交通事故で介護費用を請求できる条件とは?

交通事故に遭って被害者に介護が必要になったとき、寝たきりなどで明らかに介護が必要なら、通常保険会社から介護費用を拒まれることはありません。しかし被害者が一応動ける場合や日常生活で一部のみ介護を必要とする場合などには、保険会社に介護費用の支払いを拒まれてスムーズに払ってもらえないケースも多々あります。

 

今回は交通事故で介護費用を請求できるのはどういったケースなのか、千葉県の弁護士がご説明します。

 

1.要介護の後遺障害が残った場合

交通事故の後遺障害は「要介護」とそれ以外に分けられています。

要介護の後遺障害は以下の通りです。

 

1級

1神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 

2胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

2級

1神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 

2胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

 

たとえば高次脳機能障害や遷延性意識障害、内臓機能の障害などで常に介護を要する状態となったら要介護の1級、脊髄損傷や高次脳機能障害、内臓機能の障害などで随時介護を要する状態となったら要介護の2級が認定されます。

 

これらの後遺障害認定を受けた場合には、通常問題なく保険会社へ将来介護費用を請求できます。

 

2.要介護の後遺障害でなくても将来介護費用を請求できる場合

要介護の後遺障害認定を受けなくても、症状の内容や程度に鑑みて介護が必要と判断されれば将来介護費用を請求できます。

  • 症状が相当重い

排尿排便障害がある、高次脳機能障害で周囲による日常的な声かけが必要、上肢や下肢の麻痺があって日常生活に支障が出ている場合などに介護費用が認められる可能性があります。

  • 医師の指示がある

症状が重く、医師が「介護を受けるように」と指示を出していれば、介護費用が認められる可能性が高くなります。

 

3.介護費用が認められた裁判例

以下では具体的に介護費用がどういったケースが認められているのか、裁判例を確認しましょう。

 

3-1.遷延性意識障害

遷延性意識障害のケースでは将来介護費用が基本的に認められ、争いになるケースはほとんどありません。

 

高校生が遷延性意識障害となったケースで1億1,678万円の将来介護費用が認められたケース(千葉地裁平成17年7月20日)、11歳の被害者が遷延性意識障害となったケースで1億3,375万円の将来介護費用が認められたケース(大阪地裁岸和田支部平成14年7月30日)などがあります。

 

3-2.高次脳機能障害

高次脳機能障害のケースでは、症状の程度によって将来介護費用が認められるかどうか変わります。重度な場合には将来介護費用が支払われます。

 

高次脳機能障害で2級の後遺障害認定を受けた高校生のケースで4,760万円の将来介護費用が認められたケース(京都地裁平成15年10月31日)、3級の認定を受けたケースが「常時の付添は不要だが看視のために家族が常に家にいなければならない」として日額6,000円の将来介護費用を認めたケース(東京地裁八王子支部平成14年7月4日)、高次脳機能障害で5級、他の後遺障害と併合して4級となった事案で1,381万円の将来介護費用が認められた事案などがあります(東京地裁平成16年9月22日)。

 

3-3.脊髄損傷

脊髄損傷で1級の後遺障害が認定され、日常的に介護が必要と判断されて1億8,300万円の将来介護費用が認められたケース(東京地裁八王子支部平成12年11月28日)、四肢麻痺となって後遺障害1級が認定された59歳の男性被害者に7,551万円の将来介護費用が認められたケース(大阪地裁平成17年9月1日)などがあります。

 

3-4.その他

RSDで5級に認定された被害者につき682万円程度の将来介護費用が認められた事案(名古屋地裁平成16年7月28日)、同じくRSDで9級に認定された被害者に669万円程度の将来介護費用が認められたケース(大阪高裁平成18年8月30日)などがあります。

 

介護を要する状態になって保険会社が将来介護費用の支払いに応じない場合、上記に挙げた裁判例のように、訴訟をすれば高額な介護費用の支払いを受けられる可能性もあります。

千葉県で交通事故に遭い、保険会社の対応に疑問を感じておられるなら弁護士までご相談下さい。

 

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