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逸失利益が認められにくい後遺障害と否定されたときの対処方法

2019-07-01

交通事故で後遺障害が残ったら、基本的に「逸失利益」が発生します。

しかしケースによっては後遺障害が残っても逸失利益を否定されます。

逸失利益を否定されやすい後遺障害としては、外貌醜状や脚の短縮障害、歯の後遺障害などがあります。

 

以下では逸失利益を否定されやすい後遺障害と、逸失利益を否定されたときの対処方法について、解説します。

 

1.外貌醜状

交通事故で「外貌醜状」の後遺障害が残ったとき、保険会社は「逸失利益を払わない」と言ってくるケースが多々あります。

外貌醜状とは、顔や首、頭などの日常的に露出する部分にあざや傷跡が残ったときに認定される後遺障害です。外貌醜状の場合、傷跡が残るだけで身体的な機能の低下がないので、精神的苦痛はあっても労働能力が失われませんし、減収が発生しないケースも多々あります。そこで、後遺障害によっても失われた利益がないとして、逸失利益が否定されやすいのです。

 

ただしモデルや俳優などの人前に出る仕事の場合には、外貌醜状によって仕事が制限されるので逸失利益が認められます。また営業マンなどのケースでも、仕事をとりにくくなる可能性が高く、逸失利益が認められる可能性があります。

 

また外貌醜状で逸失利益を否定された場合には、その分「後遺障害慰謝料」を増額してもらえるケースが多数です。

 

2.軽度の脚の短縮傷害

交通事故で骨折すると、一方の脚が他方の脚より短くなってしまうケースがあります。その場合「下肢の短縮障害」として後遺障害認定されます。

ただ、片脚が1センチ以上3センチ未満短縮しただけの13級8号の場合、労働能力に影響しない職種も多くなってきますので、保険会社が逸失利益を否定するケースが多数です。

 

ただしとび職やスポーツ選手など、脚が少し短くなったことが大きく仕事に影響する場合も考えられ、そういったケースでは逸失利益を請求することが可能です。

 

3.歯の後遺障害

交通事故で顔面を負傷すると、歯を欠損するケースも多数あります。専門的な用語では「歯牙障害」と言います。

交通事故で歯がなくなっても、インプラント治療や入れ歯などを利用すれば物を噛んで飲み込んだりすることは可能ですし、労働能力にも影響しないことが多いでしょう。そこで保険会社は逸失利益を否定してくるケースが多数です。

ただし格闘家やスポーツ選手、力仕事をする方など、歯を食いしばる必要のある仕事の場合には大きな支障が出る場合があり、逸失利益が認められます。

 

4.味覚、嗅覚の後遺障害

交通事故で顔面を負傷したり脳に損傷が及んだりすると、味覚や嗅覚が失われてしまうケースがあります。その場合にも、後遺障害認定されます。

ただ、一般的な事務職などの場合、味覚や嗅覚に障害が残っても仕事に支障がないので逸失利益を否定されやすいです。

ただし調理師には味覚と嗅覚が必須ですし、研究職や芸術家、食品のバイヤーなどでもこれらの感覚を必要とする方がおられます。

味覚、嗅覚の喪失によって仕事をしにくくなったのであれば逸失利益を請求できる可能性があります。

 

5.保険会社が逸失利益を否定した場合の対処方法

交通事故後、後遺障害が残ったのに保険会社が逸失利益を否定する場合には、訴訟を起こすと逸失利益が認められる可能性があります。

保険会社が相場より低い労働能力喪失率を主張する場合にも、裁判によって労働能力喪失率が変更されて逸失利益が増額されるケースも多々あります。

訴訟で逸失利益を否定されても、その分後遺障害慰謝料を増額して全体的に金額が調整されるケースが珍しくありません。

 

後遺障害が残ったとき、保険会社から逸失利益を否定されても、その言い分を鵜呑みにすべきではありません。弁護士にご相談いただけましたら正しい考え方をお伝えしますので、一人で悩まずにお気軽にご相談下さい。

逸失利益の計算例 高額算定されるケースとは

2019-06-24

交通事故によって発生する損害の中で「逸失利益」はもっとも高額になる可能性が高くなっています。

具体的にはどのくらいの数字になるのか、高額になるのはどういったケースなのでしょうか?

 

今回は後遺障害逸失利益の計算例とともに、逸失利益が高額になるケースについてご説明します。

 

1.後遺障害逸失利益の計算式

後遺障害逸失利益を計算するときには、以下の計算式を使います。

 

  • 後遺障害逸失利益=事故前の基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数分のライプニッツ係数

 

詳しくは以下の記事でご説明しています(逸失利益が認められるケースと認められないケース 相場の金額について

 

以下ではこれをあてはめて、具体的な計算例を示します。

 

1-1.後遺障害1級、事故前の年収が400万円のサラリーマン

事故当時35歳のサラリーマンが交通事故に遭い、後遺障害1級となったとしましょう。

事故前の収入は400万円とします。

この場合、後遺障害逸失利益は以下の通りです。

 

400万円×100%×15.803=6321万2千万円

 

事故前の年収は400万円なので、そのまま適用します。

後遺障害が1級なので労働能力喪失率は100%です。

15.803というのは、35歳(就労可能年数32年)に対応するライプニッツ係数です。

 

そこでこの被害者は加害者に対し、後遺障害逸失利益として6321万2千万円を請求できます。

 

1-2.後遺障害7級、事故前の年収が500万円の自営業者

次に事故前の年収が500万円、事故当時28歳の自営業者が交通事故に遭って後遺障害7級になったとしましょう。

この場合、後遺障害逸失利益は以下の通りです。

 

500万円×56%×17.017=4764万4760円

 

事故前の年収は500万円なので、そのまま適用します。

後遺障害が7級なので労働能力喪失率は56%です。

28歳(就労可能年数39年)のライプニッツ係数は17.017なので、これを適用します。

すると、後遺障害逸失利益は4764万4760円となるので、この被害者は加害者に対し、逸失利益として上記の金額を請求できます。

 

1-3.後遺障害12級が認定された33歳の主婦

33歳の主婦が交通事故に遭って12級の後遺障害が残ったとしましょう。事故発生日は2018年10月1日とします。この場合、後遺障害逸失利益の計算式は以下の通りです。

382万 6300円×14%×16.193=867万4298円

 

382万6300円というのは、2018年度の全年齢の女性の平均賃金です。主婦の場合、具体的な収入がないので平均賃金を使って基礎収入を算定します。

後遺障害12級の労働能力喪失率は14%なので、こちらをあてはめます。

33歳なので、就労可能年数である34年に対応するライプニッツ係数である16.193を適用します。

すると、逸失利益としては867万4298円となるので、この被害者は相手方に逸失利益として上記の金額を請求できます。

 

2.逸失利益が高額になる事例

交通事故の被害者の方は「交通事故の損害賠償と言えば慰謝料」と思っていることが多々ありますが逸失利益は慰謝料とは別に認められますし、多くのケースで慰謝料より高額になります。

逸失利益が認められると交通事故の賠償金が大きく上がります。

 

中でも逸失利益が高額になりやすいのは以下のようなケースです。

  • 事故前の年収が高い

被害者の事故前の年収が高い場合、基礎収入が上がるので逸失利益は高額になります。

  • 後遺障害の等級が高い

後遺障害の等級が高いほど労働能力喪失率が高くなるので、逸失利益が高額になります。

  • 事故当時の年齢が低い

事故当時の年齢が低いと逸失利益が認められる期間(就労可能年数)が長くなるので逸失利益は高額になりやすいです。ただし年齢が低いとその分収入も低いケースが多くなるので、必ずしも年齢の高い人より高額になるとは限りません。

 

より高額な逸失利益を支払ってもらうには、高い等級の後遺障害認定を受けること、基礎収入を高めに認定してもらうことが重要です。

 

交通事故の示談交渉を進める際、後遺障害認定を受けていても相手の保険会社から逸失利益の減額を主張されたり否定されたりする例があります。そのようなとき、弁護士が示談交渉を代理したり裁判を起こしたりすると高額な逸失利益が認められる可能性もあります。

逸失利益の計算について不明な点がありましたら、お気軽に弁護士までご相談下さい。

後遺障害逸失利益が認められるケースと認められないケース、相場の金額について

2019-06-17

交通事故で後遺障害が残ったら、加害者に「逸失利益」を請求できる可能性があります。

特に重症のケースでは逸失利益が非常に高額となり、慰謝料をはるかに上回る金額が支払われるケースも多々あります。

 

今回は、交通事故で逸失利益が認められる場合と認められない場合、相場の金額について、ご説明します。

 

1.そもそも逸失利益とは

後遺障害逸失利益とは、交通事故の後遺障害により「労働能力」が低下して得られなくなった将来の収入です。

交通事故で後遺障害が残ると、身体のさまざまな部分が不自由になり、それまでのようには働けなくなって「減収」が発生します。

後遺障害は基本的に一生治らないので、生涯にわたる減収分を「交通事故によって発生した損害」として加害者に請求できるのです。それが逸失利益(失われた利益)です。

 

逸失利益は、基本的に「就労可能年数」の分が認められます。就労可能年数とは、一生のうち「働ける年数」です。人は死ぬまで働き続けられるわけではないので、逸失利益は働ける年数に制限されます。

一般的には就労可能年数は「67歳まで」と考えられています。

 

2.逸失利益が認められるケースと認められないケース

交通事故の被害に遭っても、すべての被害者が逸失利益を請求できるわけではありません。

被害者によって逸失利益が認められるケースと認められないケースがあります。

2-1.逸失利益が認められる被害者

  • 事故前に実際に働いていた人

事故前に働いて収入を得ていた人は、後遺障害によって減収が発生するので逸失利益が認められます。会社員や公務員、自営業者などが典型例です。

  • 家事労働者

主婦や主夫などの家事労働者の場合にも、家族のために行っていた家事労働に経済的な価値があると考えられるので、労働者と同様に逸失利益が認められます。

  • 子どもや学生

子どもや学生は、実際に働いて収入を得ていませんが、将来職に就いて収入を得る蓋然性が高いと考えられるので逸失利益が認められます。

 

2-2.逸失利益が認められない被害者

以下のような人には、逸失利益が認められません。

  • 無職無収入

無職無収入の方は後遺障害が残っても収入が減収することがないので、逸失利益が認められません。生活保護受給者の場合にも、保護費は「収入」ではありませんし後遺障害が残っても保護費は減額されないので逸失利益を請求できません。

  • 不労所得

不動産や株式などの不労所得で生活している人は、労働能力が低下しても減収が発生しないので逸失利益を請求できません。年金生活者も同様です。

 

3.逸失利益の計算方法

逸失利益の計算式は以下の通りです。

  • 逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

 

基礎収入は、事故前に実際に得ていた収入です。主婦や主夫、子どもなどの場合には賃金センサスの平均賃金を使って計算します。

 

労働能力喪失率は、後遺障害の等級ごとに標準となる数値が定められています。

1級       100%

2級       100%

3級       100%

4級       92%

5級       79%

6級       67%

7級       56%

8級       45%

9級       35%

10級     27%

11級     20%

12級     14%

13級     9%

14級     5%

 

ライプニッツ係数とは、将来受けとる収入を前払い一括で受けとることによって発生する利益を調整するための係数です。本来、将来の収入は毎月毎年受けとるものですが、逸失利益として前払いで受けとると、本来得られないはずの「運用利益」が発生すると考えられるので、その分が差し引かれるのです。

 

4.逸失利益の相場

逸失利益は、後遺障害の等級が高くなればなるほど高額になります。

また事故前の年収が高い人ほど高くなります。

ただ、後遺障害1級~3級の場合であれば5000万円以上になることが多く、1億円を超えるケースもあります。

後遺障害6~9級程度でも数千万円、12級でも1000万円程度にはなるケースが多くなっています。

むち打ちでよくある後遺障害14級の場合には数百万円(~500万円)程度が相場です。

 

交通事故で逸失利益を受けとるには、まずは後遺障害認定を受ける必要があります。症状固定して後遺症が残りそうな方へ弁護士がサポートいたしますので、是非ともご相談下さい。

会社経営者・役員、失業者の休業損害

2019-06-10

会社を経営されている方や役員の方も交通事故に遭う可能性はあります。そういった場合「休業損害」を請求できるのでしょうか?これらの方の場合、一般の労働者の方とは異なる計算方法が適用されるので注意が必要です。

また事故当時失業されていた方であっても、ケースによっては休業損害を請求可能です。

 

今回は、会社経営者や役員、失業者の休業損害について解説します。

 

1.会社経営者や役員の休業損害

休業損害は、交通事故によって働けなくなったことにより発生する損害です。

1-1.労働対価部分のみが基礎収入の算定根拠となる

一般の労働者の方の場合、事故でけがをして入通院するとその期間は働けなくなるので、得られたはずの収入を得られなくなります。その減収は交通事故によって発生したと言えるので、全額を休業損害として請求できます。

 

これに対して会社経営者や役員の方の場合には、必ずしも労働の対価として収入を得ているわけではありません。利益配当部分としての収入が含まれるからです。

利益配当部分の収入は本人が労働しなくても入ってくるので、休業したからと言って失われるものではありません。

 

そこで経営者や役員の方の場合、報酬を「利益配当部分」と「労働対価部分」に分けて「労働対価部分」のみを基礎収入として休業損害を計算します。

 

1-2.労働対価部分の算出方法

休業損害の算定根拠となる労働対価部分は、どのようにして算定するのでしょうか?

これについてはケースバイケースの検討が必要です。会社の規模や経営者の役割、普段の仕事内容によって大きく変わってくるからです。

経営者や役員がほとんど実働していない場合には労働対価部分は少なくなりますが、一人会社で個人事業が法人成りしただけのケースなどでほとんど「社長」が実働して会社を動かしている場合などには100%近く労働対価部分になるケースもあります。

役員や会社経営者の方の休業損害を適切に算定するには、専門的な知識が必要です。

 

2.失業者の休業損害

一方、失業中の方が交通事故に遭われた場合、休業損害を請求できないのでしょうか?

2-1.失業者でも休業損害が認められるケース

休業損害は、「仕事ができなかったことによって発生する損害」です。基本的に「有職者」であることを前提とするので、失業中で無職の状態では認められないのが原則です。

 

ただ、「働ける能力も意欲もあったけれど、リストラされたばかりで事故当時にたまたま失業していただけ」などのケースで一律に休業損害が認められなくなるのも不合理です。

 

そこで、以下のような場合には、失業者でも休業損害が認められる可能性があります。

  • 就職できる能力と意欲があった

本人に働く意欲があり、実際に働く能力が備わっていたことが必要です。これらのどちらが欠けても休業損害は認められません。

  • 実際に就職活動をしていた

実際に就職活動をしていたなど、就業の蓋然性が高かった事情が求められます。

  • 就職が内定していた

実際に就職が内定していた状況であれば、就業の蓋然性が極めて高かったと言えるので、休業損害が認められやすくなります。

 

2-2.失業者の基礎収入

休業損害算定の基礎収入については、就職活動中の方であれば年齢別や学歴別の平均賃金を採用します。就職が内定していた方であれば、就職予定であった会社の賃金規定によって算定するケースもあります。

 

会社経営者や役員の方、あるいは失業者の方など、交通事故の損害賠償金算定の方法は、被害者のおかれた状況によって大きく異なってきます。会社員のように単純に「休業損害証明書を書いてもらえば請求できる」というわけにはいかないケースも多々あります。

休業損害についてわからないことがある方や保険会社とトラブルになっている方は、お早めに弁護士までご相談下さい。

主婦や主夫の休業損害

2019-06-03

主婦や主夫の方が交通事故に遭うと、働けなくなるのでご家族の方に負担がかかってしまいます。このような「家事労働者」の方も、休業損害を請求できます。

 

ただ実収入がないため、どのようにして計算すべきかが問題となるケースが多々あります。

今回は、主婦や主夫の方の休業損害計算方法をご説明します。

 

1.主婦や主夫も休業損害を請求できる

休業損害とは、交通事故で働けない期間が発生したときに得られなくなった収入に相当する損害です。

有職者の方が交通事故によって休業するとその日の収入が入ってこなくなるので、それを損害として加害者に請求できるのです。

主婦や主夫の方の場合、働いても実際にはお金を得ていません。ただ家族のための家事労働には経済的な価値が認められるので、休業損害が認められます。

 

2.主婦や主夫の休業損害計算方法

休業損害は、基本的に「1日あたりの基礎収入×休業日数」として計算します。主婦などの家事労働者の場合、実際に働いていないので1日あたりの基礎収入をいくらとすべきか、問題になりやすいです。

交通事故の賠償金計算方法には「自賠責基準」と「裁判基準」があり、それぞれ計算方法が異なります。

2-1.自賠責基準の場合

自賠責基準は、自賠責保険が保険金を計算する際に使う基準です。

金額は、一律で「5700円×休業日数」となります。

 

2-2.裁判基準の場合

裁判基準は裁判所が賠償金を算定するときに利用する法的な基準です。弁護士が示談交渉をするときにも裁判基準を用います。

裁判基準で主婦や主夫の休業損害を計算するときには、「全年齢の女性の平均賃金」を使います。これによると、だいたい1日1万円程度となります。

 

以上より、主婦や主夫の休業損害は、自賠責基準では1日5700円にしかならないところ、裁判基準では1日1万円程度にもなるので大きな違いが発生します。

保険会社と示談交渉をする際には1日5700円を提示されるケースが多いのですが、そのまま受諾すると損をしてしまう可能性があります。

 

3.兼業主婦の場合

主婦の方の中には、パートなどで働きつつ家事もしている方が多いです。この場合、休業損害をどうやって計算するのでしょうか?

この場合、「パートなどの実収入額」と「全年齢の女性の平均賃金」を比較して、どちらか多い方の金額を基礎収入としています。

「パート代と平均賃金の合算」にはならないので注意しましょう。

 

4.主夫の場合

裁判基準では「全年齢の女性の平均賃金」を使って計算します。男性の主夫の場合にも「女性」の平均賃金を使うのか?と疑問を持たれる方もおられるでしょう。

ただ男性の平均賃金を使うと1日あたり15000円程度になってしまい、女性の主婦と格差が発生してしまいます。

そこで主夫の場合にも「全年齢の女性の平均賃金(1日約1万円)」を適用して計算します。

 

5.高齢の主婦の場合

高齢の主婦の方の場合や補助的に家事を手伝っている方の場合には、全額の休業損害が認められない可能性があります。

たとえば母親と同居して家事を手伝っている娘や、娘夫婦と同居して家事を手伝っている高齢の母親の場合などでは、割合的に減額された数値が適用されます。

 

6.1人暮らしの方の場合

主婦とは言っても、夫に先立たれたり離婚・別居していたり子どもも独立していたりして、1人暮らしをなさっている方もおられます。

1人暮らしの場合、基本的に休業損害は認められません。家事労働は人のために行う場合に対価性を認められるのであり、自分のための家事には経済的な価値がないと考えられるからです。

ただし、離れて住んでいる家族のために定期的に家事をしに行っていたなどの事情があれば、その分の休業損害が認められる可能性があります。

 

主婦の方が交通事故に遭うと、保険会社との間で休業損害についてのトラブルが発生するケースが多々あります。正しい考え方がわからない場合には、お気軽に弁護士までご相談下さい。

自営業者の休業損害

2019-05-27

個人事業で店舗を経営している方やフリーランスで仕事をされている方が交通事故に遭ってけがをしたら、加害者へ休業損害を請求できます。

その際どのくらい金額を請求できるのか、また申告書の数字と実際の収入が異なるとき、申告をしていないとき、赤字の場合、昨年度より大幅に増収増益となっている場合にどうなるのかなど、必要な知識を解説していきます。

 

1.自営業者の基本的な休業損害計算方法

休業損害を計算する場合には、基本的に以下の計算式で計算をします。

  • 1日あたりの基礎収入×休業日数

 

休業日数は現実に休んだ日数となりますから、あとは「1日あたりの基礎収入」をどうやって算定するかが問題です。

 

自営業者の場合には、事故の前年度の確定申告書の「所得」を参考にして基礎収入を算定するのが通常です。「所得」には、売上額から経費の金額を引いた利益の金額が書かれています。

ただし、事業を続けている限りたとえ休んでも「固定経費」はかかり続けます。そこで固定経費については所得に足して基礎収入を算定することが認められます。たとえば以下のような経費が、加算対象になります。

  • 店舗や事務所の地代や家賃
  • 駐車場代
  • 水道光熱費
  • 自動車保険料
  • 火災保険料
  • 自動車税
  • 個人事業税

 

また所得を計算するときには青色申告の特別控除なども引かれていますが、これについては実際にはかかっていない経費なので、その金額も足します。

 

その合計額を、365日(うるう年の場合には366日)で割り算をして、1日あたりの基礎収入額を算定します。

 

2.確定申告書の記載と実際の収入が異なるとき

自営業者の場合、申告書に現実の収支と異なる記載をしている方がおられます。

申告書には少なめの収入を記載している場合、それを基準にされると休業損害の金額を減らされてしまいます。現実の収入を基礎として計算してもらうことはできないのでしょうか?

これについては、現実の収入を何らかの形で証明できれば請求できる可能性があります。たとえば通帳への入出金や帳簿類などの記録から実際の利益が判明するケースです。

ただ、通帳の記録のみから売上げと経費の支払いのすべてを立証するのは難しくなることも多いです。

 

3.赤字の場合

次に問題になりやすいのが、赤字の個人事業者です。赤字になっていたら収入は0なので、休業損害は認められないのでしょうか?

たとえ赤字であっても生活を維持するために働いているのですから損害が0というのは不合理です。そこで赤字の個人事業者にも休業損害が認められます。

計算の際には、赤字でも必ず支払わねばならない「固定経費」の分の合計額を参考にしたり、年齢別や業種別の平均賃金を参照したりして基礎収入を算定します。

 

4.申告していないとき

自営業者の場合、確定申告をしていないケースもあります。その場合には休業損害が認められないのでしょうか?

この場合にも、実際に収入があることを立証できれば休業損害を請求できる可能性があります。収入の資料がなければ平均賃金などを使って計算します。

 

5.昨年より大幅に増収増益となっている場合

自営業者の場合、昨年度よりも大幅に店舗展開など進めて劇的な増収増益となっているケースもあります。そのような場合、昨年度の収入をベースに基礎収入を算定されると不合理です。

こういったケースでは、昨年から今年度の売上げが大きく上がっている事実を証明できれば、増収増益したことを前提に基礎収入を算定できる可能性があります。

 

6.休業日数の証明方法

入院日数については問題なく認められるでしょうけれど、通院日数や自宅療養の日数については医師に診断書を書いてもらうなどして、慎重に対応する必要があります。それ以外にも休業日を顧客に知らせる書面、ネット上の営業日に関する画面、帳簿などのさまざまな資料を集めましょう。

 

自営業者が交通事故に遭うと、サラリーマンの方以上に難しい問題が発生するケースが多々あります。対応に迷われましたら、お早めに弁護士までご相談下さい。

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