保険会社から示談書が送られてきたら、あとは署名押印して返送するだけです。
しかし少し待ってください。このとき、安易に署名押印をすると、大きく損をしてしまう可能性があります。
一呼吸置いて、示談金が適正かどうか、チェックしてみましょう。
今回は、保険会社と示談する前に確認すべきことを、弁護士が解説します。
1.慰謝料の金額
人身事故で保険会社から示談書と示談金の明細書が送られてきたとき、「慰謝料」の項目があります。
このときの慰謝料の金額は、適正で無い可能性が高いです。
保険会社は、独自の低い基準である「任意保険会社の基準」によって慰謝料を計算しているので、法的な基準より大幅に低くなっているのです。
保険会社の提示額は、弁護士が用いる法的基準の2分の1や3分の1になっていることも多いです。示談案で提示された慰謝料の金額が低ければ、被害者がそのまま署名押印して示談を成立させると損をします。
2.休業損害の金額
有職者の方や主婦などが人身事故に遭われたら「休業損害」が支払われます。休業損害についても、保険会社の提示額が低いケースが多々あります。
たとえば主婦の場合、保険会社は事故前の収入について、一律で1日5700円として計算することが多いです。しかし法的な基準であれば、賃金センサスの女性の平均賃金を採用して1日1万円あまりとして計算します。
5700円と1万円の差は、休業日数が多くなると、かなりの開きになってしまいます。
このようなことも、知らずにそのまま示談すると損をしてしまいます。
3.付添看護費用など
入院するときに近親者に付き添ってもらった場合、付添看護費用を請求できますが、保険会社から送られてきた示談案には「付添看護費用」が含まれていないことが多々あります。
また、含まれていたとしても、やはり法的な基準である弁護士基準より安くなっています。
4.過失割合
示談の前提として、加害者と被害者の過失割合を話合いで決めているはずです。しかし保険会社が被害者に提示する過失割合は、必ずしも法的に適正とは限りません。被害者に過大な過失割合を割り当てているケースも多いです。
そのまま示談してしまったら、高い過失割合を前提に大きく過失相殺され、賠償金が減額されて損をしてしまいます。
以上のように、加害者の保険会社が送ってきた示談書にノーチェックで署名押印すると、相手の良いように減額されてしまいます。被害者の権利を守るためには、専門の弁護士によるサポートが必要です。
保険会社から示談書案や示談金明細書が送られてきたら、署名押印する前に、弁護士までご相談ください。