交通事故を起こしたら、必ず「被害者の救護」をしなければなりません。救護をせずに「ひき逃げ」をしてしまったら、非常に重い刑罰が科される可能性が濃厚となります。
今回はひき逃げの場合に適用される刑事罰や行政罰(免許の点数加算)について、千葉の弁護士が解説します。
1.ひき逃げとは
ひき逃げとは、道路交通法上の「救護義務違反」の行為です。
交通事故の当事者には道路交通法上「けが人を救護する義務」が課されます(道路交通法72条1項前段)。その救護義務を守らずに、事故現場から去ってしまうと「ひき逃げ」になります。
救護義務が課される人は「交通事故時に車両を運転していた人や乗務員」です。加害者だけではなく被害者にも救護義務がありますし、四輪車や単車だけではなく自転車の運転者にも救護義務が及びます。
また「後で戻ってこよう」と思って立ち去ったとしても、現場から離れたらその時点で「ひき逃げ」になります。
交通事故に遭ったとき、誰かがけがをしていたら必ず「その場で停車して」応急処置を行い、必要に応じて救急車を呼びましょう。
2.ひき逃げで加算される点数
ひき逃げは非常に危険な行為なので、重い処分が科されます。
まず運転免許の点数が35点加算されるため、一回で免許取消となります。欠格期間は3年に及ぶので、以後3年間は免許を取得できません。
また交通事故による点数も加算されるので、実際には35点よりも大きく点数が上がります。たとえば加害者の一方的な過失によって死亡事故を起こすと20点が加算されるので、ひき逃げの35点と合わせて55点の加算となり、免許取消(欠格期間7年)となります。
3.ひき逃げに適用される刑事罰
ひき逃げは危険な道路交通法違反の行為なので、刑事罰も科されます。
交通事故の加害者がひき逃げをした場合の罰則は「10年以下の懲役または100万円以下の罰金刑」です。
また自動車運転処罰法違反の罪も成立します。
3-1.過失運転致死傷罪
通常程度の過失によって事故を起こした場合に成立する犯罪です。刑罰の内容は「7年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金刑です。
ひき逃げをすると道路交通法違反の罪と「併合罪」になって刑罰が加重され、最長で15年の懲役刑や禁固刑が科される可能性があります。
3-2.危険運転致死傷罪
故意にも匹敵する危険な交通事故によって人を死傷させたときに成立する犯罪です。
刑罰の内容は、被害者がけがをしたときに「15年以下の懲役刑」、被害者が死亡したときに「1年以上の有期懲役刑」となります。
ひき逃げをすると併合罪加重により、被害者がけがをしたときに「最長22年6か月の懲役刑」、被害者が死亡したときに「最長30年の懲役刑」が適用される可能性があります。
3-3.実際の量刑が重くなる
ひき逃げをすると非常に情状が悪くなるため、単に刑罰の上限が引き上げられるだけではなく実際に適用される量刑も重くなります。たとえばひき逃げをしなければ不起訴で済むケースでも、ひき逃げしたために公判請求されて懲役刑が適用される可能性があります。
ひき逃げをしなければ執行猶予がつくはずの事案でも、ひき逃げをしたら実刑判決を受ける可能性が高まります。
ひき逃げをすると多大なリスクを負うこととなるので、決してしてはいけません。
4.ひき逃げの検挙数について
2019年の犯罪白書によると、2018年(平成30年)におけるひき逃げの検挙率は以下の通りとなっています。
4-1.死亡事故の検挙率
死亡事故に限ると検挙率は97.7%です。
4-2.重傷事故の検挙率
重傷事故の場合、75.5%となっています。
4-3.全体の検挙率
全件数の検挙率は60.8%です。
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/66/nfm/n66_2_4_1_1_3.html
重大事故になるほど検挙率が高く、逃れるのは困難といえるでしょう。
5.交通事故を起こした人の義務について
交通事故を起こした加害者には、「けが人を救護する義務」「二次被害を防止するために危険を除去する措置をとる義務」「警察に報告する義務」の3種類の義務が課されます。
これらの義務を守らずに現場を離れるとひき逃げとなり、重いペナルティを科されます。
絶対にひき逃げはしないことが何より重要といえますが、万が一ひき逃げをしてしまって気になっているならば、早めに弁護士までご相談下さい。