交通事故で請求できる「遅延損害金」とは

 

交通事故で加害者に損害賠償金を請求するとき、「遅延損害金」を加算できるケースとできないケースがあります。

 

遅延損害金とは、相手が支払いを遅延したために被害者に発生した損害に対する賠償金です。

 

今回は、交通事故で加害者に遅延損害金を請求できるケースと請求できないケース、遅延損害金の金額や計算方法について弁護士が解説します。

 

1.遅延損害金とは

遅延損害金とは、お金を支払わなければならない債務があるときに、期限までに支払わなかったことによって債権者に発生した損害を賠償するためのお金です。

たとえばお金を借りたとき、期日までに返済しなければ期日後支払を終えるまで遅延損害金が発生し続けます。

交通事故でも、加害者は被害者へ損害賠償金を支払わねばなりません。しかし示談交渉が長びいたり裁判が必要になったりすると、なかなか支払いが行われないものです。その場合、支払われなかった期間に応じて遅延損害金が賠償金に加算されます。

 

交通事故で加害者が被害者へ支払わねばならないお金は「不法行為にもとづく損害賠償金」です。これは、「不法行為時」においてすぐに支払わねばならないと考えられています。

そこで、不法行為時から実際に賠償金が支払われるまでの間、遅延損害金が発生し続けます。

 

2.遅延損害金の計算方法

交通事故の遅延損害金は、どのようにして計算されるのでしょうか?

2-1.遅延損害金の計算方法

遅延損害金の計算式は、以下の通りです。

「遅延している金額×遅延損害金の割合(年率)×遅延日数÷365日(うるう年なら365日)」

 

たとえば100万円を借りて、返済期日から30日間遅延し、遅延損害金の割合を15%と定めているケースであれば、遅延損害金は以下の通りです。

 

100万円×0.15×30日÷365日=12,329円

 

2-2.交通事故の場合の遅延損害金計算方法

交通事故の場合には、遅延している金額は「損害賠償金の全額」です。

遅延日数は、「交通事故のあった日から実際に賠償金を支払うまでの日数」です。

年率については、民法の定める法定利率をあてはめます。法定利率は、2020年3月31日までは年率5%となっています。(その後は法改正によって少なくとも3年間、年率3%となります)

 

2-3.交通事故の遅延損害金計算例

交通事故での賠償金元本が1,000万円、事故から支払いまでの日数が200日かかったケースでの遅延損害金

 

1,000万円×0.05×200÷365=273,973円

 

交通事故の場合、後遺障害が残ると元本が大きくなって遅延損害金の金額も高額になりやすいです。

 

3.遅延損害金を請求できるケース

交通事故の損害賠償金には遅延損害金が加算されると言いましたが、実は必ずしも支払いを受けられるとは限りません。むしろ多くのケースでは、遅延損害金は払われません。

なぜなら遅延損害金が支払われるのは、「損害賠償請求訴訟」を起こして「判決」によって加害者に支払い命令が出たケースだけだからです。

保険会社と示談交渉をして賠償金を支払ってもらう場合には、遅延損害金は払われません。調停やADRなどで解決する場合にも、遅延損害金は加算されません。訴訟を起こしても、途中で和解したケースでは遅延損害金は払われないのが通常です。

 

4.訴訟で判決を得るメリット

一般の方は、交通事故の示談が決裂して訴訟が必要になったと聞くと、「大変なトラブルになってしまった」と構えてしまうものです。「できれば示談で穏便に解決したい」と希望される方が圧倒的に多数でしょう。

 

ただ、訴訟で判決になったら「遅延損害金」が加算されますし、認容された損害賠償金の1割相当の「弁護士費用」も支払われます。

 

たとえば訴訟で解決までに2年がかかり、1,000万円の損害賠償金が認められた場合、遅延損害金100万円と弁護士費用100万円の合計200万円が加算された1,200万円の支払いを受けることが可能となります。もとの1,000万円と比較すると2割増しです。

このようなことを考えると、交通事故で訴訟を起こして判決を得ることにはデメリットばかりとは言い切れません。

 

交通事故トラブルでは、スピーディかつ有利な解決方法を目指す必要がありますが、ときには訴訟も視野に入れなければならないケースもあります。弁護士が状況に応じた適切な判断とアドバイスを行いますので、困ったときには是非とも一度、ご相談下さい。

 

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