交通事故に遭うと、入院看護が必要になるケースがあります。
親族に看護してもらったら、親族が仕事を休まねばならない状況も発生するでしょう。その場合、親族の休業損害を請求できるのでしょうか?
今回は親族が仕事を休んで被害者の看護をしたときの休業損害について、解説します。
1.親族の「休業損害」も支払われる
1-1.親族の休業損害は賠償金に含まれる
一般的に、親族が入院中の被害者に付き添った場合には「付添看護費用」として1日あたり6,500円程度が支払われます。
しかし親族が働いている場合、仕事を休んで付き添ったら6,500円を超える損害が発生するケースも多数あります。その場合、6,500円しか支払われないと、親族が不利益を受けます。
実はこのようなとき、親族は加害者に付添看護費用ではなく休業損害を請求できます。
親族の実際の給与額や収入額をもとに1日あたりの基礎収入を算定し、それをもとに付添日数分の休業損害の支払いを求めることが可能です。
1-2.親族の休業損害計算の具体例
たとえば直近3か月分の給料額が72万円のサラリーマンの夫が仕事を休んで交通事故に遭った妻に付き添ったとします。
その場合、1日当たりの基礎収入額は8,000円です。15日間付き添ったら12万円の休業損害を請求できます。
2.「付添看護費」との関係
一般的なケースでは親族が被害者に付き添ったら、1日あたり6,500円程度の付添看護費用が支払われます。上記のように親族に実際に発生した休業損害が支払われる場合、付添看護費用の6,500円はどうなるのでしょうか?
親族が付き添ったことについての損害や手当が「休業損害」として支払われたら、別途付添看護費用が支払われることはありません。同じ損害について二重取りすることになってしまうからです。
たとえば上記の具体例で夫が妻に付き添った場合、夫は1日あたり8,000円の休業損害を請求できますが、それ以上に6,500円をプラスすることはありません。親族が付き添った場合に請求できるのは「1日あたり6,500円」か「実際に発生した休業損害」の「どちらか高い方」となります。
3.親族の休業損害が高額な場合
親族が被害者に付き添ったとき、実収入を基準として休業損害を請求できますが「限度」があるので要注意です。
親族の休業損害は「本職の看護師に看護してもらった場合の金額」を超えることができません。親族が付き添うことによって本職の看護師の費用を超えるなら、親族ではなく本職の看護師に依頼して付き添ってもらうのが合理的だからです。
本職の看護師に依頼しないのは被害者側の自由ですが、その場合には休業損害全額ではなく本職の看護師にかかる費用まで減額されます。
具体的に「1日いくらまで」とはっきり定められているわけではありませんが、だいたい1日あたり1~15,000円くらいまでの範囲になるでしょう。
親族が高収入な方の場合、付き添ってもらっても全額の休業損害が出ない可能性が高くなります。
4.親族の休業損害が高額でも支払われる特殊なケース
親族が高収入でも、全額の休業損害が支払われるケースが例外的に存在します。それは「どうしてもその親族が付き添わなければならない特殊事情があるケース」です。
そういった事情がある場合、本職の看護師に看護を任せることができないので、親族が仕事を休んで看護して発生した休業損害全額と交通事故に因果関係が認められます。
たとえば小さな子どもが交通事故に遭い、母親がどうしても常時付き添わねばならないケースなどでは母親の休業損害が全額認められる可能性があります。
5.休業損害の計算に疑問を感じたら弁護士にご相談を
交通事故の休業損害計算の場面では、いろいろな法的問題が発生します。保険会社の提示する休業損害額が必ずしも適正なわけではありません。弁護士が示談交渉に対応することで、大幅に増額されるケースも多々あります。
休業損害や付添看護費用の計算で疑問を感じた場合には、どうぞ弁護士までご相談下さい。