シートベルトを着用していると、交通事故に遭ったときのリスクが大きく低下します。近年ではシートベルト着用義務の範囲が拡大されており、「後部座席」でもシートベルトをしなければなりません。
シートベルトを着用しないとどのようなペナルティが課されるのか、交通事故が発生したときの過失割合への影響など、弁護士が解説します。
1.シートベルト着用義務の範囲
シートベルトを着用するかしないかで、交通事故に遭ったときの危険度が大きく変わります。運転席、助手席はもちろんのこと、後部座席でもシートベルトの着用効果は非常に高くなっています。
警視庁の発表では、後部座席でシートベルト非装着の場合、装着時よりも致死率が以下のように大幅に上がるとされています。
- 高速道路の場合、非着用のケースでの致死率は着用時の11.7倍
- 一般道路の場合、非着用のケースでの致死率は着用時の3.3倍
特に高速道路を走行している場合の差が大きいことがわかります。
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/seatbelt.html
このようにシートベルトを着用すると万が一の場合に命を守れる可能性が高まるので、車に乗るときは必ずシートベルトを着用しましょう。
1-1.シートベルトを着用すべき人
道路交通法は、自動車の運転者や同乗者へシートベルト着用義務を課しています。
後部座席にも適用される
道路交通法によると、シートベルトは「車両に乗っている人全員が着用しなければならない」とされています。
つまり、運転者や助手席だけではなく後部座席に乗っている人もシートベルトを着用しなければなりません。2008年に道路交通法が改正され、すべての座席にシートベルト着用義務が拡大されました。
車種による区別もない
シートベルト着用義務は、バスなどの大型車だけでなく普通車にも同じように適用されます。
高速道路にも一般道路にも適用される
高速道路だけではなく一般道でもシートベルト着用義務が適用されます。
つまり現在の法律では、基本的にすべての車において、すべての搭乗者があらゆる場所で、シートベルトを着用しなければなりません。
1-2.シートベルトを着用しなくて良いケース
以下のような場合、例外的にシートベルト着用義務が免除されます。
- けがや障害があってシートベルトを着用すると状態が悪化する
- 妊娠中で、シートベルトを着用すると気分が悪くなる
- 子どもを多く乗せており、シートベルトの数が足りない
- 座高が高すぎる、低すぎる、肥満などの理由でシートベルトを着用できない
- 車内で授乳、おむつ換えなどを行う場合
- 病気の幼児を緊急で搬送する場合
- バックする際、運転手が一時的にシートベルトを外す場合
1-3.シートベルト着用義務違反へのペナルティ
- 運転席、助手席
1点の加点となります。
- 後部座席
高速道路であれば1点の加点、一般道路では口頭での注意となります。
シートベルト着用義務違反に反則金や刑事罰はありません。
2.シートベルト着用違反による交通事故の過失割合への影響
シートベルトを着用せずに交通事故を起こしたら、過失割合にも影響する可能性が大きいと考えましょう。
交通事故の過失割合を算定するときには、基本的に事故の類型ごとに定められる過失割合を適用します。ただしシートベルトを着用しておらず、それが交通事故による損害拡大につながったと評価されれば、基本の過失割合に5~20%程度、加算される可能性が高くなります。
たとえばシートベルトを装着していれば過失割合が10%のケースでも、不装着だったためにけがの程度が酷くなった場合には20%にされる可能性があります。そうなると、受け取れる賠償金額が10%減額されてしまうので、被害者にとって不利益が大きくなるでしょう。
まとめ
シートベルト不装着に対するペナルティは現在のところ、大きなものといえないかもしれません。それでも交通事故を起こしたときや被害に遭ったときのリスクは相当高いと考えられるので、車に乗るときには必ずシートベルトを着用しましょう。
万一交通事故に遭われて保険会社との示談交渉でお困りごとなどありましたら、お気軽に弁護士までご相談ください。