Archive for the ‘後遺障害に関する諸問題’ Category
交通事故後、めまいや耳鳴りが止まらない場合の対処方法
交通事故に遭うと、「めまい」や「耳鳴り」の辛い症状が続いてしまうケースがよくあります。これらの症状でも後遺障害認定を受けられる可能性があるので、事故後に症状が治まらないようであれば適切な検査を受けて後遺障害認定の手続きを進めましょう。
今回は交通事故後のめまいや耳鳴りの原因や対処方法を千葉の弁護士が解説します。
1.めまいや耳鳴りの原因
交通事故後のめまいや耳鳴りの原因と考えられる傷病には以下のようなものがあります。
1-1.むちうち
追突事故などに遭ってむちうち(頸椎の損傷)となった場合、めまいや耳鳴りが発生する可能性があります。むちうちとは外的な衝撃によって首の骨である「頸椎」が損傷を受ける傷病で、頸椎捻挫や外傷性頸部症候群、椎間板ヘルニアなどと診断されるケースが多数です。
一般的なむちうちでは首や肩、背中の痛みやコリなどが主症状となりますが、めまいや耳鳴りを伴うケースがあります。
1-2.バレ・リュー症候群
バレ・リュー症候群は、交通事故などの外傷をきっかけに自律神経系が乱れ身体中にさまざまな症状が発生する傷病です。むちうちの1種に分類されることもあります。
身体の平衡を保つ自律神経が正常に働かなくなるので、体温調節や発汗作用がうまく機能しなくなったり食欲不振、下痢、動悸息切れ、頭痛などが発生したり倦怠感、疲労感が強くなったりします。
めまいや耳鳴りを伴うケースも多数です。
1-3.脳脊髄液減少症
脳脊髄液減少症は、外的な作用によって脳を覆う硬膜やくも膜に穴が空き、中の髄液が漏れ出してしまう傷病です。膜によって保たれている圧のバランスが乱れるため、強い頭痛やめまい・耳鳴りなどの症状が発生します。
1-4.軽度外傷性脳挫傷
「脳挫傷」となった場合にもめまいや耳鳴りが発生する可能性があります。軽微な場合には被害者が「脳に傷害を負った」と意識しにくく、MRIなどの画像撮影をしても写りにくいため見過ごされるケースがあり注意が必要な症状です。
2.めまいや耳鳴りの治療方法
交通事故後にめまいや耳鳴りが止まらないなら、放置せずに必ず適切な診療科で治療を受けましょう。
- むちうちの場合
むちうちの治療は「整形外科」で行います。
- バレ・リュー症候群の場合
バレ・リュー症候群の場合には「ペインクリニック」の受診が有効です。
- 脳脊髄液減少症や脳挫傷の場合
これらの脳損傷の場合、脳神経外科を受診しましょう。
- 耳鼻咽喉科
めまいや耳鳴りが続く場合、耳鼻咽喉科で適切な治療や手術を受けられる可能性もあります。
まずは自分の症状に応じた病院を受診し、医師の指示に従って治療を進めましょう。
どこの病院に行けばよいか分からない場合、一番症状が近いと思われる傷病に対応した病院を受診してみてください。間違っていれば医師から適切な診療科を紹介してもらえるのが通常です。
3.めまいや耳鳴りで認定される後遺障害の等級
交通事故後、治療を終了してもめまいや耳鳴りの症状が残った場合、後遺障害認定される可能性があります。
3-1.12級か14級となるケースが多い
めまいや耳鳴りが残った場合に認定される等級は、多くのケースで12級または14級となります。
3-2.12級となる場合
12級となるのは椎間板ヘルニアなどの傷病をMRIで医学的に証明できる場合、耳鳴りなら「聴力検査(ピッチマッチ検査とラウドネスバランス検査)」で耳鳴りを医学的に証明できる場合です。後遺障害慰謝料は290万円程度となります。
3-3.14級となる場合
MRIや聴力検査などで症状を証明できなくても、そういった症状があることを合理的に説明できる状況であれば14級が認定されます。後遺障害慰謝料は110万円程度です。
4.めまいや耳鳴りで適正な賠償金を受け取るために
めまいや耳鳴りの後遺障害が残ったら、まずは後遺障害認定を受けることが第一です。認定されなければ後遺障害慰謝料も逸失利益も受け取れず、賠償金が大きく下がってしまいます。
検査結果などの資料を集めて適切に後遺障害認定の手続きを進めるには、弁護士によるサポートが必要です。当事務所では交通事故の被害者様へのサポートに力を入れて取り組んでいますので、めまいや耳鳴り、むちうちなどの症状にお困りの方はぜひとも一度、ご相談ください。
交通事故で介護費用を請求できる条件とは?
交通事故に遭って被害者に介護が必要になったとき、寝たきりなどで明らかに介護が必要なら、通常保険会社から介護費用を拒まれることはありません。しかし被害者が一応動ける場合や日常生活で一部のみ介護を必要とする場合などには、保険会社に介護費用の支払いを拒まれてスムーズに払ってもらえないケースも多々あります。
今回は交通事故で介護費用を請求できるのはどういったケースなのか、千葉県の弁護士がご説明します。
1.要介護の後遺障害が残った場合
交通事故の後遺障害は「要介護」とそれ以外に分けられています。
要介護の後遺障害は以下の通りです。
1級 |
|
2級 |
たとえば高次脳機能障害や遷延性意識障害、内臓機能の障害などで常に介護を要する状態となったら要介護の1級、脊髄損傷や高次脳機能障害、内臓機能の障害などで随時介護を要する状態となったら要介護の2級が認定されます。
これらの後遺障害認定を受けた場合には、通常問題なく保険会社へ将来介護費用を請求できます。
2.要介護の後遺障害でなくても将来介護費用を請求できる場合
要介護の後遺障害認定を受けなくても、症状の内容や程度に鑑みて介護が必要と判断されれば将来介護費用を請求できます。
- 症状が相当重い
排尿排便障害がある、高次脳機能障害で周囲による日常的な声かけが必要、上肢や下肢の麻痺があって日常生活に支障が出ている場合などに介護費用が認められる可能性があります。
- 医師の指示がある
症状が重く、医師が「介護を受けるように」と指示を出していれば、介護費用が認められる可能性が高くなります。
3.介護費用が認められた裁判例
以下では具体的に介護費用がどういったケースが認められているのか、裁判例を確認しましょう。
3-1.遷延性意識障害
遷延性意識障害のケースでは将来介護費用が基本的に認められ、争いになるケースはほとんどありません。
高校生が遷延性意識障害となったケースで1億1,678万円の将来介護費用が認められたケース(千葉地裁平成17年7月20日)、11歳の被害者が遷延性意識障害となったケースで1億3,375万円の将来介護費用が認められたケース(大阪地裁岸和田支部平成14年7月30日)などがあります。
3-2.高次脳機能障害
高次脳機能障害のケースでは、症状の程度によって将来介護費用が認められるかどうか変わります。重度な場合には将来介護費用が支払われます。
高次脳機能障害で2級の後遺障害認定を受けた高校生のケースで4,760万円の将来介護費用が認められたケース(京都地裁平成15年10月31日)、3級の認定を受けたケースが「常時の付添は不要だが看視のために家族が常に家にいなければならない」として日額6,000円の将来介護費用を認めたケース(東京地裁八王子支部平成14年7月4日)、高次脳機能障害で5級、他の後遺障害と併合して4級となった事案で1,381万円の将来介護費用が認められた事案などがあります(東京地裁平成16年9月22日)。
3-3.脊髄損傷
脊髄損傷で1級の後遺障害が認定され、日常的に介護が必要と判断されて1億8,300万円の将来介護費用が認められたケース(東京地裁八王子支部平成12年11月28日)、四肢麻痺となって後遺障害1級が認定された59歳の男性被害者に7,551万円の将来介護費用が認められたケース(大阪地裁平成17年9月1日)などがあります。
3-4.その他
RSDで5級に認定された被害者につき682万円程度の将来介護費用が認められた事案(名古屋地裁平成16年7月28日)、同じくRSDで9級に認定された被害者に669万円程度の将来介護費用が認められたケース(大阪高裁平成18年8月30日)などがあります。
介護を要する状態になって保険会社が将来介護費用の支払いに応じない場合、上記に挙げた裁判例のように、訴訟をすれば高額な介護費用の支払いを受けられる可能性もあります。
千葉県で交通事故に遭い、保険会社の対応に疑問を感じておられるなら弁護士までご相談下さい。
介護費用の計算方法
交通事故に遭うと、被害者に介護が必要となるケースが少なくありません。
たとえば植物状態(遷延性意識障害)や脊髄損傷で寝たきりとなってしまった場合、重度の高次脳機能障害で常時の看護が必要な場合などです。
介護が必要になったら相手に「介護費用」を請求できます。
ここでは介護費用をどのようにして計算するのか、千葉県の弁護士が解説します。
1.介護費用の計算方法
交通事故で介護が必要になると、一生涯にわたる介護を要します。
症状固定前に発生した介護費用だけではなく、その後の将来の分の介護費用も請求しなければなりません。このような将来必要になる介護費用を「将来介護費用」といいます。
1-1.将来介護費用の計算式
将来介護費用は、以下のような計算式によって計算します。
将来介護費用=1年にかかる介護費用×症状固定時の平均余命に対応するライプニッツ係数
以下でそれぞれの要素をどのように算出するのかご説明します。
1-2.1年にかかる介護費用の計算方法
1年にかかる介護費用は、家族が介護するのか職業介護士に介護を依頼するのかによって異なります。
家族が介護する場合、1日あたり8,000円として計算します。
職業介護士に依頼する場合には「実際にかかる金額(実費)」を基準に計算します。介護士に依頼した場合の実費はケースによりますが1日1~3万円程度です。
金額だけをみると職業介護士に依頼した方が高くなりますが、介護士へ支払いをしなければならないので手残りが大きくなるわけではありません。
一方、家族が介護する前提で示談すると実際の支出はないので手残りが大きくなりますが、家族に大きな負担がかかります。またしばらくの間は家族が介護できても、後に事情が変わって介護士に依頼するケースもあります。その場合、示談時に受け取っていた示談金が少額になっており損をしてしまうリスクがあります。
交通事故で介護が必要になった場合、家族介護を前提にするのか職業介護士に依頼するのか、慎重に検討する必要があるといえます。迷われたら弁護士がアドバイスいたしますので、ご相談下さい。
1-3.平均余命とは
将来介護費用は「平均余命」を基準として計算します。平均余命とは「その年齢の人が平均的にあと何年生きるか」という年数です。
単純に「平均寿命-年齢」で計算されるものではないので注意してください。
年齢ごとの平均余命は厚生労働省から発表されているので参照しましょう。
男性
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/dl/life18-06.pdf
女性
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/dl/life18-07.pdf
1-4.ライプニッツ係数とは
将来介護費用を計算するとき「ライプニッツ係数」を適用します。ライプニッツ係数とは、将来にわたって発生する費用を示談時に一括で受け取る利益を調整するための指数です。
本来、将来介護費用はその都度発生し受け取るべきものです。しかし当初にまとめて受け取るので、被害者には「運用利益」が生じると考えられます。その利益を「中間利息」といいますが、これを差し引くため、ライプニッツ係数を適用します。
ライプニッツ係数は2020年3月までは法定利率の5%を基準として算定されますが2020年4月からは民法改正によって法定利率が3%となるため、数字が変わります。
2.定期金方式とは
将来介護費用を「定期金方式」で受け取るケースもあります。定期金方式とは、示談時に一括で受け取るのではなく将来にわたって毎月などの定期的に介護費用を受け取る方法です。この方式なら中間利息を控除しないので、実際に必要な全額を受け取れるとも思えます。
ただ途中で保険会社が倒産・廃業するリスクや、何らかの理由で不払いにされるおそれがあります。将来にわたって延々と相手の保険会社との関わりが続くため、ストレスに感じる方もおられるでしょう。
定期金方式による支払いを提案されたとき、安易に受け入れるのは危険です。
交通事故で被害者に介護を要する状態になると、検討すべき問題が多数発生します。不利にならないように、ぜひとも弁護士までご相談下さい。
遷延性意識障害になった場合の注意点
交通事故では被害者が意識を失ったまま回復せず、いわゆる「植物状態」となってしまうケースがあります。植物状態を医学的に「遷延性意識障害」といいます。
遷延性意識障害になると、被害者には一生介護が必要となりご家族には大変な負担がかかりますし、示談交渉の際などにもいろいろな注意点があります。
今回は被害者が遷延性意識障害となったときの注意点について、弁護士が解説します。
1.遷延性意識障害の認定要件
交通事故で意識障害となり、長期にわたって回復せず以下の要件を満たせば「遷延性意識障害」と認定されます。
- 自力では移動できない
- 自力では摂食できない
- 大小便のコントロールができない(失禁状態)
- 眼球で物を追うことはあっても認識できない
- 発語することはあっても意味のある言葉を発せない
- 簡単な反応(目をつぶる、手を握り返すなど)はあってもコミュニケーションをとれない
上記の6つのすべてを満たす状態が3か月以上続いたときに「遷延性意識障害」と判断されます。
2.遷延性意識障害となった場合の問題点
交通事故で被害者が遷延性意識障害となった場合、通常の事故とは異なり以下のような点に注意が必要です。
2-1.長期間受け入れてくれる施設が少ない
被害者が交通事故で意識障害に陥ったら、通常は病院へ運ばれて治療を受けることになるでしょう。
遷延性意識障害の場合、急性の状態が落ち着いても意識が回復しないので、入院が長期化します。すると、病院から退院を促される可能性があります。病院には次々新しい患者が入院してきますし、3か月が経過すると保険点数が低くなるという経済的な事情もあるためです。
ところが遷延性意識障害の患者を受け入れてくれる施設はそう多くはないので、ご家族が行き先に困るケースがみられます。
2-2.介護場所を決定する必要がある
被害者が遷延性意識障害となった場合、生涯にわたる介護が必要です。その場合「施設で介護」を受けるのか「自宅で介護」をするのか決めなければなりません。
どちらを選択するかで請求できる賠償金額も大きく変わってきますし、ご家族にかかる負担も違ってきます。ご家族は重大な決断を迫られ判断に迷うケースが少なくありません。
2-3.成年後見人を選任する必要がある
遷延性意識障害となった場合、被害者本人は加害者との示談交渉を進められません。
家庭裁判所で「成年後見人」を選任し、後見人が示談交渉や賠償金請求の手続きを行う必要があります。
どうやって後見人を選任すれば良いのか、また誰が成年後見人になるのが良いか、後見人を選任した後や賠償金を受け取った後の対応に迷ってしまうご家族の方もおられます。
2-4.保険会社から「生活費控除」を主張されるケースがある
被害者が遷延性意識障害となった場合、保険会社から「生活費控除」を主張されるケースが多々あります。遷延性意識障害の患者は生活のための活動をあまりしないので生活費がかからないはずだと言われるのです。
しかし裁判例では遷延性意識障害のケースでも生活費控除を認めないものがたくさんあるので、そういった主張を安易に受け入れるべきではありません。
2-5.平均余命が短くなると主張される
遷延性意識障害の事例では、生涯にわたる介護費用を請求できます。その際には「平均余命」を使って介護費用を計算します。
ところが保険会社は「遷延性意識障害の患者は一般の人よりも平均余命が短い」と主張して介護費用を減額するよう主張してくるケースがよくあります。
このような主張も裁判では認められない可能性が高いので、ご家族としては受け入れるべきではありません。
3.交通事故でご家族が遷延性意識障害となったら弁護士へご相談下さい
交通事故で被害者が遷延性意識障害になると、上記のようなさまざまな困難な問題が発生します。不利益を防止しご本人やご家族の権利を守るには、通常の交通事故事案以上に弁護士によるサポートが必要といえるでしょう。
弁護士が介護場所の判断や介護費用の計算、示談交渉などを行います。千葉で交通事故に遭われてお困りのご家族様は、是非とも一度ご相談下さい。
遷延性意識障害で認定される後遺障害の等級と賠償金
交通事故で被害者が植物状態となり「遷延性意識障害」になったら「後遺障害認定」を受けられます。
今回は遷延性意識障害で認定される後遺障害の等級と賠償金の種類、相場について千葉の弁護士が解説します。
1.遷延性意識障害で認定される後遺障害の等級
交通事故で認定される後遺障害には1級から14級までの「等級」があり、1級がもっとも重く14級がもっとも軽い等級です。等級が重くなればなるほど、慰謝料などの賠償金の金額も増額されます。
遷延性意識障害の場合、被害者は自力で移動・摂食・大便小便のコントロールなどの生活の基本動作を何もできない極めて重篤な状態となるため認定される後遺障害等級は、もっとも重い1級です。
2.遷延性意識障害で請求できる賠償金
被害者が遷延性意識障害となった場合に請求できる賠償金の種類や金額は、以下の通りです。
2-1.治療費
症状固定時までにかかった病院での治療費、検査費用、診断料、投薬料などの費用を、必要かつ相当な範囲で全額請求できます。
2-2.付添看護費用
親族が入院中に付き添った場合、1日当たり6,500円程度の付添看護費用を請求できます。
症状固定前に自宅で親族が付き添った場合、自宅における付添看護費用が認められるケースもあります。
2-3.交通費
親族が病院に通うため交通費がかかったケースでは、交通費を請求できます。タクシーを使う必要があればタクシー代も請求できますし、自家用車で通院した場合にはガソリン代と駐車場代、高速代を請求できます。ガソリン代は1キロメートル当たり15円として計算します。
2-4.休業損害
被害者が症状固定するまでの間に会社を休んだりして休業損害が発生したら、加害者へ請求可能です。
2-5.入通院慰謝料
被害者が症状固定するまでの間の入院期間に応じて入通院慰謝料が支払われます。
相場の金額は、入院3か月なら145万円、4か月なら184万円、5か月なら217万円、6か月なら244万円程度です。
2-6.後遺障害慰謝料
遷延性意識障害で後遺障害1級が認定されると、2,800万円程度の後遺傷害慰謝料を請求できます。後遺障害慰謝料は入通院慰謝料とは別途支払われます。
また、ケースによっては家族固有の慰謝料が認められる可能性もあります。
2-7.後遺障害逸失利益
有職者や主婦、子どもなどが遷延性意識障害となって後遺障害認定を受けると「逸失利益」を請求できます。逸失利益とは、働けなくなったことによって得られなくなってしまった将来の収入に相当する損害金です。遷延性意識障害になると、一生働けなくなるので本来得られるはずだった収入を得られなくなり損失が発生します。それを「後遺障害逸失利益」として請求できるのです。
後遺障害逸失利益の金額は、事故前の被害者の年収額や年齢によって異なります。
数千万円となるケースが多く、高額な方は1億円を超えるケースもあります。
2-8.介護費用
遷延性意識障害となった場合、ご本人は一生にわたって全面的な介護を要するので平均余命に対応する介護費用を請求できます。
介護費用は、ご家族が介護するのか専門の介護士に依頼するのかで金額が変わってきます。
ご家族が介護する場合、1日あたり8,000円として計算しますが専門の介護士に依頼すると実際にかかる費用を請求できるので金額は上がります。
2-9.自宅改装費用
遷延性意識障害で自宅介護をするときには、改装を要するケースがあります。その場合、自宅改装費用も損害賠償金として請求可能です。
遷延性意識障害では逸失利益や将来介護費用が高額になるため、賠償金が1億円を超えるケースも少なくありません。ただ、自宅介護を選択するか施設介護を選択するか、家族介護か専門の介護士に依頼するかによっても大きく金額が変わってきます。
一般の方にはどういった対応をとるのが最善か判断しにくいものです。被害者の方が適切な賠償金を受け取るため、迷われたら弁護士までご相談下さい。
むちうちの12級と14級の違い
交通事故に遭い「むちうち」になってしまう被害者の方が非常にたくさんおられます。
むちうちになると「後遺障害」として認定される可能性がありますが、その際に該当する「等級」が重要です。
交通事故では後遺障害の認定等級が高くなればなるほど賠償金が高額になるからです。
むちうちの場合には12級または14級になる例が多数です。
今回はむちうちで12級になるケースと14級になるケースの違い、それぞれの賠償金額の相場などをご紹介します。
1.むちうちで12級になるケース
1-1.むちうちとは
むちうちとは、追突事故などに遭って首の骨である頸椎を損傷した場合に発生する症状です。むちうちは一般的な呼称であり、医学的には「頸椎捻挫」「外傷性頸部症候群」「椎間板ヘルニア」「バレ・リュー症候群」「脊髄症」「神経根症」など程度や発症部位によってさまざまに分類されます。
むちうちになって後遺障害認定12級の認定を受けられるのは、以下のような場合です。
1-2.MRIなどで他覚所見を確認できる
むちうちで12級の認定を受けるには、MRIなどの画像検査で何らかの異常所見を確認できることが必要です。
たとえば事故によって発生した椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄などを確認できれば、後遺障害12級やそれ以上の等級が認定されます。
MRI以外の画像検査としてはレントゲンやCTなどもありますが、むちうちの損傷部位を確認するのにもっとも長けているのはMRIです。レントゲンやCTでは「骨の異常(骨折など)」しか確認できませんが、MRIでは「組織変性」を確認できるからです。
むちうちで12級の認定を受けるためには、精度の高いMRI検査機器を使って患部の撮影をしてもらうことが必須です。
2.むちうちで14級になるケース
むちうちで14級になるのはどのようなケースなのでしょうか?
それは「自覚症状に合致する症状が発生していると合理的に推認できる場合」です。
MRIなどによって症状を「証明」する必要はありませんが、症状があると合理的に推認されなければなりません。
そのためには、被害者が主張している自覚症状が一貫していること、交通事故の発生状況と合致していること、神経学的検査などの画像以外の検査方法で症状の存在を示すことなどが必要となってきます。
むちうちで画像撮影しても異常を確認できない場合、14級の認定を受けるために通院時からの慎重な対応と後遺障害認定請求する際の工夫が要求されます。
3.12級と14級それぞれの賠償金の相場
後遺障害12級や14級が認定されたら、それぞれどのくらいの賠償金を受け取れるのでしょうか?
3-1.12級の賠償金
交通事故で後遺障害が認定された場合、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益が支払われます。
- 後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、被害者の受けた精神的苦痛に対する賠償金です。12級の場合の後遺障害慰謝料の相場は290万円です。
- 後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残ったことによって将来得られなくなった収入です。金額は、被害者の事故前の年収や年齢により異なります。
12級の場合には500万円を超えるケースが多く、1,000万円前後となる例もあります。
3-2.14級の賠償金
- 後遺障害慰謝料
14級の場合の後遺障害慰謝料の相場は110万円程度です。
- 後遺障害逸失利益
14級の場合の後遺障害逸失利益は500万円以下となる例が多数です。
4.むちうちで後遺障害認定を受けるために
むちうちになったとき、高額な賠償金を手にするにはまず「後遺障害認定」を受けることが重要です。14級の賠償金は12級より低額ですが、それでも後遺障害なしの事案よりは大幅に金額が上がります。
ご本人で対応されると、どうしても不十分となって適切に後遺障害認定されない可能性が高まります。被害者自身が対応したら後遺障害非該当とされたケースでも、弁護士に依頼すると12級が認定されて1,000万円以上賠償金が増額された事例もあります。
当事務所では千葉で交通事故に遭われたみなさんのために積極的な支援を進めています。むちうちになって不安な思いを抱えておられるなら、是非とも一度、ご相談下さい。
事前認定と被害者請求の違い、選択方法について
交通事故で後遺障害認定を受ける際「事前認定」と「被害者請求」の2種類の方法があります。
どちらを利用するかによって後遺障害認定されるかどうか結果が変わるケースもあるので、それぞれがどういった方法なのか正しく理解しておきましょう。
今回は「事前認定」と「被害者請求」の基本とメリットデメリット、選択方法などを千葉の弁護士が解説します。
1.事前認定とは
事前認定とは、相手の任意保険会社に後遺障害認定の手続きを任せる方法です。
被害者が自分で保険会社と示談交渉を進める場合には、たいてい事前認定の方法で後遺障害認定の手続きが進められます。
1-1.事前認定の手続きの流れ
事前認定の場合、被害者は「後遺障害診断書」さえ用意すれば足ります。
自賠責保険の後遺障害診断書の書式を用意して医師に渡し、作成を依頼します。完成したら医師から診断書を受け取り、保険会社へ郵送します。これだけで後遺障害認定申請の手続きが完了します。
結果が出たら任意保険会社から通知されます。
1-2.事前認定のメリット
事前認定のメリットは、手続きが非常に簡単なことです。後遺障害診断書を用意して相手に送るだけなので、誰でも対応できるでしょう。費用もかかりません。
1-3.事前認定のデメリット
デメリットは、手続きがどのように行われているかわからないことです。被害者が有利な資料を積極的に提出したり、調査事務所に直接事情を説明したりすることもできません。
後遺障害認定を受けられるかどうかが微妙なケースなどでは、適切に判断されない可能性も発生します。
2.被害者請求とは
被害者請求とは、被害者が自ら自賠責保険へと後遺障害認定の申請をする手続きです。
被害者請求をするときには非常にたくさんの書類を用意しなければならず、手続きが煩雑です。ただ自分で手続きを進められるので安心感がありますし、いろいろな工夫もできます。
2-1.被害者請求の方法
被害者請求の際には、以下の手順で手続きを進めます。
- 後遺障害診断書を入手する
医師に依頼して後遺障害診断書を作成してもらいます。
- その他の必要書類を入手する
保険金請求書、事故発生状況報告書、診断書、診療報酬明細書、レントゲン検査の資料等の必要書類を作成・入手します。
- 自賠責保険(共済)へまとめて提出する
書類がそろったら自賠責保険へまとめて郵送します。
- 調査事務所からの照会等に対応する
その後、調査機関である調査事務所からの照会などがあるので回答します。
- 結果の通知を受ける
調査の結果、後遺障害認定を受けられるかどうかが決まったら結果の通知が届きます。
2-2.被害者請求のメリット
被害者請求のメリットは、被害者が自分の裁量で積極的に後遺障害認定が認められるよう主張したり資料提出したりできることです。難しい事案でも認定を受けられる可能性が高くなります。また自分で手続きを進めるので手続きの透明性も確保され、安心感があります。
2-3.被害者請求のデメリット
デメリットは手続きが煩雑で労力がかかることです。素人の方にはハードルが高いと感じるケースもあるでしょう。また診断書や診療報酬明細書などの資料収集の際に実費が発生します。
3.事前認定と被害者請求、どちらを選択すべきか
選択の基準としては、以下のように考えると良いでしょう。
3-1.後遺障害が明らかでほぼ確実に認定を受けられるなら事前認定
後遺障害の内容が明らかに検査結果によって証明されていて、認定される等級についても争いが発生しそうにないケースでは事前認定を利用しても問題はありません。
3-2.認定を受けられるかどうか微妙、争いがあるなら被害者請求
資料収集状況などからして後遺障害認定されるかどうか微妙なケース、等級に争いが発生しそうなケースなどでは自分で確実に手続きを進められる被害者請求を選択しましょう。
交通事故被害者にとって後遺障害認定は非常に重要な手続きです。お一人で対応するより弁護士に相談しながら進める方が確実です。千葉で交通事故に遭われて後遺障害が残りそうな方は、より確実に高い等級の認定を受けるため、お気軽にご相談下さい。
後遺障害診断書の作成方法とポイント
交通事故で後遺症が残ったら「後遺障害診断書」を入手しなければなりません。後遺障害診断書への記載内容1つで後遺障害が認定されるかどうかが変わるケースもあるので、後遺障害診断書は被害者にとって非常に重要な書類と言えます。
今回は後遺障害診断書の作成方法や医師に作成を依頼する際の注意点を解説します。
1.後遺障害診断書とは
後遺障害診断書とは、後遺障害の内容に特化された診断書です。
診断書とは、医師が患者の症状や状態、寛解の見込みなどについて記載する書類ですが、後遺障害診断書はその中でも後遺障害についての事項について詳しく書かれているものです。
交通事故で後遺障害診断書が必要になるのは、後遺障害認定のためです。
事故後治療を受けても完治せずに後遺症が残ったら、自賠責保険で後遺障害認定を受けなければなりません。その際に後遺障害診断書の内容が非常に重視されています。
後遺障害診断書に記載されている内容に不備や不足があると、本来は後遺障害認定を受けられるはずのケースでも認定されません。適正に後遺障害認定を受けて賠償金を払ってもらうため、後遺障害診断書をきちんと作成することが非常に重要です。
2.後遺障害診断書の作成・入手方法
後遺障害診断書はどのようにして入手すれば良いのでしょうか?
2-1.専用の書式を用意する
自賠責の後遺障害認定では、定まった後遺障害診断書の書式があります。そこでまずは被害者が自分で後遺障害診断書の「書式」を入手しなければなりません。
保険会社に言えば後遺障害診断書の書式を送ってもらうことができます。弁護士に示談交渉等の対応を依頼している場合には弁護士から書式をもらえるでしょう。当事務所でも対応しております。
2-2.医師に後遺障害診断書の作成を依頼する
後遺障害診断書の書式を用意したら、医師にその書式を渡して作成を依頼します。このとき、医師によっては後遺障害診断書の作成に慣れておらず、どのように書いたら良いか迷われるケースがあるので要注意です。できればどういった点に注意して書くのが良いか、医師に要点を説明しながら書いてもらうのが望ましいでしょう。
2-3.お金を払って受け取る
医師が後遺障害診断書を作成するのに、通常1~2週間程度かかります。完成したら連絡してもらえるので、病院で診断書の代金を払って受け取ります。料金額はだいたい1万円程度です。払った費用は後遺障害が認定されれば後から加害者へ請求できるので、領収証をとっておきましょう。
3.後遺障害診断書を作成する際のポイントと注意点
後遺障害診断書は、基本的に医師が作成するものなので、医師に任せるほかありません。ただし以下のような点は重要となるので、被害者としても注意しておくべきです。
3-1.後遺障害の内容を正確に書いてもらう
後遺障害の内容を正確に反映してもらう必要があります。たとえば記入漏れによって後遺障害の内容が伝わらなかったら認定を受けられない可能性が高まります。
特に医師が後遺障害診断書の作成に不慣れだと、勘違いで記入ミスを起こすケースもあるので要注意です。
3-2.必要な検査をした上で書いてもらう
後遺障害診断書には、各症状に応じた検査結果を網羅的に書いてもらう必要があります。必要な検査をしていなければ、まず検査をしてから記入をお願いしましょう。また可動域制限のケースなどでは「主要運動」だけではなく「参考運動」まで書いてもらうことで後遺障害認定を受けられる事例などもあり、検査結果の書き方にも注意が必要です。
3-3.被害者の自覚症状を正確に書いてもらう
後遺障害診断書には被害者の自覚症状を書く欄がもうけられています。ここにはできるだけ一貫して症状が継続していることをわかりやすく記載してもらうべきです。自覚症状に不自然な変遷があったりあまり自覚症状がなかったりするような記載があると、後遺障害を否定されるリスクが高まります。治療中からしっかり医師とコミュニケーションをとっておきましょう。
後遺障害診断書の作成を依頼するとき、弁護士から医師に連絡を差し上げて作成のご相談やアドバイス、お願い事項の伝達なども行えます。千葉で事故に遭い、これから後遺障害認定を受けようと考えておられるなら、是非とも一度ご相談下さい。
後遺障害認定結果に不満がある場合の対処方法
交通事故で後遺障害等級認定の申請をしても、期待どおりの等級が認定されるとは限りません。たとえばむちうちの場合、MRI画像などに他覚所見が認められないため非該当となってしまったり、12級を目指していたのに14級となってしまったりする例が多くみられます。
いったん非該当となったり低い等級になったりしても、「異議申立て」やその他の方法で争うことが可能です。
以下では後遺障害認定結果を争う方法をご紹介します。
1.異議申立て
1つ目の方法は、自賠責保険や共済へ異議申立てを行うものです。
後遺障害認定が出ると、認定を下した自賠責保険や共済そのものに対し、再審査を求めることが可能です。その手続きは「異議申立て」と呼ばれています。
異議申立てによって1回目とは別の資料を提出し、因果関係や後遺障害に該当する症状を立証できれば等級が認められたり変更されたりする可能性があります。
異議申立ての手続き方法としては「異議申立書」という書類を提出するだけで足り、費用はかかりません。期間や回数制限もなく、示談が成立するまでであればいつまででも何度でも申立てできます。
ただし判断するのが1回目と同じ自賠責保険や共済なので、同じ方法で申立をしても結果は変わらないでしょう。効果的に異議申立ての手続きを利用して等級変更を目指すなら、まずは一度目の敗因をしっかり分析する必要があります。そしてその分析結果をもとにして、新たな診断書をとりつけたりこれまで実施していなかった検査を実施してその結果を添付したり、場合によっては医師に意見書を書いてもらったりする必要があります。因果関係が問題となっているならその説明なども行うべきです。
被害者お一人の力で異議申立てを成功させるのは困難ですから、手続きされる際には弁護士にお任せ下さい。
2.自賠責保険・共済紛争処理機構
後遺障害認定結果を変更させる2つめの方法として「自賠責保険・共済紛争処理機構」の利用が挙げられます。これは交通事故ADR(裁判外の紛争処理機関)の1種で、当事者と自賠責保険とのトラブル解決を目的に設置されています。
自賠責での決定内容や保険金支払いなどに関して当事者に不満がある場合、紛争処理機構に訴え出ると、紛争処理機構は自賠責の判断内容が適正かどうか判定します。
自賠責保険や共済は紛争処理機構の決定事項に従うので、ここで等級が変更されたり認定されたりしたら、自賠責でもそのまま有効な決定として取り扱ってくれます。
自賠責保険・共済紛争処理機構の仕組みは、「調停」と呼ばれますが基本的に「書面審理」です。一般の交通事故ADRや調停のような「話し合い」ではありません。
判定を覆すには、適切な資料の収集と提出、書面によるわかりやすい説明が必須となります。
被害者お一人で効果的に立証等行うのは難しいので、やはり弁護士に依頼する必要があると言えます。
3.訴訟
自賠責保険における異議申立て(再審査)や自賠責保険・共済紛争処理機構の調停で結果が変わらなかった場合でも、訴訟をすれば後遺障害認定結果が変わる可能性があります。
裁判所は終局的な紛争解決機関ですから、自賠責保険や自賠責保険・共済紛争処理機構の判断内容に拘束されず、当事者の主張や証拠に基づいて自由に判断できます。
判断するのは自賠責とも紛争処理機構とも全く異なる裁判所(裁判官)であり、判断の過程や方法も異なるため、同じ資料でも判断が覆る可能性が充分にあります。
また裁判所が後遺障害認定を認めた場合、慰謝料や逸失利益は「裁判基準」で計算されます。すると自賠責基準や任意保険会社の基準より大幅に高額になる可能性が高い(後遺障害慰謝料の場合2~3倍程度になります)ので、被害者にとって非常に有利です。
一般に「裁判」というと構えてしまう方が多いのですが、現実には裁判によって有利な結果を得られるケースが多々あります。弁護士がついて適切な対処をするなら、不安に思う必要はありません。
当事務所では交通事故被害者の方への支援に積極的に取り組んでいます。後遺障害認定結果に納得できないなら、一度お気軽にご相談下さい。
失業者の逸失利益について
「有職者」が交通事故に遭って後遺障害が残ったら、加害者に「逸失利益」を請求できます。
では被害者が「失業者」だった場合、まったく逸失利益を請求できないのでしょうか?
実は交通事故当時にたまたま失職していた場合には、当時働いていなくても逸失利益を請求できる可能性があります。
今回は失業者が逸失利益を請求できるケースと計算方法について解説していきます。
1.逸失利益は「労働によって対価を得ている人」に認められる
逸失利益は、交通事故によって発生する損害賠償金の1種です。
事故によって後遺障害が残ったら、事故前と同じように働くことはできなくなります。すると「労働能力」が低下して、生涯にわたる収入が減額されると考えられます。その減額分の損失が「逸失利益」です。
このように、逸失利益は「働いて収入を得ている(労働によって対価を得ている)」ことが前提となる賠償金なので、そもそも労働をしていない「失業者」には認められないのが原則です。
2.失業者でも逸失利益が認められるケース
しかし一定のケースでは、失業者にも逸失利益が認められます。失業者であっても、「たまたま事故当時にリストラなどで失業していただけで、それまでは継続的に働いてきており実際に働く能力もあり、今後も働く予定であった」場合があるからです。
このような場合、事故がなかったら普通に就職をして働いて収入を得ていた蓋然性が高いと言えるので、事故で後遺障害が残り、思うように働けなくなったら逸失利益を認めても不都合はありません。
3.失業者に逸失利益が認められる基準
失業者に逸失利益を認める場合、以下の要件を満たす必要があります。
3-1.就労能力がある
事故時たまたま失業していたとしても、本人に仕事をするだけの能力があったことが必要です。もともと労働能力が低かった方の場合、後遺障害が残ったことによって働けなくなったとは言えないので逸失利益は認められません。
3-2.就労意欲がある
事故当時、本人に就労意欲があったことが要求されます。労働能力があった方でも本人に働く気持ちがなかったのであれば、失われた利益は観念できないからです。
3-3.実際に就労する高い蓋然性があった
3つ目に、実際に就労する蓋然性が高かったことも必要です。具体的には転職活動を行っていたり内定をもらっていたりした事情です。
上記の3つの要件を満たせば、事故当時たまたま失業していたとしても逸失利益が認められます。
4.失業者の逸失利益計算方法は?
失業者の場合、逸失利益をどのようにして計算すべきかが問題です。通常逸失利益を計算するときには「事故前の実収入」を「基礎収入」としますが、失業者の場合には実収入がないので原則的な方法では計算できないからです。
失業者の場合、基本的には「失業前の収入」を参考にします。
再就職するとしても、失業前の収入と同等の金額を得るだろうと予測されるからです。
具体的な内定先が決まっていた場合などには、内定先の給与基準を用いるケースもあります。
また本人に通常程度の労働能力があるにもかかわらず、失業前の収入が通常に比して低額だった場合には、再就職すれば平均賃金程度は得られるだろうと考えられるので、男女別、職種別、学歴別などの平均賃金を使って基礎収入を算定します。
5.失業者が高齢であった場合
失業者が高齢の場合でも、逸失利益を請求できます。
ただし高齢者が失業中の場合、若い人よりも「就労の蓋然性」や「就労能力」が低くなるので、逸失利益が認められにくくなります。
専門技能を持っている場合や事故の直近まで働いていた場合、具体的な就労予定があった場合などでなければ逸失利益は認めにくいでしょう。
また高齢の場合、「基礎収入」算定の際にも注意が必要です。通常の男女別の平均賃金を使うと高額になりすぎる可能性が高くなるからです。通常は平均賃金を割合的に減額したり、年齢別の平均賃金を使ったりして金額を調整しています。
交通事故で後遺障害が残った場合、逸失利益が認められるか認められないかで大きく賠償金額が変わってきます。千葉で交通事故に遭われて対応に悩まれたら、弁護士までご相談下さい。
« Older Entries