交通事故によって発生する損害の中で「逸失利益」はもっとも高額になる可能性が高くなっています。
具体的にはどのくらいの数字になるのか、高額になるのはどういったケースなのでしょうか?
今回は後遺障害逸失利益の計算例とともに、逸失利益が高額になるケースについてご説明します。
1.後遺障害逸失利益の計算式
後遺障害逸失利益を計算するときには、以下の計算式を使います。
- 後遺障害逸失利益=事故前の基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数分のライプニッツ係数
詳しくは以下の記事でご説明しています(逸失利益が認められるケースと認められないケース 相場の金額について)
以下ではこれをあてはめて、具体的な計算例を示します。
1-1.後遺障害1級、事故前の年収が400万円のサラリーマン
事故当時35歳のサラリーマンが交通事故に遭い、後遺障害1級となったとしましょう。
事故前の収入は400万円とします。
この場合、後遺障害逸失利益は以下の通りです。
400万円×100%×15.803=6321万2千万円
事故前の年収は400万円なので、そのまま適用します。
後遺障害が1級なので労働能力喪失率は100%です。
15.803というのは、35歳(就労可能年数32年)に対応するライプニッツ係数です。
そこでこの被害者は加害者に対し、後遺障害逸失利益として6321万2千万円を請求できます。
1-2.後遺障害7級、事故前の年収が500万円の自営業者
次に事故前の年収が500万円、事故当時28歳の自営業者が交通事故に遭って後遺障害7級になったとしましょう。
この場合、後遺障害逸失利益は以下の通りです。
500万円×56%×17.017=4764万4760円
事故前の年収は500万円なので、そのまま適用します。
後遺障害が7級なので労働能力喪失率は56%です。
28歳(就労可能年数39年)のライプニッツ係数は17.017なので、これを適用します。
すると、後遺障害逸失利益は4764万4760円となるので、この被害者は加害者に対し、逸失利益として上記の金額を請求できます。
1-3.後遺障害12級が認定された33歳の主婦
33歳の主婦が交通事故に遭って12級の後遺障害が残ったとしましょう。事故発生日は2018年10月1日とします。この場合、後遺障害逸失利益の計算式は以下の通りです。
382万 6300円×14%×16.193=867万4298円
382万6300円というのは、2018年度の全年齢の女性の平均賃金です。主婦の場合、具体的な収入がないので平均賃金を使って基礎収入を算定します。
後遺障害12級の労働能力喪失率は14%なので、こちらをあてはめます。
33歳なので、就労可能年数である34年に対応するライプニッツ係数である16.193を適用します。
すると、逸失利益としては867万4298円となるので、この被害者は相手方に逸失利益として上記の金額を請求できます。
2.逸失利益が高額になる事例
交通事故の被害者の方は「交通事故の損害賠償と言えば慰謝料」と思っていることが多々ありますが逸失利益は慰謝料とは別に認められますし、多くのケースで慰謝料より高額になります。
逸失利益が認められると交通事故の賠償金が大きく上がります。
中でも逸失利益が高額になりやすいのは以下のようなケースです。
- 事故前の年収が高い
被害者の事故前の年収が高い場合、基礎収入が上がるので逸失利益は高額になります。
- 後遺障害の等級が高い
後遺障害の等級が高いほど労働能力喪失率が高くなるので、逸失利益が高額になります。
- 事故当時の年齢が低い
事故当時の年齢が低いと逸失利益が認められる期間(就労可能年数)が長くなるので逸失利益は高額になりやすいです。ただし年齢が低いとその分収入も低いケースが多くなるので、必ずしも年齢の高い人より高額になるとは限りません。
より高額な逸失利益を支払ってもらうには、高い等級の後遺障害認定を受けること、基礎収入を高めに認定してもらうことが重要です。
交通事故の示談交渉を進める際、後遺障害認定を受けていても相手の保険会社から逸失利益の減額を主張されたり否定されたりする例があります。そのようなとき、弁護士が示談交渉を代理したり裁判を起こしたりすると高額な逸失利益が認められる可能性もあります。
逸失利益の計算について不明な点がありましたら、お気軽に弁護士までご相談下さい。