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刑事裁判の被害者参加制度について

2019-11-20

交通事故に遭われたとき、また交通事故でご家族を亡くされたとき、被害者側が加害者の刑事裁判に参加できるケースがあります。

被害者やご遺族が裁判官や裁判員へ心情を述べたり相手方に尋問をしたり量刑についての意見を伝えたりできるので、加害者がどうなったのか知りたい方、厳罰を与えてほしい方などがよく利用されています。

 

今回は交通事故の被害者が利用できる刑事裁判の「被害者参加制度」について、千葉の弁護士が解説します。

 

1.被害者参加制度とは

被害者参加制度とは、刑事事件の被害者や被害者の遺族が加害者の刑事裁判に参加できる制度です。

以前、刑事裁判の被害者は加害者の刑事裁判に関与することがほとんどなく、証人として尋問を受けたり傍聴したりするくらいの権利しか認められていませんでした。しかしそれでは被害者保護につながらないということで、2008年12月1日から新たに被害者参加制度が導入されています。

 

2.被害者参加制度が適用される事件の種類

被害者参加制度はすべての刑事事件に適用されるわけではありません。対象となるのは以下の犯罪です。

 

  1. 故意の犯罪によって人を死傷させた罪
  2. 強制わいせつ、純強制わいせつ、強制性交等罪、純強制性交等罪
  3. 業務上過失致死傷、過失運転致死傷、危険運転致死傷罪
  4. 逮捕・監禁罪
  5. 略取誘拐、人身売買の罪

上記の犯罪行為を含む罪や未遂罪も適用対象となります。

 

交通事故のケースでも、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪で加害者が起訴されて通常の刑事裁判になった場合、被害者や被害者の遺族が刑事裁判に参加できます。

ただし相手が無免許、酒気帯び運転などのケースで検察官が「無免許酒気帯び運転(道路交通法違反)」のみで起訴し、過失運転致傷罪については不起訴とした場合などには被害者参加できません。

 

 

3.被害者参加制度を使ってできること

被害者参加制度を利用すると、参加した被害者側は以下のようなことができます。

3-1.当事者として刑事裁判に参加

被害者参加制度を利用した場合、被害者は傍聴人ではなく「当事者」として裁判に参加できます。傍聴席ではなく法廷内に入り、検察官の隣に座って刑事裁判の行方を見守ることが認められます。

3-2.検察官の権限行使に対する意見申述

被害者参加人は検察官の権限行使(訴訟の進め方等)に意見を述べることができます。検察官が被害者の意見を採用しないときには不採用にした理由を説明する必要があります。

3-3.加害者側の情状証人に対する尋問

加害者側が情状証人を用意した場合、被害者参加人が情状証人に尋問できます。ただし質問できるのは犯罪事実に関してではなく情状に関する部分に限られます。

3-4.加害者本人に対する尋問

加害者本人への尋問も認められます。加害者に対しては犯罪事実に関する質問もできます。

3-5.裁判官等への心情陳述

被害者参加人は裁判官や裁判員へ心情を陳述することが認められます。たとえば「加害者をどうしても赦せないから重く処罰してほしい」などの意見です。被害者参加人の陳述内容は情状に関する証拠となるので、判決に際して考慮されます。

3-6.裁判官等への量刑等に関する意見陳述

情状だけではなく、犯罪事実に関する意見や量刑についての意見も述べることが可能です。ただし裁判所は被害者参加人の意見には拘束されません。

 

4.被害者参加弁護士に依頼できる

被害者参加制度は、加害者の刑事事件の帰趨に関心を持つ方には非常に有用です。しかし被害者やご遺族だけで的確に意見を述べたり加害者や加害者側の情状証人に尋問したりするのは困難でしょう。

そのようなとき、被害者側の弁護士が被害者をサポートします。

被害者参加弁護士は、加害者や加害者の情状証人への尋問を代わりに行うことができますし、意見陳述の際には事前に書面を作成し、被害者が読み上げるだけできちんと陳述できるように段取りします。

不安をお持ちの方には丁寧にお話をお伺いして、その都度適切なアドバイスも差し上げます。

 

当事務所では交通事故の被害者支援に力を入れて取り組んでいますので、お困りの際にはぜひともご相談下さい。

交通事故紛争処理センターとは

2019-09-09

 

交通事故後、被害者が加害者の保険会社と示談交渉をしても、なかなか意見が合致しないものです。納得できないまま示談してしまうと、将来後悔してしまう可能性もあります。

だからといって訴訟を起こすのは気が引ける、という方には「交通事故紛争処理センタ-」の活用をお勧めします。

 

以下では交通事故紛争処理センターとはどのような機関で、何をしてもらえるのか、解説していきます。

 

1.交通事故紛争処理センターとは

交通事故紛争処理センターは、交通事故トラブルを解決するためのADR(裁判外の紛争処理機関)です。全国の主要都市に支部があり、当事者は都合の良い支部を利用できます。

 

交通事故ADRを利用すると、裁判をしなくても交通事故に関するトラブルを解決できる可能性があります。交通事故ADRにはいくつか種類がありますが、交通事故紛争処理センターは非常に利用者数が多く、解決実績も高い機関です。

 

 

2.交通事故紛争処理センターでできること

交通事故紛争処理センターでは、以下のようなことができます。

2-1.相談

交通事故被害者は、困ったことや不安なこと、疑問などがあれば交通事故紛争処理センターへ相談できます。センターでは交通事故に詳しい弁護士が相談を受けてくれます。

2-2.示談あっせん

交通事故紛争処理センターでは、当事者の示談あっせんを行っています。示談あっせんとは話し合い(示談)の仲介です。保険会社と意見が合わないとき、交通事故紛争処理センターに申立をすると、センターの担当弁護士が間に入って話し合いを進めてくれます。

和解案が提示されるので、当事者双方が受け入れれば紛争を解決できます。

 

2-3.審査

示談あっせんは話し合いの手続きなので、当事者双方が納得しない限り解決できません。話し合いが決裂したとき、相手が保険会社であれば「審査」という手続きを利用できます。審査を申し立てるとセンターの審査会が交通事故の損害賠償方法(内訳や金額など)を決定します。

保険会社は審査の決定内容に拘束されるので、被害者さえ納得すればトラブルを終局的に解決できます。被害者は拘束されず保険会社だけが拘束される(これを片面的拘束力といいます。)ので、被害者が有利な手続きといえます。

 

3.交通事故紛争処理センターの注意点

交通事故紛争処理センターには、以下のような注意点があります。

3-1.審査は相手が保険会社の場合にしか利用できない

相手方のみが判断内容に拘束されるので被害者に有利になりやすい「審査」ですが、これを利用できるのは、基本的に相手が保険会社の場合のみです。相手が共済組合や当事者本人の場合、審査で解決することはできません。

保険会社はセンターと提携していますが、他の機関や個人は提携していないためです。

 

3-2.担当弁護士は「中立な立場」

交通事故紛争処理センターで担当してくれるのは「弁護士」ですが、被害者の味方というわけではありません。公正中立な立場なので、保険会社の言い分が適正と考えられれば保険会社側の肩を持つ可能性もあります。被害者にしてみると「助けてもらえない」「冷たい」と感じるケースも少なくないので、注意が必要です。

 

4.交通事故紛争処理センターの限界

交通事故紛争処理センターには以下のような限界があります。

4-1.必ず解決できるわけではない

示談あっせんをしてもらっても決裂したら解決は不可能ですし、相手が保険会社でなければ審査は利用できません。また審査結果が出ても被害者が納得できなければやはり解決できず、訴訟に進む必要があります。

必ず紛争を解決できるわけではないのはセンターの限界と言えるでしょう。

4-2.時効中断効はない

交通事故紛争処理センターの手続きには、損害賠償請求権の時効中断の効果がありません。交通事故後、3年近くが経過して時効が成立しそうになっていたら訴訟を提起する必要があります。

4-3.自賠責との紛争は対象にならない

交通事故紛争処理センターは自賠責との紛争を対象にしていないので、後遺障害認定などの自賠責保険における決定事項を争うことは不可能です。

 

交通事故紛争処理センターには限界がありますが、上手に使えば被害者の有利に運ぶことも可能です。

申立ての際、弁護士が代理人として就任し各種のアドバイスや書面提出、意見の陳述などを行うことも可能です。もしも交通事故ADRのご利用をお考えであれば、お気軽にご相談下さい。

交通事故でも利用できる被害者参加制度について

2019-08-19

 

  • 加害者の刑事事件がどうなったのか、知りたい
  • 加害者が不誠実で許せないので、重い刑罰を与えてほしい

 

交通事故に遭ったとき、被害者が加害者の刑事裁判に参加できる「被害者参加制度」があります。

これを利用すると、被害者が加害者へ直接尋問をしたり、求刑についての意見を述べたりすることが可能です。

 

相手を許せない気持ちが強いなら、こうした手続きを利用して加害者の言い分を確認したり処分内容を見届けたりしてはいかがでしょうか?弁護士がサポートすることも可能です。

 

以下では被害者参加制度について、解説していきます。

 

1.被害者参加制度とは

被害者参加制度とは、被害者が加害者の刑事事件に参加して意見を述べたり尋問をしたりすることができる制度です。

従来の刑事手続きは、ほとんどが警察官、検察官や裁判官などによって行われており、被害者は直接関わることができませんでした。被害者にできるのは、参考人として供述をしたり証人として尋問を受けたり傍聴席に座って内容を確認したりすることくらいでした。

しかしそれでは被害者の権利を実現できないため、2008年12月に被害者参加制度が作られました。

被害者参加制度が適用される事件は限られていますが、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪などの交通事故犯罪は対象事件とされています。

 

2.被害者参加制度でできること

被害者参加制度を利用すると、具体的に何ができるのでしょうか?

 

2-1.検察官の横に座って裁判に参加できる

通常、被害者は傍聴席で傍聴人としてしか刑事裁判を見ることができませんが、被害者参加すると法廷内に入り、検察官の横に座って当事者として裁判に参加できます。

2-2.検察官に対し、意見を述べる

検察官が刑事手続きで行う活動に対し、被害者が意見を述べることができます。たとえば刑事裁判で「~してほしい」「~してほしくない」などの希望を述べることが認められます。

検察官は必ずしもその言葉に従う必要はありませんが、実行しないなら意見を述べた被害者参加人に対して、理由を説明しなければなりません。

 

2-3.証人尋問

被害者参加人は、自ら加害者の用意した情状証人に対し尋問することが可能です。たとえば加害者が情状証人として家族を呼んだとき、被害者がその家族に「本当に監督なんてできるのか」「普段から運転が危うかったのではないか?」など確認できるという意味です。なお「犯罪事実を証言する証人」に対しては尋問権が認められません。

2-4.被告人質問

被害者参加人は、被告人(加害者本人)に対して尋問することも認められます。加害者本人に対する場合には、「情状」だけではなく「犯罪事実に関する内容」も尋問できます。たとえば「本当は前を見ていなかったのではないか?」「スマホを見ていたのではないか?」など聞いてもかまいません。

2-4.心情意見陳述

被害者参加人は、裁判官や裁判員に対して自分の心情を述べることが可能です。たとえば「どうしても許せない」「身体が不自由になって困っている」「誠意を感じられないので厳罰にしてほしい」などと直接伝えることができます。裁判官は、被害者の意見を量刑の判断資料とします。

2-5.事実や法律の適用、求刑についての意見陳述

被害者参加人は裁判所の許可を得て、事実認定や法律の適用、あるいは求刑についての意見も述べることができます。たとえば「~だから危険運転致傷罪が成立すると思う」「懲役〇〇年にしてください」などと言うことができるという意味です。

この手続きは「弁論としての意見陳述」や「被害者論告」ともいわれます。

ただし被害者意見は、証拠として取り扱われることはありません。

 

3.被害者参加する方法

被害者が加害者の刑事裁判に参加したい場合には、担当の検察官に被害者参加したい旨を伝えます。そうすると、検察官が手続きをとってくれます。

 

4.被害者参加を弁護士に依頼する必要性

被害者参加制度は被害者の権利を実現するのに役立つ制度と言えますが、効果的に利用するには、弁護士に依頼する必要があるでしょう。

被害者が自分一人で情状証人や加害者本人に尋問をしたり、裁判官に述べるべき意見を考えたりすることは難しいからです。

尋問や意見陳述そのものは自分でするとしても、準備は弁護士に任せる必要があります。

 

当事務所では、検察官との打ち合わせや尋問事項の作成、演習、陳述する意見書の作成、必要に応じたアドバイスなど、被害者参加人への支援を積極的に進めております。

千葉で交通事故に遭い、加害者を許せない、刑事裁判に参加したい気持ちをお持ちの方は、一度お気軽にご相談下さい。

 

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