同程度の速度

速度が同程度の場合、左側の車両が優先されます。左側車両の過失割合が40%、右側車両の過失割合が60%となります。

 

右側の車両が減速

右側車両のみが減速した場合、右側車両の過失割合が40%、左側車両が60%となります。

 

左側の車両が減速

左側車両のみが減速した場合、右側車両の過失割合が80%、左側車両が20%となります。

 

2-2.一方が広い道路のケース

どちらも同程度の速度

速度が同程度の場合、広い道路を走行していた車が優先されるので、広い道路の車の過失割合が30%、狭い道路の車が70%となります。

狭い道路の車が減速

狭い道路を走っていた車だけが減速した場合、広い道路の車の過失割合が40%、狭い道路の車の過失割合が60%となります。

 

広い道路の車が減速

広い道路の車のみが減速した場合、広い道路の車の過失割合が20%、狭い道路の車の過失割合が80%となります。

 

2-3.一方通行違反がある場合

どちらかが一方通行違反をしていた場合、違反車の過失割合が80%、違反していない車が20%となります。

 

2-4.一方が優先道路の場合

一方が優先道路になっている場合、優先道路車の過失割合が10%、非優先道路車が90%となります。

 

3.信号機のある交差点で直進車と右折車の事故

次に信号機のある交差点で「直進車」と「右折車」が接触した事故の過失割合をみてみましょう。

 

直進車の信号機の色

右折車の信号機の色

直進車の過失割合

右折車の過失割合

20%

80%

40%

60%

50%

50%

青信号で進入し赤信号になってから右折

90%

10%

青信号で進入し黄信号になってから右折

70%

30%

黄信号で進入し赤信号になってから右折

70%

30%

右折の青矢印信号で進入

100%

0%

 

 

4.信号機のない交差点で直進車と右折車の事故

4-1.同じ道路を走行していたケース

同じ道路を対面から走行してきて直進車と右折車が接触した場合、直進車の過失割合が20%、右折車の過失割合が80%となります。

 

4-2.交差する道路を走行していたケース

直進車と右折車が交差する道路を走行してきて事故に遭った場合の過失割合は以下の通りです。

道路幅が同程度のケース

  • 右折車が左方

右折車が左方、直進車が右方の場合、右折車の過失割合が40%、直進車の過失割合が60%となります。

  • 右折車が右方

右折車が右方、直進車が左方の場合、右折車の過失割合が70%、直進車の過失割合が30%となります。

 

右折車が狭路から広路に出るケース

右折車が狭い道路を走っていて直進車が広い道路を走っており右折車が広路に出る際に接触した場合、右折車の過失割合が80%、直進車の過失割合が20%となります。

 

右折車が広路から狭路に入るケース

右折車が広い道路を走っていて直進車が出てきた狭い道路に入る際に接触した場合、右折車の過失割合が40%、左折車の過失割合が60%となります。

 

実際には上記の基本の過失割合を基準として各種の修正要素を適用した上で事案ごとの適切な過失割合を算定します。

 

保険会社から過失割合の提示を受けて妥当かどうか分からない場合、弁護士にご相談いただけましたら適切な過失割合の考え方をお伝えいたします。まずはお気軽にご相談下さい。

新型コロナ流行!運送業者は過重労働による交通事故に要注意【弁護士解説】

2020-04-14

新型コロナウイルスが大流行し、千葉県でも緊急事態宣言が発令されました。

自宅に閉じこもる人が多い中、ネットショッピングの利用増加などにより配送業の需要が高まって各運送業者は多忙な状態となっています。

 

ドライバーにかかる負担も大きくなっており、交通事故に注意が必要です。

 

今回は新型コロナウイルスが流行する中、交通事故が起こったときにどういった扱いになるのか、運送業者が注意すべき点などを弁護士が解説していきます。

 

1.過重労働による交通事故に注意

新型コロナウイルスの蔓延を防止するため、各都道府県で「緊急事態宣言」が出されて多くの人が自宅に引きこもっています。

そのような中、需要が高まっているのが配送業です。ドライバーや車両の数が足りず、1人1人の労働者にかかる負担が高まっています。法律の定める労働時間を大きく超過して働くドライバーもいらっしゃるでしょう。

 

過重労働が続くと、居眠り運転などにより交通事故を起こすリスクが高まるので注意が必要です。法律上も以下のようなリスクがあります。

 

1-1.居眠り運転や著しい不注意があると過失割合が高くなる

交通事故が発生したら、被害者と加害者の「過失割合」を算定するものです。一方当事者が「居眠り運転」をしていたら、そちらの当事者の過失割合は当然高くなります。一般的なケースよりも20%程度、過失割合が上がる可能性もあります。

 

また前方不注視、不適切なハンドルブレーキ操作などによって事故を起こした場合にも過失割合が加算されます。

 

1-2.刑事事件の処分が重くなる

居眠り運転は道路交通法上も問題となります。道路交通法は「過労などの影響で正常な運転ができない状態」での運転を禁じているからです(道路交通法66条)。

過労によって居眠り運転をすると、事故を起こさなくても道路交通法違反で書類送検される可能性がありますし、万一事故を起こすと重い刑事罰を課される可能性が高まります。

 

大型トラックなどで居眠り運転をして危険な交通事故を発生させたら「危険運転致死傷罪」が成立して実刑判決が出てしまう可能性もあります。

 

1-3.免許が停止、取消となる

居眠り運転で悪質な交通事故を起こすと、免許の点数が大きく加算されます。免許停止や取消となれば、仕事を続けられなくなるリスクが発生します。

 

1-4.企業の責任も問われる

自社従業員に過重労働を強いて交通事故につながったとなれば、雇い入れている企業にも大きな責任が発生します。

従業員が交通事故を起こした場合には「使用者責任」が発生するので、企業も賠償金を負担しなければなりません。また違法な長時間労働を課していたら労働基準法違反となり、罰則を適用される可能性もあります。ドライバーが交通事故で死亡してしまったら、遺族から高額な賠償金請求を受けるでしょう。

 

「多忙」を理由にドライバーのケアを怠って長時間労働を課していると、交通事故が発生してさまざまな重大な問題が発生する危険があります。そういったことのないよう、十分なリスク管理が必要です。

 

2.けがをしても医療を受けにくいおそれがある

加えてもう1つ、懸念されるのが医療の問題です。今、多くの医療機関では新型コロナの患者を受け入れてぎりぎりの状況にあるといわれています。

このような状況下で交通事故が発生すると、場所によっては受け入れ先の救急病院が見つからないおそれがあります。

事故に遭ってもすぐに適切な医療を受けられず、死亡や後遺障害などの重大な結果につながるリスクが高まっているので、運送業を始めとして車を運転する方は、くれぐれも事故を起こさないように注意すべき状況といえます。

 

万一交通事故を起こしてしまったり巻き込まれたりしたら、可能な限り不利益を小さくするため弁護士がサポートします。千葉県で交通事故に遭ったなら、すぐにでもご相談いただけましたら幸いです。

示談をやり直せるケースとは

2020-04-08

交通事故でいったん示談が成立すると、基本的にやり直しはできません。ただし一定のケースでは示談を取り消せますし、合意後に発生した損害については示談をやり直せる可能性もあります。

 

今回は交通事故の示談をやり直せるケースについて、千葉の弁護士が解説します。

 

1.詐欺や強迫によって示談させられたケース

いったん示談書に署名押印して相手に渡したら、基本的にはやり直しができないと考えましょう。示談は1種の和解契約であり、契約が成立した以上どちらかの一方的な都合で取り消したり解除したりできないからです。

 

ただし示談が相手の「詐欺」や「強迫」によって行われた場合、示談の「取消」が可能です。

1-1.詐欺

詐欺とは相手をだますことです。和解内容に関する重大な事項について相手から虚偽を述べられてだまされて示談書に署名押印してしまった場合、示談を取り消してやり直せる可能性があります。

1-2.強迫

強迫とは相手を脅して強要することです。「示談書に署名押印しないと殴り倒すぞ」「家を燃やすぞ」「家族を傷つけるぞ」などと脅されて仕方なく示談書に署名押印した場合、示談を取り消してやり直しができます。

 

 

2.錯誤に陥っていたケース

示談時、和解内容や前提となる重要な事項について誤解していた場合にも、示談を取り消してやり直しができる可能性があります(改正民法95条1項)。

 

ただし「法的な基準を適用すればもっと多く請求できることを知らなかった」としても錯誤は認められません。重大な事項について勘違いしていたとしても「重過失」があれば取消は不可能です。

交通事故示談で錯誤による取消を主張するハードルは高くなるので、示談の際にはしっかり内容を理解し納得した上で署名押印しましょう。

 

取消が必要

詐欺や強迫によって示談させられた場合や錯誤によって示談してしまった場合、示談をやり直すには「取消」が必要です。何もしなければ示談は有効なままなので注意しましょう。(なお以前は錯誤の場合「無効」となったので取消不要でしたが、法改正により錯誤がある場合にも「取消」が必要になっています。)

 

内容証明郵便などを使って示談の取消通知書を送るようお勧めします。

 

3.示談内容が公序良俗に反する場合

示談内容が公序良俗に反する場合には、示談が無効になります。たとえば愛人になるのと引換に示談金を払ってもらう約束をした場合や、損害額が僅少なのに暴利ともいえる高額な賠償金を設定した場合などには公序良俗違反と判断される可能性があります。

 

4・示談時には予測できなかった後遺障害が発生したとき

示談時には予測できなかった後遺症が示談後に発生した場合、後遺障害に関する賠償金(慰謝料や逸失利益、再手術の費用など)を示談金とは別途請求できる可能性があります。後遺障害の損害については示談内容に含まれていないと考えられるためです。

 

ただし示談後に後遺障害の損害賠償金を請求するには、以下のような要件を満たす必要があります。

  • 当初にすべての損害を把握しがたい交通事故であった

事故当時には全容を把握できないような、一定以上の重大な交通事故であることが要求されます。

  • 早急に少額の示談金によって示談が行われたこと

事故後すぐに、少額の賠償金によって示談が成立した事情が必要です。

  • 示談時に後遺障害の発生を予測できなかったこと

示談当時に後遺障害が発生する兆候がまったくなく、当事者によって予測不可能であった状況が必要です。

 

5.示談内容に納得できない場合、弁護士に相談を

示談するときには「基本的に後に取消しややり直しはできない」ことを前提に、慎重に判断して示談書に署名押印すべきです。示談してしまって良いものか、迷いがあるなら弁護士が示談案の内容を精査いたします。

 

また万一「示談後に予想外の痛みや不調が発生した」「相手から強迫されて無理に示談書に署名押印させられた」などの事情があれば、お早めにご連絡ください。弁護士から相手に通知を送ることで示談のやり直しができたり追加の賠償金を請求できたりする可能性があります。

当事務所では千葉県周辺で交通事故被害者のサポートに力を入れておりますので、お困りの方は、お気軽に当事務所を頼っていただけますと幸いです。

交通事故の示談書の効果

2020-04-01

交通事故に遭うと、事故の相手と「示談交渉」を進める必要があります。

示談が成立したときに作成する書面が「示談書」です。

 

今回は「示談書」の意味や効果、示談書に署名押印する際の注意点について、千葉の弁護士が解説します。

 

1.示談書とは

「示談書」とは被害者と加害者が「示談交渉」を行い、合意できたときに作成する書面です。

示談交渉とは、不法行為の被害者と加害者が話し合いをして損害賠償の方法を決定することです。話し合いで損害賠償の方法が決まって合意ができたら、その合意内容を「示談書」によって明確にします。

 

示談書は契約書と同じような効果を持ちます。いったん示談書を作成したらお互いがその内容に拘束されるので、後に異なる要求をしても基本的に認められません。

 

2.示談書の効果

示談書ができあがると、以下のような効果があります。

2-1.示談書に定めた以上の賠償金を請求できない

被害者の立場としては、示談書に定めた以上の金額を請求できなくなる効果が重要です。

示談書でいったん賠償金の金額が決まったら、後に「これでは足りない、もっと払ってほしい」と思っても不足分を要求できません。示談書に署名押印する前に、「本当に適正な示談金額になっているか」きっちり検討する必要があります。

2-2.示談書で約束した支払いを受けられなかったら裁判や取り立てが可能

示談書には法的な効力が認められます。示談書を作って約束したのに相手が支払いをしなければ、示談書を証拠として訴訟を起こせます。判決が出ても相手が支払いをしなければ、相手の預貯金や給料等を差し押さえることも可能です。

また示談書を公正証書にしておけば、訴訟をしなくても差押えと取り立てができます。

2-3.紛争の防止

示談書を作成すると、当事者が後に「やっぱり不足していた」「払いすぎたから返してほしい」などの蒸し返しの主張をできなくなります。示談書には「終局的にトラブルを解決できる効果」があります。

 

3.免責証書、承諾書との違い

保険会社と示談するとき、保険会社から「示談書」ではなく「免責証書」や「承諾書」が送られてくるケースがよくあります。

示談書と「免責証書」「承諾書」とは何が異なるのでしょうか?

3-1.書面の性質

示談書は「当事者間の合意」を明らかにする書面です。

一方免責証書や承諾書は、被害者が加害者に対し「損害賠償の方法は以下の通りでかまいません」と通知する書面です。被害者が「ここに書かれていない負債は『免責』します」「損害賠償の内容はこの内容で『承諾』します」と意思表示するので「免責証書」「承諾書」といわれます。

つまり免責証書や承諾書の場合「被害者から加害者への一方的な意思表示」を内容とし、加害者側の意思は入りません。双方の合意である示談書とは書面の性質が異なります。

 

3-2.双方が署名押印するかどうか

示談書の場合、被害者と加害者の双方が署名押印してはじめて効果が発生します。「双方当事者の合意内容」を明らかにする書面だからです。一方免責証書や承諾書は「被害者からの一方的な意思表示」なので、被害者しか署名押印しません。

3-3.交通事故示談における効果はほとんど同じ

示談書も免責証書も、交通事故示談における効果はほとんど同じです。

どちらにしても被害者が署名押印して保険会社に差し入れれば保険会社から速やかに示談金の入金が行われます。

 

4.示談書に署名押印する際の注意点

示談書に署名押印する際には、以下の点に注意してみてください。

4-1.撤回は難しい

いったん示談書に署名押印すると、よほどの事情がない限り撤回や取消はできません。示談書に書かれた内容が確定的に有効になってしまうので、署名押印前に、本当に適正な内容になっているか慎重に検討すべきです。

 

4-2.保険会社からは低額な提示を受けるケースが多い

相手が保険会社の場合、示談書、免責証書や承諾書は保険会社から送られてきます。その際「署名押印して返送してください。そうすれば示談金が振り込まれます」と案内されるでしょう。

しかし保険会社からの提示金額は、法的な相場と比べて低額になっているケースが多いので要注意です。

そのまま署名押印すると損をしてしまうリスクが高くなるので、事前に弁護士に相談して法的な相場を確かめておくようお勧めします。

 

当事務所では交通事故を多数取り扱ってきた弁護士が、適正な賠償金額の算定を承っております。千葉で交通事故に遭われて示談書にサインして良いか迷っている方がおられましたら、お気軽にご相談下さい。

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