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保険会社が治療費を払わない理由と対処方法
交通事故が発生すると、通常は加害者の保険会社が病院へ直接治療費を支払います。途中で治療費を打ち切られることはあっても、被害者が当初から自己負担しなければならない事例は少数でしょう。
ただし中には保険会社が事故当初から、治療費支払いを拒否するケースも存在します。
今回は、保険会社が当初から治療費を支払わない理由や対処方法について、弁護士が解説します。
1.保険会社が治療費支払いを拒絶する理由
保険会社が事故当初から治療費を支払わない場合、以下のような原因が考えられます。
1-1.被害者の過失割合が高い
交通事故の被害者の過失割合が高い場合、保険会社が治療費の支払を拒絶する可能性が高くなります。
被害者の過失割合が高いと「過失相殺」によって任意保険会社が被害者へ支払う賠償金の金額が下がり、治療費を出すと「払いすぎ」になってしまう可能性があるからです。
被害者の過失が7割以上になると、自賠責でも「重過失減額」が行われて保険金額が下がります。
ただ保険会社と被害者の間で認識が異なり、被害者としては保険会社の主張する過失割合を認められないケースもあるでしょう。そういった場合、被害者は必要な治療費の支払を受けられなくなり、不利益を受けてしまう可能性があります。
1-2.けがが不自然で、事故との因果関係がないと判断されている
小さな交通事故の場合、保険会社が「本当はけがをしていないのではないか?」と疑う可能性があります。車の損傷程度からしてけがの程度が大きすぎる場合やけがの部位が不自然な場合などには「交通事故によって発生したけがではない」と因果関係を否定して治療費の支払を拒絶します。
1-3.通院治療費の支払を拒絶
交通事故で被害者が大けがをして入院した場合、入院中の治療費については支払をしても通院に切り替わると支払が止まるケースがあります。
2.治療費を支払ってもらえない場合の対処方法
2-1.健康保険や労災保険を使って通院する
加害者の保険会社が治療費の支払を拒絶する場合、無理に支払わせるのは困難です。どうしても支払ってもらえないなら、まずは自分の保険を使って通院しましょう。
交通事故が労災に該当するなら労災保険を適用できますし、そうでない場合には健康保険を使って通院すれば負担を小さくできます。
2-2.診療報酬明細書、領収証をとっておき、後で請求する
健康保険を使って通院すると、1~3割の自己負担額が発生します。自分で支払った治療費については後から保険会社へ請求できるので、診療報酬明細書を全部とっておきましょう。
通院交通費も損害金として請求可能です。高速代や駐車場代なども払ってもらえるので領収証を保管しましょう。
2-3.事故の資料を集める
過失割合に争いがあって治療費支払いを拒絶されている場合、争いを解決できれば治療費の支払いを受けられる可能性があります。
そのため、事故現場の実況見分調書を入手したりドライブレコーダーの画像を分析したりして、加害者側の主張が間違っていることを証明しましょう。
2-4.交通事故とけがの因果関係を示す
保険会社が「交通事故が軽微だから事故との因果関係が認められない、治療費を払わない」と主張している場合には、交通事故と怪我との因果関係を証明しましょう。
車の損傷度合いやけがの具体的な内容をしっかり分析し、医師の意見書などを示して説得的に主張をすれば、治療費が支払われる可能性があります。
2-5.自賠責保険や自分の保険に請求する
任意保険会社が治療費を支払わなくても、加害者の自賠責保険へ直接保険金を請求できます。
また人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険に加入していれば、そういった自分の保険にも請求できる可能性があるので、保険会社に相談してみましょう。
3.治療費トラブルで悩んだら弁護士に相談を
交通事故に遭い、保険会社から治療費が支払われなくて困ってしまったら弁護士までご相談ください。過失割合について争いがあるなら弁護士が資料を取り寄せて分析し、保険会社と交渉することも可能です。
弁護士が示談交渉に対応すれば賠償金が大きくアップするケースも多々あります。千葉県で交通事故に遭われたら、一度お気軽にご連絡いただけますと幸いです。
交通事故で請求できる「交通費」「宿泊費」について
交通事故で受傷し、通院するには交通費がかかります。遠方の病院に入通院する場合、宿泊費が必要となるケースもあるでしょう。
交通費や宿泊費も交通事故によって発生した損害といえるので、加害者側へ請求できます。
今回は交通事故で加害者側へ「交通費」や「宿泊費」をどこまで請求できるのか、千葉の弁護士が解説します。
1.交通事故で請求できる交通費の種類や計算方法、用意しておく資料
交通事故で病院に通院した場合、加害者に対し以下のような交通費を請求できます。
1-1.公共交通機関
電車やバスなどの公共交通機関を利用して通院した場合、全額を実費で請求できます。
この場合、合理的な経路であれば運賃額は明らかなので個別の領収証は不要で、病院に通った日数分の交通費が支給されます。
ただし特急列車を利用した場合などには特急料金の領収証が必要です。
1-2.タクシー代
被害者が重傷などでタクシーを利用する必要性があった場合には、タクシー代も請求可能です。
タクシー代については常に全額認められるとは限らず「必要な範囲で相当な限度にとどまる場合」に支払われます。以下のような事情を考慮して必要性や相当性が判断されます。
- 被害者の受傷部位や程度
被害者が重傷のケース、足を受傷して歩けない場合、身体が衰弱していて人混みを移動すると危険がある場合などにはタクシー利用が認められます。
- 被害者の年齢
被害者が幼児などの場合、一般成人よりもタクシーを使う必要性が認められやすくなります。
- 近隣の公共交通機関の便
公共交通機関が近くにない場合などにはタクシー代が認められやすくなります。
1-3.ガソリン代
自家用車で通院する場合、ガソリン代を請求できます。ガソリン代は「1キロメートルあたり15円」として計算されます。
1-4.高速代
自家用車で通院する際に高速道路を利用した場合「必要性」があれば実費全額が支払われます。
以下のような場合には高速道路を利用する必要性が認められやすくなります。
- 病院が遠方で、下道を通るのが合理的でない
- 遠方の病院に通院する必要がある
近距離の病院に行くのにわざわざ高速道路を利用したり、近距離にも良い病院があるのにわざわざ遠くの病院を選んで高速道路を使って通院したりすると、高速道路料金を負担してもらえない可能性があります。
また高速代を請求するには支払った証拠が必要なので、領収証やETCの明細書をとっておきましょう。
1-5.駐車場代
自家用車で通院して駐車場代がかかった場合には、駐車場代も実費で支払われます。ただしどのくらいかかったか明らかにするため領収証をとっておく必要があります。
1-6.家族の交通費
本人が入院している場合、ご家族が付添看護などのために病院に通うケースもあるでしょう。その場合、家族が支出した交通費も損害の内容として賠償されます。
支払い基準は本人のケースと同様です。高速代や駐車場代については領収証をとっておきましょう。
2.交通事故で請求できる宿泊費、不動産賃料
被害者が遠方の病院や施設に入院すると、家族が看護のために近くのホテルに宿泊しなければならないケースがあるものです。また家族が病院の近くに賃貸アパートなどを借りて病院に通い、生活のための基本的な器具を購入することもあるでしょう。
被害者の受傷の部位や程度などの状況によって必要性が認められれば、家族の宿泊費や不動産の賃料、生活用品購入費用も損害として加害者側へ請求できます。
裁判例でも、被害者が重傷のケースでは家族が滞在したホテル代、数か月に及ぶ不動産賃料、生活器具購入費用を認められたものが多々あります(横浜地裁平成2年11月30日、東京地裁平成10年11月12日、札幌地裁平成16年2月5日など)。
千葉で交通事故に遭い、どこまで交通費や宿泊費用を請求できるのか、また計算方法についてご不明な場合にはお気軽に弁護士までご相談下さい。
交通事故で請求できる「遅延損害金」とは
交通事故で加害者に損害賠償金を請求するとき、「遅延損害金」を加算できるケースとできないケースがあります。
遅延損害金とは、相手が支払いを遅延したために被害者に発生した損害に対する賠償金です。
今回は、交通事故で加害者に遅延損害金を請求できるケースと請求できないケース、遅延損害金の金額や計算方法について弁護士が解説します。
1.遅延損害金とは
遅延損害金とは、お金を支払わなければならない債務があるときに、期限までに支払わなかったことによって債権者に発生した損害を賠償するためのお金です。
たとえばお金を借りたとき、期日までに返済しなければ期日後支払を終えるまで遅延損害金が発生し続けます。
交通事故でも、加害者は被害者へ損害賠償金を支払わねばなりません。しかし示談交渉が長びいたり裁判が必要になったりすると、なかなか支払いが行われないものです。その場合、支払われなかった期間に応じて遅延損害金が賠償金に加算されます。
交通事故で加害者が被害者へ支払わねばならないお金は「不法行為にもとづく損害賠償金」です。これは、「不法行為時」においてすぐに支払わねばならないと考えられています。
そこで、不法行為時から実際に賠償金が支払われるまでの間、遅延損害金が発生し続けます。
2.遅延損害金の計算方法
交通事故の遅延損害金は、どのようにして計算されるのでしょうか?
2-1.遅延損害金の計算方法
遅延損害金の計算式は、以下の通りです。
「遅延している金額×遅延損害金の割合(年率)×遅延日数÷365日(うるう年なら365日)」
たとえば100万円を借りて、返済期日から30日間遅延し、遅延損害金の割合を15%と定めているケースであれば、遅延損害金は以下の通りです。
100万円×0.15×30日÷365日=12,329円
2-2.交通事故の場合の遅延損害金計算方法
交通事故の場合には、遅延している金額は「損害賠償金の全額」です。
遅延日数は、「交通事故のあった日から実際に賠償金を支払うまでの日数」です。
年率については、民法の定める法定利率をあてはめます。法定利率は、2020年3月31日までは年率5%となっています。(その後は法改正によって少なくとも3年間、年率3%となります)
2-3.交通事故の遅延損害金計算例
交通事故での賠償金元本が1,000万円、事故から支払いまでの日数が200日かかったケースでの遅延損害金
1,000万円×0.05×200÷365=273,973円
交通事故の場合、後遺障害が残ると元本が大きくなって遅延損害金の金額も高額になりやすいです。
3.遅延損害金を請求できるケース
交通事故の損害賠償金には遅延損害金が加算されると言いましたが、実は必ずしも支払いを受けられるとは限りません。むしろ多くのケースでは、遅延損害金は払われません。
なぜなら遅延損害金が支払われるのは、「損害賠償請求訴訟」を起こして「判決」によって加害者に支払い命令が出たケースだけだからです。
保険会社と示談交渉をして賠償金を支払ってもらう場合には、遅延損害金は払われません。調停やADRなどで解決する場合にも、遅延損害金は加算されません。訴訟を起こしても、途中で和解したケースでは遅延損害金は払われないのが通常です。
4.訴訟で判決を得るメリット
一般の方は、交通事故の示談が決裂して訴訟が必要になったと聞くと、「大変なトラブルになってしまった」と構えてしまうものです。「できれば示談で穏便に解決したい」と希望される方が圧倒的に多数でしょう。
ただ、訴訟で判決になったら「遅延損害金」が加算されますし、認容された損害賠償金の1割相当の「弁護士費用」も支払われます。
たとえば訴訟で解決までに2年がかかり、1,000万円の損害賠償金が認められた場合、遅延損害金100万円と弁護士費用100万円の合計200万円が加算された1,200万円の支払いを受けることが可能となります。もとの1,000万円と比較すると2割増しです。
このようなことを考えると、交通事故で訴訟を起こして判決を得ることにはデメリットばかりとは言い切れません。
交通事故トラブルでは、スピーディかつ有利な解決方法を目指す必要がありますが、ときには訴訟も視野に入れなければならないケースもあります。弁護士が状況に応じた適切な判断とアドバイスを行いますので、困ったときには是非とも一度、ご相談下さい。
交通事故の弁護士費用を相手に請求できるケースとは
交通事故に遭ったら、加害者との示談交渉をしなければなりません。決裂したら裁判への対応も必要です。難しい後遺症が残り、被害者一人ではうまく後遺障害認定の手続きを進められないケースもあるでしょう。
そんなとき弁護士に依頼すると助かるものですが、弁護士費用が発生することがネックです。弁護士費用を加害者に請求することはできないのでしょうか?
実は交通事故では、弁護士費用を相手に請求できるケースとできないケースがあります。
今回は交通事故で弁護士費用を「損害」として相手に賠償請求できるのか、解説していきます。
1.弁護士費用も「損害」となる
交通事故が発生したとき、弁護士費用も治療費などと同様に相手に請求できるのでしょうか?
事故の治療費や休業損害、慰謝料などを相手に請求できるのは、こういったものが「交通事故によって発生した損害」だからです。交通事故が起こらなければ治療費は不要でしたし、休業損害や精神的苦痛も発生しなかったでしょう。こういった因果関係が認められるので、加害者には被害者に対する損害賠償義務が発生します。
弁護士費用についても同様です。交通事故がなかったら弁護士費用は不要でしたし、交通事故が発生したら被害者に弁護士が必要になることは通常あり得ることといえます。
そこで、弁護士費用も「交通事故によって発生した損害」の一内容として、加害者に請求できる場合があります。
2.示談交渉では請求できない
交通事故では、被害者と加害者の保険会社が示談交渉をして賠償問題を解決する事例が多数です。示談で解決する場合、弁護士費用は賠償の範囲に入りません。
確かに被害者には法的に弁護士費用を請求する権利がありますが、示談の際にはお互いが譲り合うので、弁護士費用までは請求しない取扱いとなっています。
保険会社に弁護士費用を求めると「どうしても弁護士費用を払ってほしければ、裁判をするように」と言われるでしょう。
示談交渉を弁護士に依頼しても、その費用を加害者側へ求めることはできないと考えておく必要があります。
3.調停、ADRでも請求できない
では裁判所で調停をしたり交通事故相談センターなどのADRを利用したりするときには弁護士費用を請求できるのでしょうか?
調停も、示談交渉と同様に被害者と加害者が話し合って賠償問題を解決する手続きです。通常、弁護士費用を解決金に含めることはありません。
ADRでは調停と審査の両方がありますが、どちらにしても弁護士費用が賠償額に含まれることは基本的にありません。
つまり調停やADRを利用しても、弁護士費用の負担を求めるのは困難です。
4.訴訟で判決を得る場合には請求可能
結局、交通事故にかかる弁護士費用を請求するには、「損害賠償請求訴訟」を起こすしかありません。訴訟で「判決」を出してもらったケースでのみ、弁護士費用の負担を求めることが可能です。
訴訟でも、途中で「和解」した場合には、通常弁護士費用を払ってもらうことは困難です。
5.請求できる弁護士費用の金額
判決によって弁護士費用の支払いを受けられる場合、その金額に注意が必要です。
この場合、かかった費用全額ではなく「認定された損害賠償金の1割」と算定されます。
実際にはそれ以上かかるケースもありますが、支払いを受けられるのは認容金額の1割のみです。反対に弁護士費用特約などを使って実際には弁護士費用を払っていないケースでも認容金額の1割は相手から支払われます。
「なぜ1割なのか?」と不思議に思うかも知れません。それは、裁判所としては「交通事故が発生した場合、損害額の1割程度の弁護士費用が発生するのは通常であり、事故との相当因果関係が認められる」と考えているからです。特に弁護士費用の領収証などの資料を提示する必要もありません。
交通事故で弁護士費用を求めたい場合には、訴訟で判決まで争えば認容額の1割については支払いが認められます。今後示談交渉や裁判を進める上での参考にしてみて下さい。