重過失減額と過失相殺の違いについて

人身事故に遭うと、通常相手の自賠責保険から保険金が支払われます。ただし被害者に7割以上の過失があると「重過失減額」が行われて保険金の金額が減額されます。

 

重過失減額とはどういった制度なのか、一般的な「過失相殺」とどう違うのか理解しておきましょう。今回は重過失減額と過失相殺の違いについて、解説します。

 

 

1.重過失減額とは

重過失減額とは、被害者に一定以上の過失割合があるときに自賠責保険から支払われる保険金が減額される制度です。

 

被害者の過失割合が7割以上になると、保険金が2割~5割の範囲で減額されます。

減額割合は、以下のとおりです。

 

【後遺障害が残った事故、死亡事故】

被害者の過失割合

減額率

70%以上~80%未満

20%減額

80%以上~90%未満

30%減額

90%以上

50%減額

 

【傷害事故】

被害者の過失割合が70%以上になると、一律で20%減額されます。

 

なお損害額が20万円未満の場合には重過失減額が適用されません。

 

2.過失相殺とは

任意保険会社と示談交渉をするときには、被害者の過失割合に応じて「過失相殺」されます。

重過失減額と過失相殺は、何が違うのでしょうか?

2-1.減額割合が違う

重過失減額と過失相殺では、減額割合が大きく異なります。

過失相殺は、「過失割合に応じた割合」で減額されます。

たとえば被害者の過失割合が3割なら3割減額され、7割なら7割減額されます。

 

重過失減額の場合、被害者の過失割合がそのまま減額割合になるのではありません。傷害なら一律2割、後遺障害または死亡事故でも2割~5割の範囲内となります。重過失減額の方が減額割合は小さく、被害者に有利といえるでしょう。

2-2.重過失減額の場合、7割までなら減額されない

重過失減額と過失相殺は、被害者の過失が小さい場合の取扱いも異なります。

重過失減額の場合、被害者の過失割合が7割までなら減額されません。被害者に6割の過失があっても満額の保険金を受け取れます。

 

一方過失相殺の場合、被害者に少しでも過失割合があれば減額されます。たとえば被害者の過失割合が1割なら、賠償金が1割減らされます。

 

この意味でも、被害者にとっては重過失減額の方が有利といえるでしょう。

 

2-3.減額対象が違う

重過失減額と過失相殺は、減額対象が異なります。

重過失減額の対象となるのは「自賠責保険」の保険金です。これは人身事故の被害者への最低限度の補償を行うための保険金で、もともと金額は低めになっています。

 

一方過失相殺の対象になるのは、任意保険会社から支払われる保険金や加害者本人から支払われる賠償金です。保険会社基準または法的基準で計算され、物損事故でも支払われます。自賠責保険の保険金より高額になるケースが多数です。

 

3.自賠責保険を使った方が被害者に有利になるケース

一般的に、自賠責保険の保険金額は任意保険の保険金額より低くなります。また任意保険会社が自賠責保険の支払についても窓口になるため、被害者があえて自賠責保険へ保険金を請求するケースは多くはありません。

 

ただ被害者の過失割合が高い場合、自賠責保険の支払額の方が高額になる可能性があります。保険会社からの賠償金には過失相殺が適用されるため、大きく減額されてしまいます。一方自賠責の重過失減額では2割~5割の範囲内なので、減額度合いが小さくなるからです。

 

被害者の過失割合があまりに高いと、任意保険会社が治療費を出してくれないケースもあります。提示される示談金額は非常に小さくなるでしょう。そういったケースでは、被害者自身が自賠責保険へ保険金を請求した方が、高額な支払を受けられる可能性があります。

 

4.過失割合が高くなり、困ったら弁護士へ相談を

交通事故に遭ったとき、被害者の過失割合が高いと状況は不利になります。自賠責保険へ保険金を請求するなど、できるところから対処しましょう。また任意保険会社の主張する過失割合が必ずしも適正とは限りません。疑問や不満がある場合、まずは一度弁護士までご相談ください。

 

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