交通事故の相手が任意保険に入っていない場合、賠償金の支払を受けるには相手と直接話し合う必要があります。
当事者同士で示談して示談書を作成する際には、保険会社が関与する事案以上にトラブルが発生しやすく注意が必要です。
今回は無保険の相手と示談する場合に押さえておくべき注意点を解説します。
1.相手に資力がなく「支払えない」可能性がある
保険会社が相手なら、発生した損害がどんなに高額でもきちんと一括で支払われます。
「お金がない」からといって賠償金が支払われない状況はありえません。
しかし相手が本人の場合、そうはいきません。被害者に後遺障害が残ったり死亡したりして高額な賠償金が発生したときなど、相手に支払い能力がなく支払いを受けられない可能性があります。
示談の際、相手がどうしても一括で支払えない場合には「分割払い」を認めるなどの対応が必要です。
2.示談しても相手が支払わない可能性がある
保険会社が相手の場合、約束した示談金が支払われないことはありえません。通常、示談すれば1週間程度の間に指定した振込先に一括で示談金(保険金)が支払われます。
しかし相手が本人の場合、そうはいきません。示談して支払いを約束しても、守られない可能性があります。特に長期の分割払いにした場合、途中で支払われなくなるリスクが高くなり、要注意です。
3.無保険の相手と示談するときのポイント
無保険の相手と示談するときには、以下のような対応が重要です。
3-1.期限の利益喪失約款をつける
相手が賠償金を一括で支払えない場合、やむをえず分割払いを認めるべき状況が発生します。その際には、必ず「期限の利益喪失約款」をつけましょう。
期限の利益とは、「分割払いできる利益」です。
相手がきちんと約束通りに分割払いを続ければ問題ないのですが、支払いを滞納された後もずっと分割払いが認められると不都合が発生します。分割払いが認められる限り、期限が到来した分しか支払い請求できないからです。
そこで2~3回分滞納したら、その時点で残金の一括請求できるように取り決めておきます。それが「期限の利益喪失約款」です。
無保険の相手に分割払いを認める場合、必ず「2回分以上滞納した場合、期限の利益を喪失し、そのときの残金を一括払いする」と示談書内に定めておきましょう。
3-2.必ず公正証書にする
無保険の相手と示談するときには、相手が不払いを起こしたときの対処を考えておかねばなりません。
具体的には、示談書を公正証書にするようお勧めします。
公正証書とは、公務員である公証人が作成する公文書です。公正証書で金銭支払いの約束をするときに「強制執行認諾条項」をつけておけば、相手が不払いを起こしたときにすぐに相手の給料や預貯金、不動産などの資産を差し押さえることができます。
もし公正証書がなかったら、「損害賠償請求訴訟」を起こさないと差押えができないので大変な手間となります。
無保険の相手には不払いのリスクがつきまとうので、必ず公正証書を作成しておきましょう。
3-3.公正証書の作成方法
公正証書を作成するには、先に相手と示談を成立させておく必要があります。公証役場では示談交渉の代行や調整はしてくれません。
相手と話し合って合意した上で、お近くの公証役場に書面作成を申し込みましょう。
全国の公証役場一覧
http://www.koshonin.gr.jp/list
すると担当の公証人と公正証書の作成日時が決まります。指定された日時に必要書類を持って当事者2名が公証役場に行けば、公正証書による示談書を作成してもらえます。
その後、相手が約束通り支払いをしないときには、2回分の支払いを滞納した時点で残金と遅延損害金の一括請求ができますし、給料や預貯金などを差し押さえて回収できます。
無保険の相手との示談交渉は難航するケースも多いですし、示談成立後も不払いのリスクがつきまといます。不利益を避けるためには法律の専門知識を持った弁護士によるサポートが必要です。
千葉で交通事故に遭い、相手が無保険などでお困りの方はお気軽に当事務所までご相談下さい。