遷延性意識障害になった場合の注意点

交通事故では被害者が意識を失ったまま回復せず、いわゆる「植物状態」となってしまうケースがあります。植物状態を医学的に「遷延性意識障害」といいます。

遷延性意識障害になると、被害者には一生介護が必要となりご家族には大変な負担がかかりますし、示談交渉の際などにもいろいろな注意点があります。

 

今回は被害者が遷延性意識障害となったときの注意点について、弁護士が解説します。

 

1.遷延性意識障害の認定要件

交通事故で意識障害となり、長期にわたって回復せず以下の要件を満たせば「遷延性意識障害」と認定されます。

 

  • 自力では移動できない
  • 自力では摂食できない
  • 大小便のコントロールができない(失禁状態)
  • 眼球で物を追うことはあっても認識できない
  • 発語することはあっても意味のある言葉を発せない
  • 簡単な反応(目をつぶる、手を握り返すなど)はあってもコミュニケーションをとれない

 

上記の6つのすべてを満たす状態が3か月以上続いたときに「遷延性意識障害」と判断されます。

 

2.遷延性意識障害となった場合の問題点

交通事故で被害者が遷延性意識障害となった場合、通常の事故とは異なり以下のような点に注意が必要です。

2-1.長期間受け入れてくれる施設が少ない

被害者が交通事故で意識障害に陥ったら、通常は病院へ運ばれて治療を受けることになるでしょう。

遷延性意識障害の場合、急性の状態が落ち着いても意識が回復しないので、入院が長期化します。すると、病院から退院を促される可能性があります。病院には次々新しい患者が入院してきますし、3か月が経過すると保険点数が低くなるという経済的な事情もあるためです。

ところが遷延性意識障害の患者を受け入れてくれる施設はそう多くはないので、ご家族が行き先に困るケースがみられます。

2-2.介護場所を決定する必要がある

被害者が遷延性意識障害となった場合、生涯にわたる介護が必要です。その場合「施設で介護」を受けるのか「自宅で介護」をするのか決めなければなりません。

どちらを選択するかで請求できる賠償金額も大きく変わってきますし、ご家族にかかる負担も違ってきます。ご家族は重大な決断を迫られ判断に迷うケースが少なくありません。

2-3.成年後見人を選任する必要がある

遷延性意識障害となった場合、被害者本人は加害者との示談交渉を進められません。

家庭裁判所で「成年後見人」を選任し、後見人が示談交渉や賠償金請求の手続きを行う必要があります。

どうやって後見人を選任すれば良いのか、また誰が成年後見人になるのが良いか、後見人を選任した後や賠償金を受け取った後の対応に迷ってしまうご家族の方もおられます。

 

2-4.保険会社から「生活費控除」を主張されるケースがある

被害者が遷延性意識障害となった場合、保険会社から「生活費控除」を主張されるケースが多々あります。遷延性意識障害の患者は生活のための活動をあまりしないので生活費がかからないはずだと言われるのです。

しかし裁判例では遷延性意識障害のケースでも生活費控除を認めないものがたくさんあるので、そういった主張を安易に受け入れるべきではありません。

2-5.平均余命が短くなると主張される

遷延性意識障害の事例では、生涯にわたる介護費用を請求できます。その際には「平均余命」を使って介護費用を計算します。

ところが保険会社は「遷延性意識障害の患者は一般の人よりも平均余命が短い」と主張して介護費用を減額するよう主張してくるケースがよくあります。

 

このような主張も裁判では認められない可能性が高いので、ご家族としては受け入れるべきではありません。

 

3.交通事故でご家族が遷延性意識障害となったら弁護士へご相談下さい

交通事故で被害者が遷延性意識障害になると、上記のようなさまざまな困難な問題が発生します。不利益を防止しご本人やご家族の権利を守るには、通常の交通事故事案以上に弁護士によるサポートが必要といえるでしょう。

弁護士が介護場所の判断や介護費用の計算、示談交渉などを行います。千葉で交通事故に遭われてお困りのご家族様は、是非とも一度ご相談下さい。

 

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