「同乗者(好意同乗、無償同乗)の減額」を主張されたときの対処方法

家族や友人の車に乗せてもらっているときに交通事故に遭うと、保険会社から「好意同乗」「無償同乗」と主張されて賠償金を減額される可能性があります。

 

好意同乗(無償同乗)とは、誰かの好意に甘えて無償で車に乗せてもらうことです。好意同乗の場合、賠償金額を減額する裁判例がいくつか出ているため、保険会社は減額を主張してくる傾向があるのです。

 

ただ保険会社による好意同乗の減額主張は裁判で認められないケースも多いので、安易に受け入れるべきではありません。

 

今回は、保険会社から「同乗者(好意同乗、無償同乗)の減額」を主張されたときの対処方法をご説明します。

 

1.好意同乗、無償同乗減額が問題になるケースとは

好意同乗、無償同乗が問題になるのは「第三者の車に乗せてもらっていたケース」です。

たとえば以下のような場合が該当します。

 

  • 目的地まで家族に車で送ってもらった
  • 帰りに方向が同じ友人に送ってもらった
  • たまたま車で通りがかった家族に家まで乗せてもらった

 

このように家族や友人の車に乗せてもらっているときに交通事故に遭うと、事故の相手だけではなく「運転者である家族や友人自身」へも賠償金を請求できる可能性があります。運転者にも過失がある場合、損害発生は運転者の責任ともいえるからです。つまり運転者の過失割合が0でない限り、被害者は運転者にも損害賠償請求できます。

 

運転者と事故の相手方には「共同不法行為」が成立するので、被害者はどちらにも全額の賠償金を請求できます。

 

2.好意同乗、無償同乗で賠償金が減額される理由

好意同乗、無償同乗のケースでは、なぜ保険会社から賠償金の減額を主張されるのでしょうか?

 

それは、被害者が運転者の好意に甘えて無償で同乗させてもらっていたにもかかわらず、事故に遭ったときに全額の賠償金を請求するのは不公平と考えられるからです。無償で乗せてもらっていた以上、発生した損害についても被害者が責任を負うべきという考えです。

 

そこで昭和の時代には、好意同乗、無償同乗の場合には同乗者が運転者へ請求できる賠償金の金額を減額するのが通常でした。昭和40年代、50年代の裁判例では、好意同乗、無償同乗のケースで過失相殺を類推適用し、賠償金を減額するものが多数みられます。

 

こういった経緯があるため、今も同乗者が運転者側の保険会社と示談交渉を進めるとき、保険会社から「同乗させてもらっていたから賠償金を減額します」と主張されるのです。

 

3.単に同乗していただけでは減額されない

しかし裁判所の考えは異なります。好意同乗だからといって、必ずしも賠償金が減額されるわけではありません。

好意同乗や無償同乗によって減額が行われていたのは、「車が高級品」だった時代です。

昭和40年、50年代に車を所有していたのは比較的裕福な家庭に限られていました。そのような高級品を使わせてもらったのだから、発生した損害についても被害者が責任を負うべきという考えにもとづきます。

 

一方、現代は全く状況が異なっています。通常一般程度の収入や低収入でも車を持っている人が多いでしょう。

「車が高級品」という時代は終わっているので、今では「単に同乗させてもらっていただけ」では減額しないのが一般的な裁判所の考えです。

 

4.同乗によって減額されるケースとは?

現代においても、同乗によって賠償金が減額されるケースは存在します。それは以下のような場合です。

4-1.被害者が危険を発生させた場合

被害者が運転者を煽って危険な運転をさせた場合、被害者が運転を妨害して危険を発生させた場合などです。

4-2.被害者が危険を受け入れた場合

運転者が飲酒している事実、無免許である事実、薬によって頭がもうろうとしている事実などを知りながら、あえて同乗した場合です。

 

上記のような特別な事情がない限り、単に同乗していただけで賠償金の減額を受け入れる必要はありません。

 

家族や友人知人の車に乗せてもらっていて保険会社から減額を主張されたとき、すんなり受け入れるべきではありません。本当に減額の必要性があるのか、状況に応じた検討が必要です。

不当に賠償金を減額されないため、迷われた際には弁護士までご相談ください。

 

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