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交通事故の免責証書とは?示談書との違いや作成の注意点を弁護士が解説
交通事故で保険会社と示談交渉を進めていると「免責証書」の差し入れを求められるタイミングあります。
「免責証書」とはどういった書類なのか、法的効力や示談書との違い、作成する際の注意点を解説します。
1.免責証書とは
免責証書は、示談が成立したときに示談内容を明らかにする書類です。免責証書を差し入れると、示談がその内容で確定し、異なる主張は原則としてできなくなります。
この意味で、免責証書は「示談書」と同じ効果を持つといえるでしょう。
免責証書には、以下の内容が記載されます。
- 当事者名
- 保険会社名
- 事故年月日
- 事故の起こった場所
- 車のナンバー
- 示談金の金額
- 支払方法
- 振込先の口座
示談が成立すると、保険会社が免責証書を作成して被害者宛てに送付してきます。被害者が署名押印して返送すると正式に示談が成立し、1~2週間程度で示談金が振り込まれるのが一般的な流れです。
書式は保険会社によって異なり、示談が成立した時点で保険会社が送ってくるので被害者が自分で作成する必要はありません。
2.免責証書と示談書の違い
免責証書と示談書は似ていますが、異なる点もあります。
2-1.作成する人が違う
もっとも大きな違いは、作成者です。免責証書は「被害者のみが署名押印」するので被害者が作成する書類といえます。一方示談書は「被害者と加害者の双方が署名押印」して成立させるものです。
免責証書は被害者のみが作成、示談書は被害者と加害者が作成する、という違いがあります。
2-2.拘束される人が違う
免責証書と示談書では「書類によって拘束される人」が異なります。
示談書の場合、被害者と加害者の双方が署名押印して内容に拘束されます。加害者がいったん示談書に署名押印したら、期日までに支払をしなければなりません。支払わなければ被害者は裁判を起こして賠償金を請求できます。
免責証書の場合、内容に拘束されるのは「署名押印した被害者のみ」です。加害者が支払をしなくても「免責証書違反」になりません。実は免責証書を作成しても、保険会社や加害者に支払を強制する効果はないのです。
この点は、示談するときに非常に重要なポイントとなるケースもあるので、必ず押さえておいて下さい。
3.免責証書を作成する際の注意点
免責証書を作成するときには、以下の3点に注意しましょう。
3-1.当事者同士で示談するときには適さない
1点目は、「免責証書は当事者同士で示談する場合には適さない」ことです。
先に言いましたが、免責証書は「加害者を拘束しません。」被害者が「定められた金額を払ってもらったら他の請求はしません」と表明し、相手の責任を免除するだけです。
保険会社が相手の場合、そういった書き方でも保険会社が必ず支払いをするので問題ありませんが、相手が本人の場合にはそうはいきません。被害者が免責しただけでは相手から支払われる保障がありません。
必ず通常の示談書(当事者双方が署名押印するもの)を作成し、相手にも署名押印させましょう。
3-2.内容が間違っていないか
保険会社から免責証書を送ってこられたとき、保険会社が先に内容を書き入れている場合があります。受け取ったら、間違いが無いかしっかりチェックしましょう。示談金額、当事者名の表示などが違っていたら訂正を求めてください。
自分で書き入れる場合には、間違えないように慎重に対応しましょう。
3-3.賠償金の金額は適正か
最後に提案された「賠償金の金額が適正か」確認しましょう。特に後遺障害が残ったケースや治療期間が長引いたケースでは要注意です。
保険会社が提示する金額は、「保険会社基準」で計算されているため、慰謝料や休業損害が法的基準と比べて著しく低くされる可能性があります。そんなとき、気づかずに免責証書にサインしてしまったら、本来より受け取れる賠償金が少なくなってしまいます。
法的な基準に照らして適正かどうか確認してから免責証書に署名押印した方が安心といえるでしょう。
弁護士にご相談いただけましたら、事案内容をおうかがいして弁護士基準による適正な賠償金額を算定させて頂きます。千葉で交通事故に遭われて免責証書にサインを求められた方は、お気軽にご相談ください。
交通事故で「念書」を差し入れる際の注意点
交通事故に巻き込まれると、相手から「念書」を要求されるケースがあります。
安易に念書を差し入れると、後々大きなトラブルに発展したり不利益を受けたりするおそれがあるので、注意しましょう。
この記事では、そもそも「念書」とは何なのか、どこまでの法的効力が認められるのか弁護士が説明します。
1.念書とは
念書とは、何らかの約束ごとの内容を明らかにするため、一方当事者が他方当事者へ差し入れる書類です。たとえば交通事故の場合「賠償金として100万円を支払います」などと書いて、加害者が被害者へ念書を差し入れるケースがあります。
念書は契約書や合意書ではありません。契約書や合意書を作成するときには、細かい支払条件なども定めた上で当事者双方が署名押印します。これに対し念書の場合、内容は「支払います」などの簡単なものとなりますし、署名押印するのも一方当事者だけです。
交通事故に遭ったとき、相手から「ここで念書を書いてくれ」などと言われ、念書を書いて差し入れてしまう方がいます。しかし安易な気持ちで念書を書くと、後でトラブルになる可能性もあるので断る方が無難です。
2.念書の法的効力
念書は契約書や合意書ではない簡単な書類なので、法的効力がないと考える方もおられます。
しかし場合によっては念書による法的請求も認められます。法律上、契約は「口約束」によっても成立すると考えられているからです。念書に「100万円支払います」と書かれていれば、その時点で「100万円を支払う契約が成立した」証拠になるでしょう。
後に相手が念書を根拠に100万円請求してきたら、払わねばならない可能性があるのです。
この効果を知れば、簡単には念書を差し入れるべきでないと理解して頂けるでしょう。
3.交通事故現場で念書を差し入れるリスク
交通事故に遭ったとき、相手から要求されるままに念書を差し入れると、どういった問題が発生するのでしょうか?
3-1.必要以上の賠償金を請求される
交通事故で相手に損害を発生させてしまったら、賠償しなければなりません。ただ賠償の範囲は法的に決まっており、それを超える支払いは不要です。
しかし念書によって必要以上の支払いを約束してしまったら、その金額を払わねばならない可能性があります。
3-2.保険金の支払いがスムーズに進まない
交通事故の賠償金は、通常加入している任意保険会社が支払います。ただ保険会社は定められた基準の範囲内でしか支払をしません。当事者が勝手に念書で約束した金額を負担してくれるわけではないのです。
自己判断で念書を取り交わすと、保険会社からの保険金支払いがスムーズに進まなくなる可能性もありますし、最終的には保険金で足りない分を自腹で支払わねばならないリスクも発生します。
事故現場での念書差し入れには高いリスクがあるので、相手から求められても作成すべきではありません。
4.念書を求められたときの対処方法
事故現場で相手から念書を求められたら、以下のように対応しましょう。
4-1.保険会社に任せるので書けない、と断る
まずは「賠償金の支払は保険会社に任せるので、私から念書は書けません」と言って断りましょう。
4-2.書く場合には「金額」を書かない
相手がどうしても納得せず書かざるを得ない場合「金額を書かない」のが鉄則です。「修理費用(治療費)は保険から定められた範囲でお支払いします」などと書きましょう。
4-3.「賠償問題は保険会社に任せる」と書く
「賠償問題を保険会社に任せる」ことを明記するのもポイントとなります。
このように記載しておけば、相手が直接請求する根拠にはなりませんし、保険会社が対応しにくくなる危険もなく、スムーズに保険会社へ対応を任せられます。
たとえば「賠償問題の対応は全面的に保険会社に任せます」などと書いておくと良いでしょう。
交通事故現場で相手から念書や誓約書などの書面の差し入れを求められても、基本的には応じるべきではありません。困ったことがあれば、一度弁護士までご相談ください。
示談書を公正証書にすべきケースと作成方法について
交通事故で加害者側と示談するとき、必ずしも示談書を「公正証書」にする必要はありません。
ただし状況によっては、公正証書作成を強くお勧めする場面があります。
今回はそもそも公正証書とはどのようなものなのか、示談書を公正証書にすべきケースや作成方法について、千葉で交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士が解説します。
1.公正証書とは
公正証書とは、公務員の1種である「公証人」が職務として作成する公文書です。
一般の民間人が作成した文書を比べると信用性が非常に高く、公証役場で原本が保管されるため紛失や書き換えなどのリスクもありません。
また公正証書には「強制執行認諾条項」をつけることが可能です。これをつけておけば、金銭債務の債務者が支払いをしなかったとき、債権者は公正証書を使って債務者の財産の差押ができます。
たとえばお金を貸したときの「金銭消費貸借契約書」を公正証書にしておくと、借主が支払わなかったときに貸主がすぐに借主の給料や財産を差し押さえて債権回収できます。
2.交通事故示談で公正証書を作成するメリット
交通事故の示談で公正証書を作成するメリットは、公正証書を作成すると「示談金が不払いになったときに回収が容易になる」ことです。
被害者と加害者が話し合いをして示談が成立しても、加害者が約束通りに支払ってくれるとは限りません。分割払いの約束をした場合などには、途中で不払いになってしまうリスクも高くなります。
そんなとき、示談書が公正証書になっていれば被害者は裁判をせずに直接加害者の財産を差し押さえられます。もしも公正証書ではない単なる当事者間の示談書しかなければ、いったん裁判をしてから差押えをしなければならないので手間がかかりますし、その間に加害者が財産隠しをするおそれも高くなります。
こういったリスクを考えると、被害者としてはできるだけ示談書を公正証書にしておく方が安心といえるでしょう。
3.交通事故で公正証書を作成すべきケース
交通事故が発生したとき、必ず公正証書が必要なわけではありません。
公正証書を作成すべきケースは以下のような場合です。
- 加害者が無保険(任意保険に加入していない)で、被害者と加害者が直接交渉して示談した
- 示談金の支払い方法が分割払いになっている
相手が保険会社の場合には不払いとなる可能性がほとんどなく、公正証書を作成する必要はありません。一括払いよりも分割払いの方が不払いのリスクが高まるので、公正証書を作成する必要性が増します。
4.公正証書を作成する方法
公正証書を作成するには、できあがった示談案をお近くの公証役場に持ち込んで、公正証書の作成を公証人に依頼する必要があります。
公証人と打ち合わせを行って作成日を決め、当日被害者と加害者の双方が公証役場に行けば公正証書の示談書を作成してもらえます。
当日、本人が出席するのが困難であれば代理人に任せることもできます。
公証役場は全国各地に存在しており、どこの役場を利用してもかまいません。事故の加害者と話し合ってもっとも都合の良い場所を選択しましょう。
http://www.koshonin.gr.jp/list
5.公正証書を作成する際の注意点
示談書を公正証書にする場合、以下の2点に注意が必要です。
5-1.相手の了承が必要
公正証書を作成するには、加害者の了承が必要です。当日は本人確認書類をもって公証役場に来てもらわねばなりません。強制はできないので、相手の理解を得られるよう説明と説得をしましょう。
5-2.費用がかかる
公正証書を作成するには費用がかかります。金額は示談金の額によって変動しますが、1~5万円程度となるケースが多いでしょう。手数料は、公正証書の作成日に現金で公証人に支払う必要があります。
どちらが費用を負担するのかについても加害者と話し合って決めておきましょう。
加害者がどうしても費用負担を嫌う場合、被害者側が全額負担してでも公正証書を作成しておいた方が安心です。
加害者が無保険の場合、示談が成立しても支払いが行われないリスクが発生します。確実に支払いを受けるための手段の1つとして、公正証書を活用しましょう。
交通事故の「示談書」と「承諾書(免責証書)」の違い、作成時の注意点
交通事故後、加害者の保険会社との示談が成立したら「承諾書(免責証書)」や「示談書」の作成を求められるのが通常です。
承諾書(免責証書)と示談書は何が違うのか、作成の際にどういったことに注意すれば良いのか弁護士が解説します。
1.示談書とは
示談書は、不法行為の加害者と被害者が損害賠償について話し合い、合意できたときに作成する書面です。
交通事故が発生すると、被害者と加害者が示談を進めて賠償金の金額や支払い方法を決定します。お互いに合意ができたらその内容を証明するために「示談書」を作成します。
示談書は「契約書」と同じような効果を持つ書面であり、当事者間で成立した約束の内容を明らかにするものです。そこで被害者と加害者の「双方」が署名押印する必要があります。
2.承諾書、免責証書とは
承諾書は、被害者が加害者に対して「損害賠償の方法についてはこの内容で承諾する」と表明し差し入れる書類です。免責証書も承諾書とほとんど同じで、被害者が加害者に対し「損害賠償の方法についてはこの内容で了承し、他については責任を免除する」ことを示すものです。
このように、承諾書や免責証書は「被害者が加害者に対して一方的に承諾・免責する書類」であり、お互いに約束したことを証明する「示談書」とは異なります。
承諾書や免責証書に署名押印するのは「被害者のみ」であり、加害者は作成に関わりません。
3.示談書と承諾書・免責証書の違い
示談書と承諾書・免責証書の違いは「誰が書類を作成するか」です。
示談書の場合には示談の当事者双方が書面を作成しなければならないので、被害者と加害者の双方が署名押印します。
一方承諾書や免責証書の場合には被害者のみが書面を作成するので、署名押印するのは被害者のみです。被害者さえ署名押印すれば書面が成立するので、作成の手間がかからないメリットがあります。
効果としては、交通事故の損害賠償においては「示談書」も「承諾書・免責証書」もほとんど同じです。
4.保険会社が関与すると承諾書、免責証書が作成されるケースが多い
交通事故といえば「示談書」を作成するイメージがあるかもしれませんが、保険会社との示談が成立したときにはむしろ「承諾書」や「免責証書」を作成するケースが多くなっています。
電話などで保険会社の担当者と話し合いをして合意ができたら、保険会社が被害者宛に「承諾書」や「免責証書」を送付し、署名押印の上返送するよう要求してきます。被害者が書類に署名押印をして返送すると示談が成立し、保険金が支払われる流れです。
一方、弁護士が関与して示談を成立させる場合には、被害者と加害者の双方がお互いに署名押印をする「示談書」を作成するのが一般的です。
5.示談書、承諾書、免責証書を作成する際の注意点
保険会社が承諾書や免責証書、示談書などの書類を送ってきたとき、安易に署名押印すべきではありません。
いったん署名押印してしまったら、後に撤回するのは極めて困難となるからです。まずは書かれている内容に間違いがないか、本当に示談してしまって問題ないか慎重に確かめましょう。
弁護士に依頼すると賠償金が大幅に増額される事例が多い
被害者が自分で保険会社と示談交渉を進める際、保険会社から提示される示談金の金額は、必ずしも適正とは限りません。現実には弁護士が法的な基準で計算し直したら賠償金額が大幅に増額されるケースが非常に多くなっています。
また後遺障害が残らない前提で示談しようとしているケースでも、弁護士が記録を精査し直して後遺障害認定の手続きを進めると、むちうちなどの後遺障害が認定されて大幅に賠償金が増額される可能性もあります。
当事務所では、弁護士が保険会社による提案内容が妥当かどうか判定するサービスを行っております。保険会社から承諾書や免責証書、示談案が送られてきたら、署名押印する前にご相談下さい。
示談をやり直せるケースとは
交通事故でいったん示談が成立すると、基本的にやり直しはできません。ただし一定のケースでは示談を取り消せますし、合意後に発生した損害については示談をやり直せる可能性もあります。
今回は交通事故の示談をやり直せるケースについて、千葉の弁護士が解説します。
1.詐欺や強迫によって示談させられたケース
いったん示談書に署名押印して相手に渡したら、基本的にはやり直しができないと考えましょう。示談は1種の和解契約であり、契約が成立した以上どちらかの一方的な都合で取り消したり解除したりできないからです。
ただし示談が相手の「詐欺」や「強迫」によって行われた場合、示談の「取消」が可能です。
1-1.詐欺
詐欺とは相手をだますことです。和解内容に関する重大な事項について相手から虚偽を述べられてだまされて示談書に署名押印してしまった場合、示談を取り消してやり直せる可能性があります。
1-2.強迫
強迫とは相手を脅して強要することです。「示談書に署名押印しないと殴り倒すぞ」「家を燃やすぞ」「家族を傷つけるぞ」などと脅されて仕方なく示談書に署名押印した場合、示談を取り消してやり直しができます。
2.錯誤に陥っていたケース
示談時、和解内容や前提となる重要な事項について誤解していた場合にも、示談を取り消してやり直しができる可能性があります(改正民法95条1項)。
ただし「法的な基準を適用すればもっと多く請求できることを知らなかった」としても錯誤は認められません。重大な事項について勘違いしていたとしても「重過失」があれば取消は不可能です。
交通事故示談で錯誤による取消を主張するハードルは高くなるので、示談の際にはしっかり内容を理解し納得した上で署名押印しましょう。
取消が必要
詐欺や強迫によって示談させられた場合や錯誤によって示談してしまった場合、示談をやり直すには「取消」が必要です。何もしなければ示談は有効なままなので注意しましょう。(なお以前は錯誤の場合「無効」となったので取消不要でしたが、法改正により錯誤がある場合にも「取消」が必要になっています。)
内容証明郵便などを使って示談の取消通知書を送るようお勧めします。
3.示談内容が公序良俗に反する場合
示談内容が公序良俗に反する場合には、示談が無効になります。たとえば愛人になるのと引換に示談金を払ってもらう約束をした場合や、損害額が僅少なのに暴利ともいえる高額な賠償金を設定した場合などには公序良俗違反と判断される可能性があります。
4・示談時には予測できなかった後遺障害が発生したとき
示談時には予測できなかった後遺症が示談後に発生した場合、後遺障害に関する賠償金(慰謝料や逸失利益、再手術の費用など)を示談金とは別途請求できる可能性があります。後遺障害の損害については示談内容に含まれていないと考えられるためです。
ただし示談後に後遺障害の損害賠償金を請求するには、以下のような要件を満たす必要があります。
- 当初にすべての損害を把握しがたい交通事故であった
事故当時には全容を把握できないような、一定以上の重大な交通事故であることが要求されます。
- 早急に少額の示談金によって示談が行われたこと
事故後すぐに、少額の賠償金によって示談が成立した事情が必要です。
- 示談時に後遺障害の発生を予測できなかったこと
示談当時に後遺障害が発生する兆候がまったくなく、当事者によって予測不可能であった状況が必要です。
5.示談内容に納得できない場合、弁護士に相談を
示談するときには「基本的に後に取消しややり直しはできない」ことを前提に、慎重に判断して示談書に署名押印すべきです。示談してしまって良いものか、迷いがあるなら弁護士が示談案の内容を精査いたします。
また万一「示談後に予想外の痛みや不調が発生した」「相手から強迫されて無理に示談書に署名押印させられた」などの事情があれば、お早めにご連絡ください。弁護士から相手に通知を送ることで示談のやり直しができたり追加の賠償金を請求できたりする可能性があります。
当事務所では千葉県周辺で交通事故被害者のサポートに力を入れておりますので、お困りの方は、お気軽に当事務所を頼っていただけますと幸いです。
交通事故の示談書の効果
交通事故に遭うと、事故の相手と「示談交渉」を進める必要があります。
示談が成立したときに作成する書面が「示談書」です。
今回は「示談書」の意味や効果、示談書に署名押印する際の注意点について、千葉の弁護士が解説します。
1.示談書とは
「示談書」とは被害者と加害者が「示談交渉」を行い、合意できたときに作成する書面です。
示談交渉とは、不法行為の被害者と加害者が話し合いをして損害賠償の方法を決定することです。話し合いで損害賠償の方法が決まって合意ができたら、その合意内容を「示談書」によって明確にします。
示談書は契約書と同じような効果を持ちます。いったん示談書を作成したらお互いがその内容に拘束されるので、後に異なる要求をしても基本的に認められません。
2.示談書の効果
示談書ができあがると、以下のような効果があります。
2-1.示談書に定めた以上の賠償金を請求できない
被害者の立場としては、示談書に定めた以上の金額を請求できなくなる効果が重要です。
示談書でいったん賠償金の金額が決まったら、後に「これでは足りない、もっと払ってほしい」と思っても不足分を要求できません。示談書に署名押印する前に、「本当に適正な示談金額になっているか」きっちり検討する必要があります。
2-2.示談書で約束した支払いを受けられなかったら裁判や取り立てが可能
示談書には法的な効力が認められます。示談書を作って約束したのに相手が支払いをしなければ、示談書を証拠として訴訟を起こせます。判決が出ても相手が支払いをしなければ、相手の預貯金や給料等を差し押さえることも可能です。
また示談書を公正証書にしておけば、訴訟をしなくても差押えと取り立てができます。
2-3.紛争の防止
示談書を作成すると、当事者が後に「やっぱり不足していた」「払いすぎたから返してほしい」などの蒸し返しの主張をできなくなります。示談書には「終局的にトラブルを解決できる効果」があります。
3.免責証書、承諾書との違い
保険会社と示談するとき、保険会社から「示談書」ではなく「免責証書」や「承諾書」が送られてくるケースがよくあります。
示談書と「免責証書」「承諾書」とは何が異なるのでしょうか?
3-1.書面の性質
示談書は「当事者間の合意」を明らかにする書面です。
一方免責証書や承諾書は、被害者が加害者に対し「損害賠償の方法は以下の通りでかまいません」と通知する書面です。被害者が「ここに書かれていない負債は『免責』します」「損害賠償の内容はこの内容で『承諾』します」と意思表示するので「免責証書」「承諾書」といわれます。
つまり免責証書や承諾書の場合「被害者から加害者への一方的な意思表示」を内容とし、加害者側の意思は入りません。双方の合意である示談書とは書面の性質が異なります。
3-2.双方が署名押印するかどうか
示談書の場合、被害者と加害者の双方が署名押印してはじめて効果が発生します。「双方当事者の合意内容」を明らかにする書面だからです。一方免責証書や承諾書は「被害者からの一方的な意思表示」なので、被害者しか署名押印しません。
3-3.交通事故示談における効果はほとんど同じ
示談書も免責証書も、交通事故示談における効果はほとんど同じです。
どちらにしても被害者が署名押印して保険会社に差し入れれば保険会社から速やかに示談金の入金が行われます。
4.示談書に署名押印する際の注意点
示談書に署名押印する際には、以下の点に注意してみてください。
4-1.撤回は難しい
いったん示談書に署名押印すると、よほどの事情がない限り撤回や取消はできません。示談書に書かれた内容が確定的に有効になってしまうので、署名押印前に、本当に適正な内容になっているか慎重に検討すべきです。
4-2.保険会社からは低額な提示を受けるケースが多い
相手が保険会社の場合、示談書、免責証書や承諾書は保険会社から送られてきます。その際「署名押印して返送してください。そうすれば示談金が振り込まれます」と案内されるでしょう。
しかし保険会社からの提示金額は、法的な相場と比べて低額になっているケースが多いので要注意です。
そのまま署名押印すると損をしてしまうリスクが高くなるので、事前に弁護士に相談して法的な相場を確かめておくようお勧めします。
当事務所では交通事故を多数取り扱ってきた弁護士が、適正な賠償金額の算定を承っております。千葉で交通事故に遭われて示談書にサインして良いか迷っている方がおられましたら、お気軽にご相談下さい。
無保険の相手と示談書を作成するときの注意点
交通事故の相手が任意保険に入っていない場合、賠償金の支払を受けるには相手と直接話し合う必要があります。
当事者同士で示談して示談書を作成する際には、保険会社が関与する事案以上にトラブルが発生しやすく注意が必要です。
今回は無保険の相手と示談する場合に押さえておくべき注意点を解説します。
1.相手に資力がなく「支払えない」可能性がある
保険会社が相手なら、発生した損害がどんなに高額でもきちんと一括で支払われます。
「お金がない」からといって賠償金が支払われない状況はありえません。
しかし相手が本人の場合、そうはいきません。被害者に後遺障害が残ったり死亡したりして高額な賠償金が発生したときなど、相手に支払い能力がなく支払いを受けられない可能性があります。
示談の際、相手がどうしても一括で支払えない場合には「分割払い」を認めるなどの対応が必要です。
2.示談しても相手が支払わない可能性がある
保険会社が相手の場合、約束した示談金が支払われないことはありえません。通常、示談すれば1週間程度の間に指定した振込先に一括で示談金(保険金)が支払われます。
しかし相手が本人の場合、そうはいきません。示談して支払いを約束しても、守られない可能性があります。特に長期の分割払いにした場合、途中で支払われなくなるリスクが高くなり、要注意です。
3.無保険の相手と示談するときのポイント
無保険の相手と示談するときには、以下のような対応が重要です。
3-1.期限の利益喪失約款をつける
相手が賠償金を一括で支払えない場合、やむをえず分割払いを認めるべき状況が発生します。その際には、必ず「期限の利益喪失約款」をつけましょう。
期限の利益とは、「分割払いできる利益」です。
相手がきちんと約束通りに分割払いを続ければ問題ないのですが、支払いを滞納された後もずっと分割払いが認められると不都合が発生します。分割払いが認められる限り、期限が到来した分しか支払い請求できないからです。
そこで2~3回分滞納したら、その時点で残金の一括請求できるように取り決めておきます。それが「期限の利益喪失約款」です。
無保険の相手に分割払いを認める場合、必ず「2回分以上滞納した場合、期限の利益を喪失し、そのときの残金を一括払いする」と示談書内に定めておきましょう。
3-2.必ず公正証書にする
無保険の相手と示談するときには、相手が不払いを起こしたときの対処を考えておかねばなりません。
具体的には、示談書を公正証書にするようお勧めします。
公正証書とは、公務員である公証人が作成する公文書です。公正証書で金銭支払いの約束をするときに「強制執行認諾条項」をつけておけば、相手が不払いを起こしたときにすぐに相手の給料や預貯金、不動産などの資産を差し押さえることができます。
もし公正証書がなかったら、「損害賠償請求訴訟」を起こさないと差押えができないので大変な手間となります。
無保険の相手には不払いのリスクがつきまとうので、必ず公正証書を作成しておきましょう。
3-3.公正証書の作成方法
公正証書を作成するには、先に相手と示談を成立させておく必要があります。公証役場では示談交渉の代行や調整はしてくれません。
相手と話し合って合意した上で、お近くの公証役場に書面作成を申し込みましょう。
全国の公証役場一覧
http://www.koshonin.gr.jp/list
すると担当の公証人と公正証書の作成日時が決まります。指定された日時に必要書類を持って当事者2名が公証役場に行けば、公正証書による示談書を作成してもらえます。
その後、相手が約束通り支払いをしないときには、2回分の支払いを滞納した時点で残金と遅延損害金の一括請求ができますし、給料や預貯金などを差し押さえて回収できます。
無保険の相手との示談交渉は難航するケースも多いですし、示談成立後も不払いのリスクがつきまといます。不利益を避けるためには法律の専門知識を持った弁護士によるサポートが必要です。
千葉で交通事故に遭い、相手が無保険などでお困りの方はお気軽に当事務所までご相談下さい。