高齢者の交通事故の概況と対策方法について

近年、高齢者が大きな交通事故を起こした事件が相次いで報道されており、多くの方が「高齢者の運転は危険」という認識をお持ちでしょう。

実際に高齢者が引き起こす交通事故はどのくらい増えているのでしょうか?

なぜ高齢者は事故を起こしやすいのでしょうか?

 

今回は高齢者の交通事故の特徴と考えられる対策方法を、弁護士の視点からお伝えしていきます。

 

1.高齢者の交通事故は増えている

ニュースなどでは高齢者の引き起こす交通事故に関する報道が増えているように感じますが、実際に高齢者による交通事故件数は増加しているのでしょうか?

警視庁が発表している「平成30年交通安全白書」によると、交通事故の全体件数は平成16年において952,720件であったところ平成29年には472,165件にまで減少しています。

全体の件数がこれだけ減っているので、高齢者が関与する交通事故の件数自体は減少しています。

 

ただし「割合」にすると、高齢者事故の割合は若者の関与する事故よりも大きくなります。

平成19年の時点における交通事故の死者数は65歳未満の人が3,047人、65歳以上の高齢者が2,749人で若年の死亡者の方が多かったところ、平成22年にこの数字が逆転しました。

今は65歳未満の若年者層が1,674人であるのに対し高齢者は2,020人となっており、高齢者の死者数の方が多い状況が続いています。

人口10万人に対する比率にすると、高齢者以外の死者数は1.8人ですが高齢者の場合には5.8人にまで増加します。

 

この数字には高齢者が加害者としてではなく被害者となっている事故も含まれますが、少なくとも「高齢者が関与して死亡する交通事故が増えている」事実が読み取れます。

 

平成30年交通安全白書

https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h30kou_haku/gaiyo/genkyo/h1b1s1.html

 

2.高齢者の交通事故が多い理由

高齢者は、なぜ交通事故に遭ったり引き起こしたりする割合が高くなるのでしょうか?

理由として以下のようなことが考えられます。

2-1.注意力の散漫

交通事故に遭わないためには、注意力が要求されます。常に周囲に注意を払い、人やバイクが飛び出してこないか,他の車の動きなどを見ていなければなりません。しかし高齢者は注意力や集中力が低下して散漫となってしまいやすいので、人や他の車を見逃して事故を起こす可能性が高くなります。

2-2.認知機能の低下

高齢者は認知機能が低下しているケースも多々あります。認知症の診断を受けていなくても実際にはそれに近い状態の方もいますし、認知症とまでいかなくてもぼんやりしている程度の方は少なくありません。

認知機能が低下していると、周囲で何が起こっているのか認識しにくいので事故を起こしてしまいます。

2-3.ハンドル・ブレーキ操作不適切

高齢者は、反射神経や瞬発力なども低下しているので、何かあったときのとっさの対応が困難です。いきなり人が飛び出してきたときなどに適切なハンドルブレーキ操作をできず、事故を起こしてしまいます。

2-4.アクセルとブレーキの踏み間違え

高齢者は、認知機能や運動能力が低下していることもあってアクセルとブレーキを踏み間違えることが多々あります。停止すべき状況において一気にアクセルを踏みこみ、人の方向へ突っ込んでしまうケースが散見されるのはそのためです。

 

3.高齢者事故を防ぐには

日本では元気な高齢者が増えて、年齢を重ねても運転し続ける人が増えています。

一定年齢になったら免許を返納させるべきという意見も聞こえてきますが、現状の法律ではそういった規制は行われていません。

事故を防ぐには、1人1人の自主的な努力が必要です。

親族に高齢者の方がいたら、なるべく運転を控えるように言ったり、家族で運転の問題について話し合ったりして、免許を返納させるか、それが無理でもなるべく運転させないようにしましょう。

免許を返納したくないという方でも、同年代の人から「免許を返納した」という話を聞くと、抵抗感なくスムーズに受け入れるケースが多いようです。

 

交通事故が起こったら、加害者も被害者もそれぞれの家族も全員が不幸になります。高齢者の交通事故割合が高くなっている今の日本において、自分たちの身を守るためしっかりと意識を持って対策していきましょう。

 

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